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紅く色づく季節

知らぬは本人ばかりなり

2023.04.11 10:26

【詳細】

比率:男1:女2

現代・学園もの・青春

時間:約10分


【あらすじ】

高校生のお話です。

瞳は同じクラスの吉岡君とカレンちゃんがなかなかくっつかないことにやきもきしています。

毎日違う作戦を練っては実行し、失敗をして信彦とせつなに呆れられる。

瞳は無事にカップル成立をさせることが出来るのか?


*『知らないのは……』シリーズの一話目です。

 一話完結しておりますのでこちらだけでもお使いいただけます。



【登場人物】

  瞳:佐竹 瞳(さたけ ひとみ)

    高校生。

    ちょっとおバカな元気っこ。

    吉岡君とカレンちゃんをくっつけようと必死。


 信彦:木田 信彦(きだ のぶひこ)

    高校生。

    瞳のクラスメイト。

    一人で空回りしている瞳を生暖かく見守る。


せつな:松嶋 せつな(まつしま せつな)

    高校生。

    瞳のクラスメイト。

    大人な雰囲気のお姉さん。年上の彼氏さんがいるらしい。



●昼休みの教室

   ぐったりした様子で教室に戻って来る瞳。自分の席に座り突っ伏す。

 

  瞳:だ~! もう! 何でくっつかないんだよ~!

 信彦:……瞳、うるさいぞ

  瞳:だって!

 信彦:だってじゃない

せつな:なになに? 今日はどうしたの?

  瞳:せつな~!(せつなに抱き着く)

せつな:(瞳を抱きとめて)おっと。よしよし、今日はどうしたの?

 信彦:(ため息をついて)いつものアレだよ。だから気にするだけ無駄

せつな:(察して)あぁ

  瞳:ちょっと、いつものってなによ~!

 信彦:いつものはいつものだろ?

  瞳:なんなのよ!


   信彦に食いつこうとする瞳を止めるせつな。


せつな:はいはい、落ち着いて。で、今日はどんなことしたの?

  瞳:今日の作戦は、『ハンカチを拾って恋をしよう大作戦』です!

せつな:お、おぉ……

 信彦:……頭の悪さ全開だな

  瞳:はぁ?

せつな:そ、それで? それはどんな作戦だったの?

  瞳:カレンちゃんが通った後にわざとハンカチを落として、吉岡君に拾ってもらって、そこから二人の恋が始まる! みたいな予定だったのよ!

せつな:お、おぉ。そしたら?

  瞳:どこぞの誰かもわからない男子に拾われた!

せつな:そっか

  瞳:今度こそ上手くいくと思っていたのに……なんでだよ~!

せつな:(瞳の頭を撫で)よしよし

 信彦:いい加減諦めたらどうだ?

  瞳:嫌だ!

 信彦:(盛大なため息)

  瞳:なによ!

 信彦:お前のやってることってなんていうか知ってるか?

  瞳:なによ?

 信彦:いらぬお世話。お節介

  瞳:なんだとぅ!

 信彦:だってそうだろ。勝手に吉岡と立花をくっつけようとしてるんだから

せつな:まぁ、ね……

  瞳:勝手じゃないもん!

 信彦:勝手だろが

  瞳:勝手じゃない!

せつな:えっと……その心は?

  瞳:だって、じれったいんだもん! 

 信彦:(ため息)だからそれを……

せつな:(苦笑して)木田君、落ち着いてね~

  瞳:せつなはそう思わない?

せつな:え? 私? う~ん……吉岡君とカレンちゃんかぁ。あそこはお互いのペースで楽しんでるからいいんじゃないかしら?

  瞳:(勢いよく)ダメ!

せつな:え?

  瞳:せつな、恋は戦争なのよ!

せつな:う、うん

  瞳:うかうかしてたら、誰かにとられちゃうんだから!

 信彦:だとしても、だからってお前が余計なことする必要ないだろ?

  瞳:だから余計なことじゃないっての!

 信彦:どう考えても余計なことだろ?

  瞳:なんでよ! カレンちゃんは吉岡君が好きで、吉岡君もカレンちゃんが好きなんだよ?

