【働く天使ママインタビュー】#9 あきさん
様々な業界・職種で働く天使ママ達が、どんなことを感じ・悩み、気づきを得て歩んできたか、今まさに歩んでいるのか。働く天使ママの体験談をiKizukuがインタビューしてご紹介します。
今回は、小学校の先生をされているあきさんの経験をご紹介します。
《#9 あきさん》
【プロフィール】
あきさん(神奈川県在住/30代)
・お仕事:小学校教諭
・雇用形態:正職員
・ご経験:子宮内胎児死亡により23週で死産/稽留流産
1.あなたのお仕事について教えてください。
小学校教諭で、低学年の学級担任をしています。
2.あなたのご経験について差し支えない範囲で教えてください。
・2022年8月 子宮内胎児死亡となり死産(妊娠23週3日)
・2023年1月 稽留流産(妊娠9週)
どちらも、体外受精の移植で妊娠しました。不妊治療は、5年前からしていて、なかなか妊娠せず、初めての妊娠が死産となりました。二度目は、化学流産で、三度目が1月の稽留流産でした。不育症の治療も行っていました。
3.ご経験されたときのお気持ちを教えて下さい。
不妊治療が長かったので、やっと妊娠できてとても嬉しかったです。はじめは、ずっと不安でしたが、安定期を迎え、クリニックの先生にも「ここまできたら安心ですね」と言われていたので、当たり前に元気に生まれてくるものだと思っていました。
22週のときの妊婦健診で、女の子だと言われ、頭の大きさが少しだけ小さめだけど、足の長さは標準だし、ママ(私)も小さめだから、そんなに今は心配する必要はないと言われて帰宅しました。しかし、先生の言葉がその晩から気になっていました。
翌日、普段感じるはずの胎動がなく、おかしいなぁ・・・と思い、クリニックの先生の言葉もひっかかったので、不育症の病院に連絡し、2日後に受診しました。お薬等で改善されるだろうな、という気持ちで診察したら、「赤ちゃんが動いていない。びっくりだ。」と先生に言われ、「え?!まさか」という気持ちで頭が真っ白で涙が止まりませんでした。
すぐに、3日前に健診を受けたクリニックに連絡し、再度エコーを見てもらいましたが、やはりもう亡くなっていました。「私が、働きすぎたからなのか」と先生に聞きましたが、「あなたは悪くない。この子はそういう運命だったの」と言われましたが、家に帰宅してからますます悲しみが増し、我が子が可哀想でしかたなかったです。親もすごく妊娠を喜んでいたので、何と言ったらいいのか。仕事では、自分のクラスをどうしようか。と、色んなことが頭の中にぐるぐるして、泣いても泣いても涙は止まらず、一睡もできませんでした。今までいろいろ辛いことは経験してきましたが、こんなにも悲しいことはないと思いました。
4.ご経験後、精神的・身体的な影響はありましたか?
出産をする病院の先生が、出産日までに1時間半ほどかけてかけて、ていねいに処置やできることについて説明してくださいました。おかげで、子宮内で亡くなっていることが分かってから、出産するまで一週間ほど時間があったため(バイアスピリンを服用しておりすぐに処置はできないため)、生まれたら家族で行きたかった場所に行ったり、残された時間にやりたいことをたくさんしたりしてから出産日を迎えました。やりたい事は全てできたため、生まれた我が子を見た瞬間は、とても穏やかな気持ちになりました。
退院してから、我が家に娘を連れて帰った際には、だんだんと弱っていく姿を見たり、生きていないことを再認識したりして、こんなことになってごめんねとひたすら謝っていました。火葬の際には、胸が引き裂かれる思いでした。産後二週間健診では、また別の先生から順調に身体は戻ってきていると言われましたが、めまいがしたり、動悸がしたりすることを伝えたところ、それは精神的なものだと言われました。産婦人科では、診断できないと言われ、先生の言葉に傷ついてしまい、泣きながら帰宅しました。
産後一か月は、家でゆっくり過ごし、夫も3週間弱は家にいてくれたので、毎日泣いたり、弱音を吐いたりする私を支えてもらいました。夫の夏休みも終わって、家に一人になってからは、職場復帰をすべきか休むか悩んでおり、辛すぎて、この先どうしていいか分からずパニックになり、出産した際に病院からもらった赤ちゃんとお別れした方向けの冊子に書かれていた臨床心理士さんに会いたいと病院に連絡して、精神科を受診しカウンセリングを受けました。当時の私はこっちに進んだほうがいいよとアドバイスや背中を押してもらいたかったのですが、本来のカウンセリングは話を聞くことがメインということも知らず、話を聞いてもらい少しは楽になるも、果たしてどうしたらいいんだろうという気持ちは消えませんでした。
死産後に読んだ本の中に、「亡くなる赤ちゃんは必ずメッセージを残していく」と書かれていて、ひたすら、メッセージを受け取ろうと必死でした。「ママ、仕事今まで頑張りすぎていたからゆっくりしてね」といっていると感じ取り、仕事を休む決意をしました。
二人のエコー写真
5.ご経験後、仕事はどの程度お休みされましたか?それはどのような制度でしたか?
