環境科学専門家も「処理水の海洋放出は最善の選択」と太鼓判
韓国野党訪日団のウソだらけの記者会見
韓国の野党「共に民主党」の国会議員4人による「福島原発汚染水放出阻止対応団」の一行が4月6日から8日の日程で日本を訪れた。
しかし、帰国後に対策団が行った記者会見に関する記事を見て驚いた。
対策団の団長を務めた魏聖坤(ウィ・ソンゴン)議員は「現地で会った地域住民全員が海洋放出に反対すると言っていた」とし、「今回の訪問で韓国国民の懸念と韓国の世論を日本に正確に伝える成果があった」と述べた。さらに「梁李媛瑛(ヤン・イウォンヨン)議員は原発が正常に稼働している際には検出されることのないプルトニウムなどが処理済み汚染水に多量に含まれていることを現地で確認したと主張した」という。
さらに「韓日国民の(海洋放出問題への)関心をもう一度高める成果があった」とし「東京電力と韓国政府が明確に公開しない放出水の関連データ提供を強く要求し、韓日政府が透明に情報公開を行う条件を作った」と話した。
<聯合ニュース4月10日「訪日の韓国野党議員『海洋放出巡る国民の懸念、正確に伝えた』」>
門前払いされた韓国国会議員訪日団
「汚染水放出阻止」を訪問団の名前に掲げた野党議員の一行4人は、そもそも東京電力本社や福島第一原発の構内への訪問を拒否され、現場視察も出来なかっただけでなく、経済産業省や日韓議員連盟からも面会を拒絶されていた。彼らが面会できたのは、福島県伊達市の市議会議員と「ふくしま共同診療所」の医師、それに地元住民のたった3人だけだった。
この3人から聞いたことが、「地域住民全員が海洋放出には反対している」ということであり、「処理済み汚染水にはプルトニウムなどが多量に含まれている」という、日本人が聞いたらそれこそ卒倒してしまいそうな、とんでもない話の内容だったという訳である。
こんなウソを記者会見で堂々と話す国会議員の頭の中身にも呆れるが、韓国政府も出資する国営通信社が何の裏取りもせずに、フェークニュースを垂れ流すことにも呆れるばかりだ。
韓国国会議員の一行が日本を訪れたことさえ日本ではほとんど報道されていないし、東京電力本社や福島第一原発への立ち入りを拒否された彼らが行ったのは、アリバイ写真を撮るために韓国語で書かれた横断幕を広げて東京電力本社前や「ふくしま共同診療所」前で写真を撮っただけだった。
こんなことでなぜ「韓国国民の懸念と韓国の世論を日本に正確に伝える成果があった」などと言えるのか。恥ずかしくてとうてい口にできないウソでも平気でするのが韓国の国会議員とマスコミである、ということがよく分かった。
福島で面会できたのは活動家3人だけ
そもそも彼らが面会できた伊達市の島明美市議は、「ALPS処理水」をあくまでも「汚染水」だと公言して憚(はばか)らず、子どもの内部被曝や除染問題をめぐって熱心に運動を続けてきた反原発活動家であり、1970年代から反原発・反核燃料サイクルの活動を続けてきた故・高木仁三郎氏を中心にした「原子力資料情報室」から助成金を受け取るなど、「原子力資料情報室」の見解と立場をそのまま踏襲している人物だ。
彼女のTwitterによると、韓国の議員に対して彼女が話したのは「私の周囲では、賛成してる人はほとんどいない。もっと当事者、漁業者、市民の声を聞いてほしい」ということだったという。しかし、これが韓国では「汚染水放出に賛成している地元住民はほぼいない」と伝えられ、「処理水には大量のプルトニウムが含まれている」とされ、それらが福島県民や日本国民を代表しての発言のように報道されているのだ。
<聯合ニュース4月7日「福島県の市議 汚染水放出に『賛成する住民ほぼいない』=韓国議員と懇談」>
さらに「ふくしま共同診療所」については、「公安調査庁の『内外情勢の回顧と展望』では、福島市内の『ふくしま共同診療所』を、『中核派系』医療機関と認定している」
(産経新聞2015/3/9「過激派、福島にターゲット 不安あおり浸透図る?」)とされる、いわく付きの施設である。
島議員と「ふくしま共同診療所」は、福島県内の子どもの甲状腺ガンが高い確率で発生していると問題視しているようだが、環境省_チェルノブイリ原発事故と東京電力福島第一原子力発電所事故との比較 (env.go.jp) では
「チェルノブイリでは被ばく時年齢がより低いほど、甲状腺がん頻度の高い傾向が見られた一方、福島では事故後の3年間において、低年齢層では甲状腺がん頻度の上昇は見られず、年齢の上昇に伴う頻度の上昇が認められた。これは通常の甲状腺がんの罹患率の上昇パターンと同じであるため、福島原発事故後の3年間で見つかった甲状腺がんは、原発事故の放射線の影響によるものではない」との結論を出している。
韓国の野党議員らは、現在の保守政権を痛めつけ、与党との陣営争いで野党側に有利な条件をつくるための材料として、福島の処理水の海洋放出を大げさに扱って利用し、日本産の農水産物が放射能で汚染されていると国民の感情を煽(あお)り立てることができれば、それでいいのであり、科学的な裏付けや証拠など、最初からどうでもよいと思っているのだ。
そうした彼らの望み通りに、彼らに都合のよい証言、言質を与えたのが、彼らが会った少数の活動家たちであり、風評被害が近隣の国や海外に広がるのに手を貸し、福島の漁民の苦しみを永続化させる手助けをしているのは、誰なのかは明らかだ。
「海洋放出がベストの選択だ」という環境科学専門家
処理水について正確な科学的な根拠は必要ない、としている韓国国会議員と韓国マスゴミだが、福島第1原発の処理水について、海洋放出が「ベストの選択だ」と断言するイギリスの環境科学の専門家の意見を紹介したい。
