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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

【まとめ】米国整形外科学科学会の膝関節症への治療に関する推奨のサマリー⑤

2018.05.25 09:15

こんばんは。夢のまち訪問看護リハビリステーション 都賀の理学療法士の倉形です。

2013年にAAOS(米国整形外科学科学会)が出した膝関節症への治療に関するガイドラインを読んでみました。AAOSのホームページからPDFが無料でダウンロードできます。

私のブログのおなじタイトルの①の所にダウンロードページへのリンクを貼ってありますので、よろしければご確認ください。

前回の続きです。今回がこのガイドラインに関しては最後です。

今回は『まとめ』を書きます。患者さんや利用者さんが読んでも理解できるようになるべくシンプルに書きます。

このガイドラインでは、

症状のある変形性膝関節症に対して・・・・

1. 効果があるもの  

  ① エクササイズ

               セルフマネージメントプログラム、筋トレ、有酸素運動(歩くなど)、

    バランストレーニング、神経-筋教育  

  ② 減量   体重が重い場合(BMIが25を超える)  

  ③ 非ステロイド系の鎮痛薬、トラマドール(オピオイド系の鎮痛薬)  

  ④ 内側区画の変形に対する骨切り術(手術の一種)・・・『限定的な推奨』

2. 効果がないもの  

  ① 鍼  

  ② グルコサミン、コンドロイチンの使用  

  ③ ヒアルロン酸の使用  

  ④ 関節内洗浄(手術の一種)  

  ⑤ 関節鏡での関節内洗浄、デブリドマン(手術の一種)  

3. そもそもデータが乏しく検証のできないもの  

  ① TENSなど電気を用いた物理療法  

  ② 徒手療法  

  ③ 膝がO脚になるのを抑える膝サポーター  

  ④ 靴の中敷き  

  ⑤ アセトアミノフェン、オピオイド、フェンタニルの使用  

  ⑥ 関節内のステロイドの使用  

  ⑦ 成長因子、多血漿板血漿の注射  

  ⑧ 半月板損傷がある場合の関節鏡視下半月板部分切除術(手術の一種)  

       ⑨ free-floating interpositional deviceの使用(新しいタイプの人工関節??)

      というものを挙げています。

 保存療法かそれに準ずる治療法の検討なので、人工関節置換術は取り上げられてませんね。

ここからは私見です。 私はまずは、1.の中であまり体への負担が大きくないものを試すのが合理的ではないかと思います。2.は効果がないとされているのでやらないとして、難しいのは3.の取り扱いです。『疑わしきは罰せず』ではありませんが、こういう結論の出ていない治療を支持する方は『まだデータが不十分なだけで、今後データが出てくれば良い結果になるに違いない』という方が多いです。なぜならば、『彼/彼女らが実際の治療で用いて、確かに効果を実感しているからだ。』というのが根拠です。ですが、これらはあまり質の高い根拠とは言えません。

下記の①と②は矛盾しません

  ① 実際は治療効果の無い治療を行う

  ② 患者の症状が改善する

 なぜならばプラセボ効果があるからです。真の治療効果とプラセボを確実に見分けることはどんなに優秀な人間でも無理です。ですので、3.は『治療効果が明らかでない』という以外言いようがないです。過度の期待はせず、まずは1.から検討することが結果的に症状改善の近道と思います(エクササイズなどは効果が出るまで少し時間がかかるので、一見すると遠回りにも見えますが・・・)。

 その他で、個人的に面白いなと思うのは・・・、

①変形の改善を目的とした治療の効果がないか、限定的

 『変形性』膝関節症なので、関節内の状態に変化が出たり(軟骨の表面が滑らかでなくなった

  り)、やアライメントが崩れたり(O脚やX脚になるなど)します。なのでこれらを改善すれば

  症状も改善するであろうと、当然考えます。しかしながら、これらを改善する関節洗浄は

  推奨されず、骨切り術は限定的な推奨に留まっています。

  また、リハビリなどで使われるサポーターや靴の中敷きなどではそもそも、

  膝のアライメントの改善もままならないのではないかと思います。

②痛み(特に慢性的に続く痛み)は、体の形態だけでは説明がつかない。

 心理的・社会的な要素も関わってきます。エクササイズが効果的な理由の理由の一つは、

 心理面への効果もあるからじゃないかと考えられます。もちろん近年注目されているように、

 骨格筋からは様々な物質が分泌されますので、それらの影響も強いと思います。

 こういうエビデンスに触れると『解剖学、生理学、運動学がしっかりわかっていれば、適切なリハビリを提供できる』という考えは、過大妄想なんじゃないかな~と思います。それだけでいいならば、変形性膝関節症の治療は関節の形態を改善する治療はもっと効果があっていいと思います。そもそも、新しい知見が出れば、解剖学、生理学、運動学も姿を変えますしね。。。

今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました   

  理学療法士  倉形裕史