死産後は、産休を8週間。その後、精神科で適応障害の診断書をもらい、3か月の病気休暇をもらいました。病休の間に不妊治療を再開したのですが、仕事復帰の前日に流産の診断を受け、その後、休日の日曜日に自宅で大量出血し、赤ちゃんが出てきてしまいました。
仕事復帰すると伝えたばかりで、学校関係者にも妊娠を伝えておらずこれ以上迷惑かけられないと思い、翌日の月曜日からは普通に仕事に行ったため休んでいません。出社した朝に管理職のみに事実を伝えて、夕方早めに早退させてもらいながら何とかその週は乗り切りました。復帰後また休むことで、クラスの子どもたちや保護者の信頼を失いたくない、同僚にこれ以上迷惑をかけてはいけないという思いもあり、自分の中には休むという選択肢はありませんでした。
6.お休みの間、どのように過ごされていたか教えてください。
死産後一か月はひたすら家の中にいました。SNSで自分と同じ経験をされた方を検索して、泣きながら投稿を読んでいました。死産に関する本も読んで、泣いていました。ドラマを見て、泣いていました。何をするにも一か月は、毎日泣いてばかりでした。一方で、仕事のことを思い出し、職場や、クラスの子どもたち、保護者はどう思っているだろう・・・など心配ばかりしていました。
一か月を過ぎた頃から、友達が会いに来てくれて、少し気分転換できました。でも、休みの間は、ずっと仕事のことが気になり、休んでいることに罪悪感があり、買い物をしているときに職場の人に会ったらどうしよう、元気じゃん!さぼっているんじゃない?!とか思われるかもしれない。と思ってのんびり外出はできませんでした。
自分の気持ちを大切にするために、死産が分かった日から毎日日記を書いていました。自分はどうなりたいか?を書き出した時があり、「また笑顔でママになりたい」という答えが出てきました。死産したことは、悲しいけれど、不思議とすぐに、また妊娠したい!と思い、鍼灸に通い始め、産後一か月して生理がきたら、不妊治療のクリニックで治療を始めていました。仕事しながらの不妊治療はとても大変だったので、この休みの間に、身体を整えて次の妊娠に向けてできることをしようと治療に専念していました。
7.ペリネイタルロスが判明する以前に、妊娠の事実は職場に伝えていましたか?
学級担任をしているため、後続の担任を探してもらわなければならないので、管理職には、妊娠が分かってすぐに伝えていました。安定期を迎えてから全職員に伝えてもらいました。
8.職場へはご経験の事実、その後のプロセス、お休みの仕方、体調、働き方などに関してどのように連絡・相談しましたか?
死産していることが分かって二日後に、職場に行って、自分の口から管理職に伝えました。産後休業が取れることについては、管理職は知らないようでしたが、自分で事前に調べて産休対象であることを自ら伝えて確認してもらいました。
仕事については、いきなり仕事を休まなければならなくなり、通知表を仕上げたり、後任の担任の調整などを大急ぎで引き継ぎ資料を作成したりしました。夫も同業者のため、産後は、夫に学校に行ってもらい、管理職に私の状況を伝えてもらいました。私は、必要に応じて電話やメールで管理職と連絡し合っていました。
また休みに入るのがちょうど学校の夏休み期間でしたので、子供たちには会えず、直接お休みすることを伝えられないまま休みに入りました。そのことがずっと気になっていて、産休中も心が休まらず罪悪感を持ちながら過ごしている状況でした。
思い出に残した手形足形
9.職場復帰する際に考えたこと、感じたことを教えてください。
小学校教員として、学級担任をしているため、私が休職中は、違う先生がクラスの担任をしてくれていました。その先生との信頼関係が築けた頃に、また私が戻ってくることで、子どもたちに混乱はないか、また、子どもを亡くして休んだことを校長からクラスの子どもたちに話してもらっていたので、子どもたちにはどんな顔をして会えばよいのかなど不安がありました。
不妊治療も継続するつもりだったので、休職中に、次の妊娠に向けて心と体を整えていたけど、また仕事を復帰すると、毎日が怒涛の日々で自分を大切にすることができなくなってしまうことへの不安もありました。でも、以前から仕事は全力で頑張らなければならないというような正義感?のようなものがずっと心の中にあったので、これ以上休むこともよくないよな・・・と思い、復帰することにしました。
10.職場復帰後はどのように働いていますか。
校長先生は大変良い方で、職場復帰の際も、「担任に戻ってもいいし、辛ければ他の仕事内容にしてもいいよ」と、どうしたいかは私の気持ちを尊重してくださいました。しかし、突然の休職で、クラスの子どもたちのことが気になっていたので、自分の中では担任に戻る以外の選択肢はありませんでした。
復帰日前日に、流産をしたため、復帰一週間は、授業を終えて、重要な会議がない日は時間休を使い定時1時間前などに帰るようにし、体を休めることを意識しました。ですが、その後は、自分のクラスの担任は、私一人しかいないわけで、手を抜けばその分子どもたちにも申し訳ないし、仕事はどんどんたまっていくので、頑張りすぎないようにしよう。と思ってはいましたが、死産前と変わらず全力で働いています。帰り道など、ふとした瞬間にお空の子どもを思って寂しく、悲しくなって涙が出ることも最近ありました。でも、どんな私のこともお空の我が子は応援してくれていると信じて、毎朝晩、娘に感謝の気持ちを伝えています。