 信彦:そんなの本人じゃないんだから分かんないだろ?

  瞳:分かるよ!

 信彦:なんでだよ

  瞳:二人に聞いたから!

 信彦:は?

せつな:え?


   驚き瞳を見つめる信彦とせつな。それに対して何故か得意げな瞳。


せつな:……瞳、本人たちに聞いたの?

  瞳:うん! だから、本当に正真正銘の両思いなの!

 信彦:(盛大なため息)

せつな:……そっかぁ……そう言われてみれば、最近二人によく話しかけてるなって思ったけど、そういうことかぁ……

  瞳:ね? そうと分かれば、もうとっととくっつけないと!

 信彦:お前は本当に正真正銘の馬鹿なんだな

  瞳:はぁ? なに?

せつな:まぁまぁ。えっと、あの二人は正真正銘、両想いなんだね?

  瞳:うん!

せつな:だったら、自然と二人がくっつくのを待ったらいいんじゃないかな?

  瞳:え?

せつな:だって、両想いなんでしょ?

  瞳:う、うん。でも……

せつな:瞳は二人の間にお邪魔虫が入らないかどうかが不安なんだよね?

  瞳:……うん

せつな:(微笑んで)瞳は優しいね

 信彦:おい、松嶋

せつな:(信彦に視線だけ送って微笑み瞳へ)だからさ、ちょっと待ってみない?

  瞳:え?

せつな:吉岡君とカレンちゃん、二人のペースで愛を育むのを

  瞳:でも……

せつな:大丈夫だよ。お互い両想いなら

  瞳:……

せつな:それに

  瞳:それに?

せつな:もしも二人がカップルになれなかったとしたら、それはそこまでの恋だったってことでしょ?

  瞳:え?

せつな:だって、お互いがお互いを好きなのにカップルになれなかったってことはまだまだ何かが足りないから、神様がストップをかけたんだよ

  瞳:(納得して)そっか

せつな:そう

  瞳:でも、私は二人に悲しい思いしてほしくない……

せつな:だから、そうならないように見守ろう

  瞳:……せつな……

せつな:ね?

  瞳:うん! せつな、ありがとう!

せつな:いいえ~

  瞳:(急に立ち上がち)よし、私、ちょっと行ってくるね!

せつな:え? 瞳? 

  瞳:私、二人がちゃんとカップルになれるように見守ってくる!

せつな:あ、ちょっと、瞳!


   瞳、勢いよく教室を出ていく。


せつな:あぁ、行っちゃった……

 信彦:松嶋……

せつな:ま、まぁ、これで当分は大丈夫でしょ

 信彦:まぁ、確かに。松嶋は流石だな

せつな:え?

 信彦:あいつの扱い方をよくわかってる

せつな:まぁね。これで、当分は吉岡君にあの子が積極的に話しかけることはなくなるね、木田君?

 信彦:……そうだな

せつな:なんで人の恋路には気が付くのに自分への好意は気が付かないかな、あの子

 信彦:俺は別に……

せつな:ん? 私は別に誰からの好意って言ってないけど?

 信彦:……

せつな:(微笑んで)恋は戦争なんだってよ?

 信彦:あぁ……

せつな:うかうかしてると誰かにとられちゃうかもよ?

 信彦:……

せつな:瞳ってお節介でちょっと抜けてるところあるけど、明るいし、かわいいしで人気あるからな~

 信彦:(席を立つ)

せつな:ん? どうしたの、木田君?

 信彦:あの馬鹿を探してくる。また誰かに迷惑をかけてるかもしれないしな

せつな:(微笑んで)そっか。いってらっしゃい

 信彦:あぁ。あ、松嶋……

せつな:もちろん、誰にも言わないわよ

 信彦:おう。じゃあ、行ってくる

せつな:はいは~い


   信彦、教室を出ていく。


せつな:(息をつく)本当にもう。でもまぁ、これが青春ってやつよね~。なんだか私も久しぶりに二人っきりで会いたくなっちゃったな……放課後、甘えにでも行っちゃおうかな



―幕―




2020.10.12 ボイコネにて投稿

2023.04.11 加筆修正・HP投稿