欲張りな内川の欲張らない戦略!平賀の最もうれしいトップ! RTDリーグ2018 WHITE DIVISION 35-36回戦、BLACK DIVISION31-32回戦レポート
5/21(月)および5/24(木)21:00よりAbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ2018 WHITE DIVISION 35-36回戦およびBLACK DIVISION31-32回戦の様子をお届けします。
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
▼▼▼BLACK 31回戦:欲張りな内川の欲張らない戦略▼▼▼
今シーズンの開幕から・・・というより昨シーズンの開幕からだろうか。最下位が定位置になってしまっている内川。その対局前コメントがすごかった。
後半戦に入って最下位。どう考えても残留争いに目がいきそうな状況だが、こうコメントするということは、準決勝進出の4位を見つめているということである。
鈍感力とでも言えばいいのだろうか。
全く慌てずに平然と上を見る様は圧巻でもあり、気が触れているようでもある。
そこまで言うからには当然ながら内川に秘策アリ。
東1局、中、發をポンして切るところ。
私の知っている内川は欲張りである。
欲張りな内川は、ホンイツかドラを使うことを目指し、ピンズを払っていきそうなイメージがあった。
しかし、内川は5mを切る。
これは面白い。欲張りな男が、2,000点上等の手順を踏んだのである。
内川「この辺りから、序盤の持ち点をすごく意識するようにしています。(大振りした勝負手が仕上がらず、)東場でツモられたジリ貧が続いての敗戦が多かったので、東場で軽めのアガリを重ね、オヤ番で余裕を持って勝負できるようにしようと」
トータル最下位の内川は、オヤ番である程度無理に攻めざるを得ない状況であり、そこに半荘内の持ち点も少ないとあらば、さらに攻めざるを得なかった。
そこを対戦相手に狙われ、返り討ちに遭うことが多かったのだ。
その状況を打開する策が、「半荘内の持ち点だけは減らさないようにして、オヤ番で真っすぐ攻める以外の選択肢があることを対戦相手に見せる」というものだったわけである。
内川が6pを引いて、単騎を探すフェーズに入り、西を引いてドラ受けの4s5sを外したところ。
マンピンソウがまんべんなく切られ、ホンイツっぽくない捨て牌のプレイヤーがドラ受けの4s5sを外した。
これは、他家から見れば三元役が強烈に匂い立つ状況である。
白単騎の小三元が本線で、下手をすれば浮いている白が重なってのシャンポン受けまで想定すべき局面だ。
これに対し、タンピンドラ1をダマテンに構えていた多井は、白を掴んで迂回を余儀なくされる。内川の仕掛けと切り出しがなければ当然リーチとなっていた手牌だ。
そして・・・
この後もとにかく単騎を入れ替えて白に注目を集めた内川が、たった2,000点の手牌で1人テンパイに持ち込んだ。
この加点が、内川が言うところの「序盤の持ち点を減らさない」ということである。
これまでこういう微妙な手牌でのテンパイ流局による加点が少なかった内川が、ついに見せた「欲張らずに迂回させる手順」。
これを見せられては、対戦者は内川に対する印象をアップデートせねばならない。
内川には何でもある、と。
そして、内川の持ち点が増えていることが、相手に「何でもある」という思考を助長させる。
すると、内川は、オヤ番でこのリーチ。
一見、何の不思議もないドラシャンポンのリーチだが、1mが2枚切れているのである。
通常モードの欲張り内川ならば、ダマテンでの12,000を取りにいくように感じるが、足止め流局も見据えてリーチといった。
これに対し、瀬戸熊が3面張で追いついてリーチにいくと、發を掴む。
裏が乗り、望外の18,000で大きくリードした。
この2つを見せておいての東4局。
トップ目でドラが2枚あるため、9pや1pが選ばれやすいところだが、内川はノータイムで3sを打ち出してホンイツに向かう。
内川「2着目松本くんのオヤ番なので9pと悩みどころですが、倍満まで見えるのでスタイル的に打点を取りにいきますね。確かに2s3sを残した方がアガリ率は高そうですけど、ホンイツ逃しが1番嫌っていう感覚です」
ここで、ようやく持ち前の欲張りを前面に出してきた。
