命日
今日は、恩師の狩野力八郎先生の命日だ。2015年のこの日に先生は亡くなった。(Wikipediaに出ています)
今の私は先生に育てられ成長したと思っている。開業した時に先生の遺影を面接室に置いた。先生は天国からスーパーヴィジョンして応援してくれている。「ワタナベ、そういう時は、こうするんだよ」「その時にそういうこと言っちゃだめだよ」
父性として内在化された先生は、私の心に今でも生きている。
研修医1年目だった時、私は忘れ物多かったし、先生との約束でさえ忘れることがあった。先生は「最初にやることは手帳を持つことだな」と微笑んで言った。
父親のいない私には、手帳を持つという文化が無かったのだ。思い出すのは生徒手帳くらいのものだ。それから私は手帳オタクのようになった。
1990年の4月から「評価のための覚え書き」というページをつくり、臨床や生活で考えたことをメモしている。久しぶりにそれを開いた。当時から力動精神医学的思考法や技法を教えこまれていたことがよく分かる。
人間の行動(症状も含む)は、経験、衝動、防衛、順応の複雑な合成物であると書いてある。①今の自我機能は将来もそうなのか、一時的なものか(退行)、永続的なのかを必ず抑えておく 90.4/28、と手書きで書いてある。
ちなみみ自我機能のというのは問題への心の対応能力のようなもので、誰もが落ち込んだり、ショックに出会うと低下する。
この臨床の覚え書きは今でもつけていて、(最近は月に2-3回しか書かないが)2022年12月の覚え書きは、スーパーヴィジョンでこちらが学んだことも文字に書いておけ、である。
何度か学会誌にも書いたが、病床で先生は言った。
「故郷っていうのは、そこに吹く風、匂い、そういったものが懐かしいんだ」と死期が近づく窓の外をみて言っていた。