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惑星コーラ

2018.05.25 10:52

今夜は一体何キロ歩いただろうか。

赤い月に照らされた砂漠を、田中は這うように歩き続けた。


後ろで獣の鳴き声が聞こえた。それは野生と理性の入り混じった音であった。

この星は猫が支配している。人間は奴隷かペットとして扱われていたのだ。長い惑星間航行の末、田中は故郷の地球へ帰ってくるはずだったのだが、たどり着いたのはこの砂漠の星だった。


猫たちは最初は言葉を喋る田中を歓迎し、珍しい客として扱ってくれた。だが、田中は彼らの奴隷の女に恋をした。彼女を助けるために、看守の猫を殺してしまったのだ。


猫は素早く、そして賢い。

田中は追われる身となり、女は逃亡中に崖から落ちて死んでしまった。


砂漠の山を越えた田中の目に、赤い月に照らされた青色が飛び込んできた。

「海だ…」

足元に瓶が転がっていた。

それを拾い上げた田中は、瓶に付いている砂を払った。

「これは、まさか」

田中の胸が火を吹いた。後ろから猫の兵隊たちが駆け寄ってきた。


撃たれた田中の手にはコカコーラの瓶が握られていた。




山下は、ここまで読んで本を閉じた。

山下の目の前には感想を待ち受けて、期待と絶望が入り混じり、今にも椅子から飛び上がりそうな瀬野が座っていた。


山下はコーヒーをすすると、窓の外に視線を移した。

今にも爆発しそうな赤い空からは、今日も塵が舞い落ちていた。