結局この手牌はテンパイできずだったが、ついに欲張りを封印した攻撃も見せてきた内川が、ターニングポイントとしたい半荘で大きな意味を持つトップを獲得している。
▼▼▼WHITE 35回戦:平賀、RTDリーグ史上最もうれしいトップ▼▼▼
さて、一方のWHITE。
昨シーズンのチャンピオン平賀がまさかの最下位に甘んじているが、4位までは100ポイント以内であるため、まだまだワントップでひっくり返るポイント状況だ。
その平賀がオヤで強烈なリーチ。
4p5p切りリーチで単騎待ちの臭いは消し切れないが、切り出しが字牌からであるため、チートイツよりは断然普通のメンツ手に見えそうで、手牌を崩さなければ1枚切れの白までは押さえきれないだろう。
それならば、ダマテンでもマンガンだが、リーチして相手に制限をかけた方がいいという判断である。
これにイーシャンテンとなった和久津が飛び込み、12,000。
平賀が得意の起家で先制に成功すると、そのままトップ目でオーラスを迎える。
カン2s、發ポンと仕掛けて切り番。
2pと4pはどちらも1枚切れで、この深い巡目ならばカン4pから4p7pへの変化もあまり意味をなさないため、ダイレクトでアガリやすそうなカン2pに受けそうなところ。
しかし、平賀は1pを打ってカン4pに受ける。
平賀「4pの方がいいと思ったっていう前提で、1p並べた方が最終形を読まれにくいと思った。カン2sの仕掛け出しから、チャンタも想定に入ると思ったからね。あと、両面変化も一応あるから4pに受けたよ」
面白い。これが正解で、ヤマには4pの方が残っていた。
そして、和久津のリーチを受けるが、きっちり4pをツモってトップ。
平賀は言う。
平賀「RTDリーグの中で、今までで1番うれしいトップだった」
最下位脱出と準決勝進出に向けて、それほど大きなトップであった。
▼▼▼WHITE 36回戦:石橋、痛恨の2着▼▼▼
WHITEもう1卓は、石橋が先制する展開となった。
その石橋が勝又のリーチを受けてイーシャンテンから1枚切れの北を切ると、なんとたろうからロンの声。
この瞬間、石橋の顔がゆがんだ。
勝又のリーチに一発で5mを押したたろうが、ダマテンで北にロンということは、絶対にマンガン以上だとわかっているからだ。
この放銃でたろうとの競りになった石橋は、たろうの猛攻にあってトップを明け渡す痛恨の2着。
逆にトップのたろうは、残り3節を残してついに首位に立った。
▼▼▼BLACK 32回戦:小林、安定の攻撃でついに400オーバー▼▼▼
首位独走の小林が今シーズン何回目か数えきれない一発ツモ。
トップ目で南場のオヤ番を迎えたのだが、ここで2着目の萩原からリーチを受ける。
すると、このタイミングで小林にもホンイツチートイツのテンパイが入った。
萩原の捨て牌に5pが早いため、5pまたぎになっていることは少なさそうで、自分の打点を考慮に入れれば押しの一手。
小林は、1枚切れの7pを切って6p単騎に受ける。
しかし、次巡に掴んだドラまたぎの6m、これはどうか。
アガリの薄い6p単騎でこれを押すのは見合わない。
では、7pと同じく5pまたぎで通りそうな6pを打つのはどうかというと、それでは打点が下がるため、やはり見合わない。
小林は、見事に6mを止めてオリていった。
こういう場面を見ると、よく話題に挙がるのが、小林の低い放銃率。
その放銃率の低さから、「守備の小林」という印象があるかもしれないが、それは少し違う。
南3局の勝負所で早々に白を仕掛けた小林は、ドラの南が浮いたリャンシャンテンから3pや9mを先切りし、目一杯に受けずにアンパイの東を抱えていた。
そして、白鳥のリーチを受けたタイミングで南が重なると、打東で攻撃態勢を維持する。
攻撃態勢を崩さないために一発目に東を打つこと、つまりは「攻撃のために準備している」からこその低い放銃率であり、それとともに高いアガリ率を実現した「(打点は高くないが)攻撃の小林」なのである。
テンパイを果たした小林は白鳥に押し返し、アガり切ってトップを決めた。
とにかく攻撃態勢を崩さない小林が、ついに400オーバー。
この男、どこまでいっても攻撃を続けるつもりである。
一体どこまでポイントを伸ばしてしまうのだろうか。
鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
■次回5/28(月)21:00からBLACK DIVISION 33-34回戦をAbemaTV 麻雀チャンネルにて放送予定