11.職場の人との関係について、辛かった・嬉しかった・助かった声掛けや対応、経験前後の変化などがあれば教えて下さい。
復帰前に、校長に復帰に向けての話をしに行った際には、「もう元気そうだね」と言われました。もちろん体は元気を戻し、心も回復してきてはいました。きっと校長も、私を励ますつもりの一言でしょうけど、ここまでくるまでにすごく辛くて大変だったんだけどな・・・など思ってしまいました。子どもを亡くした経験をしていない周囲の方は、声掛けには難しさがあるなと改めて感じました。「大変だったね」と言ってくれた方や、「元気?って聞いたら、うん。と言うしかないよね。ゆっくりやっていってね」など、の声掛けはありがたかったです。
クラスの子供達に対しては、休む理由について本当のことを言うか言わないかについてかなり迷いました。校長先生に相談した結果、事実を伝えたほうがいいということになり、校長先生から子供たちに事実を伝えていただきました。
1月から復帰でしたが、12月に何度か学校に行きました。校長から「クラスの様子を見に行く?」と声をかけてもらい、授業中に様子を見に行きました。児童が「あ!先生だ!」と廊下から覗く私に気づいてくれ、拍手で迎えてくれました。その時は、忘れられていなかった、待っていてくれた、と安心しました。復帰後も、子供たちからは特に何も触れてくることはなく、何事もないように休む前と変わらず接してくれています。
保護者に対しては、懇談会のタイミングで、休んだ経緯について説明しました。すると、同じような経験をしたことを打ち明けてくださる保護者もいて、同じ女性として理解がある方が多く、助けられました。
二人の天使ちゃんスペース
12.ご家族との関係について、ご経験時・お休み期間・職場復帰時・その後の働き方について考える際など、どのように相談され、どのようなサポート・やり取りなどがありましたか?
夫には、何でも話をしていました。産休のみで復帰しようとしている私に、もっと休んでもいいんじゃない?と言ってくれて、夫だけ働いていて申し訳ないなと思いましたが、その言葉をありがたく感じ、ゆっくりできました。復帰後も、サポートしてくれています。
両親は、県外に住んでいることや、私が一人娘なため、心配をかけさせたくなく、本音は話せていません。両親の前では、なるべく涙や弱っている姿は見せないようにしました。(子どもの頃から、両親に甘えたり、弱音を吐いたりしない子だったのもあるからかもしれません)
母は、火葬の日に来てくれました。とても悲しんでいる姿を見ると、ものすごく辛かったです。その後もよく食材など送ってくれています。休職中の私を心配して、数時間おきにLINEを送ってくるので、そっとしておいてほしい・・けど、仕方ないか・・・という感じでしたが。(笑)
父は、産後2か月頃に来ました。娘の骨壺を見て、「可哀想にな、もっと生きたかっただろうに」と言いました。その一言に、胸が痛くなりました。私自身は、以前読んだ本に、赤ちゃんは、亡くなることを分かっていてもお腹に来ることがあると書かれていて、娘は辛い思いはせずに亡くなったと自分に言い聞かせていたので、父の言葉がグサッときました。初孫をずっと楽しみにしていたので、なんとも言えない気持ちでした。
義母も、心配して遠方から会いに来てくれました。亡くなっていても、大切な孫として接してくれていることに感謝しています。
13.今、振り返ってみて、こうしたのが良かった、こうすればよかった、当時のご自身に伝えたいことなどはありますか?
仕事をしていると、自分を大切にすることは今までほぼなかったので、死産の経験で、自分の人生は自分で決める、周りの人にどう思われるかではなく、自分の心を大切にするということに気付けたことは良かったです。でも、仕事復帰すると、なかなかできなくなっている自分がいて、反省です。
14.パートナーに伝えたいことはありますか?
いつも支えてくれていることに感謝しています。
15.同じ働く天使ママ、これから職場復帰する働く天使ママさんへ伝えたいメッセージがありましたらお願いします。
死産することが分かってから、お腹の子どものこともたくさん調べましたが、仕事に対する不安や、働く天使ママはどうしているんだろう?とたくさん検索しました。
自分の周りにはいないけれど、世の中にはこんなにもたくさんいらっしゃるんだと思うと、少し心が救われた時もありました。人それぞれ置かれている状況も違いますし、価値観も違います。どのように進んでいくかは、最後は自分の気持ちですが、一人で抱え込まないでほしいなと思います。
16.その他、このインタビューを通して伝えたいことなどがあればお願いします。
働く天使ママについて調べた際に、同じ職種の人が見付けられなくて、情報が欲しい!と思っていました。何か少しでもそんな方のお役に立てればと思います。