それは、英国ポーツマス大学で環境科学を教えるジム・スミス(Jim Smith)教授がオンライン学術誌The Conversationに、今年1月23日発表した論文“Fukushima to release wastewater – an expert explains why this could be the best option”(福島が廃水放出へ – 専門家はこれがなぜ最善の選択肢なのか、を説明する)で、
ネットニュースAsia Times が翌24日、 “Fukushima radioactive water release not such a big deal”(福島の放射能汚染水の放出はそんなに大きな問題ではない)と題して、同じ論文の内容を転載している。
ジム・スミス教授は、水生生物など地球生態系の放射能汚染を研究する専門家で、チェルノブイリ原発から30キロ圏内の制限区域で野生生物の調査に行うなど、チェルノブイリ原発の環境影響評価に関する4つの国際プロジェクトに携わっているほか、チェルノブイリ原発に関する国際原子力機関IAEAの専門家メンバーを務めている。また2011年に発生した福島第一原発事故についても、その環境への影響について科学誌NATUREにいくつかの論文を発表し、日本の原子力規制庁や福島県に対してもアドバイスを行っている。
ジム・スミス教授の論文から抜粋して以下に引用する。
自然界では福島の3000倍のトリチウムが毎年生成されている
<環境科学者として、私は30年以上にわたり、環境における放射性汚染物質の影響について研究してきた。私は廃水wastewaterを海洋放出することが最善の選択だと考える。
水中の放射性トリチウム=三重水素は化学的には普通の水と同じであり、それを分離することは高いコストと時間、多くのエネルギーが必要となる。2020年段階で、トリチウム分離技術は確立されておらず、大量の水を必要に応じて処理することは不可能だと判明している。
しかし、放射性トリチウムは環境への影響が少ないことが分かっている。 化学的には通常の水と同じで、トリチウムは水のように生物の体内を通過するため、体内に蓄積されることはない。(中略)
トリチウムが崩壊すると、ベータ線(DNAを損傷する可能性のある電子の動き)が放出される。しかし、トリチウムのベータ線はエネルギーが弱く、一定の放射線量を被爆するためには、大量のトリチウムを摂取する必要がある。
世界保健機関WHOの飲料水基準では、トリチウム濃度は1リットル当たり10,000ベクレル(Bq)だが、これは福島の放流水のトリチウム濃度1500ベクレルの7倍に相当する。
世界各国の原発施設が何十年にもわたってトリチウムを海に放出してきた理由は、廃水からトリチウムを分離することの難しさと環境への影響が限定的なためだ。福島第一原発からは、年間22兆ベクレル(0.022PBq)の割合で放出される計画で、これは莫大な量のように聞こえるが、地球全体では大気中での宇宙線の衝突により、年間5~7京ベクレル(50~70PBq)のトリチウムが自然生成されている。(補足:つまり福島の2~3000倍のトリチウムが毎年、自然発生している)
仏再処理施設で発生しない環境被害がなぜ福島で問題になるのか
フランス北部のラ・アーグ核燃料再処理施設からは、毎年1.1京ベクレル(11PBq)のトリチウムがイギリス海峡に放出されている。そのラ・アーグ再処理工場から放出されたトリチウムによって、環境に大きな影響があったという証拠は示されておらず、人々への線量は低い。(補足:福島でもラ・アーグと同じALPS処理施設を使っているが、ラ・アーグで全く問題になっていないプルトニウムが福島で外部に漏れ出すはずがない)(中略)
福島の排水から推定される放射線量は年間で最大でも3.9マイクロシーベルトで、 これは、人々が毎年平均して自然放射線から受ける2400マイクロシーベルトよりもはるかに低い数値である。
私たちが直面している大規模な環境問題に比較して、福島からの廃水の放出は比較的軽微なものだ。しかし、それにも関わらず、苦境にある福島の漁業には、さらなる風評被害が加えられる可能性が高い。それは、太平洋への放射性の水の新たな放出をめぐって、政治的に利用し、メディアが怒りを煽るような主張をするためでもある。>(引用終わり)
科学ではなく大衆操作ねらう政治とメディア
この最後の部分でジム・スミス教授も言っているように、福島処理水の海洋放出を問題として取り上げる人々は、科学的根拠ではなく、大衆の感情を左右したいと望む政治的な意図やマスメディアの役割のほうが大きいのである。
そうした人たちに科学的根拠をいくら訴えても、もはや聞く耳は持たないだろうが、もう一つ、有機結合型トリチウムOBTと呼ばれるトリチウム化合物の内部被曝について、放射線生物学の専門家、茨城大学理学部の田内広教授の見解を以下に紹介したい。(以下引用)
<トリチウムは弱いβ線を出すのみで、内部被曝による身体的影響が考えられる。
被爆の実効線量を比較すると、有機結合型トリチウム(OBT)は水溶性のトリチウム(HTO)の2~5倍程度。同じく体内被曝する水溶性の放射性セシウムと比較するとトリチウム化合物OBTの内部被曝量は300分の1以下。
これまでの動物実験や疫学研究から「トリチウムが他の放射線や核種と比べて特別に生体影響が大きい」という事実は認められていない。
マウス発がん実験では、トリチウム濃度が1リットルあたり1億4000万ベクレル程度以下の飲み水を生涯(最長800日前後)飲ませても癌発生の頻度・質ともし自然発生と同程度だった。トリチウムを排出している原発周辺でのトリチウムが原因と考えられる共通の影響の例は見つかっていない。>
<茨城大学理学部教授・田内広(博士・放射線生物学)経産省ALPS処理水の取扱いに関する小委員会での発表2018/11/30>