タイ映画「運命のふたり / Love Destiny」(2022年)超おすすめ!キャストとあらすじ
おすすめ度:★★★★★ 運命の出会いを信じずにはいられない傑作ラブコメ時代劇
Netflixでタイ映画「運命のふたり / Love Destiny」(2022年)を観ました!現代とラタナコーシン王朝前期の1844年がつながるスペクタクル時代劇。家同士が決めた婚約者のブホップとゲイソンは「生命線」がつながった「運命の相手」。しかし、婚約破棄から始まった恋はそんなに簡単にはいかない!未来からやってきた青年メータスとの不思議な出会いが、2人の運命とサイアムの未来を動かしていく。タイの伝統的な音楽や舞踊、衣装などが全面的にハイライトされたタイらしさ全開の傑作ラブコメ時代劇。タイで大人気を博したドラマの劇場版。
生命線がつながった2人
映画の舞台は1844年のサイアム(現在のバンコクの古い呼び名)。寺院の建設にあたる役人ブホップ・ソンバトボディと警察大佐の娘ゲイソンは、家同士が決めた婚約者。しかし、ブホップ・ソンバトボディには10年間夢に現れ続ける意中の女性がいた。教養の高いゲイソンは、結婚など全くその気はなかった。
2人の「生命線」はつながっていて、「結婚すれば安泰」だが、「破談になれば2人のうちどちらかが死ぬ」と占われていた。どうしても結婚だけは避けたいブホップはある日、意を決してゲイソンの実家に出向き、両親に婚約破棄を申し出る…。
婚約者でありながら、お互い顔も見たことがなかったブホップとゲイソン。それが、街で芝居を見ていた時に偶然出会い、2人はその時初めてお互いが婚約者だったと知る。ブホップに妙な運命を感じるゲイソン。しかも、ゲイソンはブホップが夢で見ていた意中の女性そのものだった!
婚約破棄を申し出たことを悔やみ、できることなら婚約した4年前に戻りたいと願うブホップは、そこからゲイソンの気を引こうとあれこれ画策を始めるが…。
お嬢様のゲイソン役をベラ・ラニー・カンペン(Bella Ranee Campen)、役人ブホップ・ソンバトボディ役を「Oh My God Father! / なんと父よ!」(2020年)のポープ・タナワット・ワッタナプート(Pope Tanawat Wattanaputi)が演じています。
謎の木箱とメータス
勉強が好きなゲイソンは、サイアムにあるアサンプション教会でパレゴワ神父のもとで英語を学んでいた。教会で英字新聞が読めるまでになっていたゲイソンは、イギリスから蒸気船がやってくることを知り、港でその見物に。そこで英国交易所でイギリス人商人ハンター氏の助手として働くメータスという男と出会う。
そして、ゲイソンはすぐに気づく!このメータスという男、パレゴワ神父が市場で中国人商人から買った木箱の中に入っていた謎の書物「カラケットの日記」に書かれていた言葉を話し、見たことのない「スマホ」というモノの話をしていると!
ブホップとゲイソンが話を聞いていくと、どうやらメータスは2021年のタイからタイムリープして177年前のタイにやってきたらしい。そして、すぐに例の木箱にあった「カラケットの日記」には「未来」が「過去の記録」として書かれているとわかる。そして、そこにはイギリス人商人ハンター氏がサイアムの王子と進める蒸気船の取引についても書かれていた…。
謎の商人メータス役を演じているのは、大人気俳優のアイス・パリ・イントンコマンスット(Ice Paris Intarakomalyasut)。未来から来たメータスが元いた時代(現代)に戻るために待ち続けていたのは、ちょうど2か月後に起こるという「日食」だった。
メータスが日食を待つ間、ゲイソンを振り向かせたいブホップに、あれやこれやと恋の手ほどきをする。それが奏功したのか、ゲイソンがブホップに徐々に惹かれはじめるも、婚約破棄までしてしまった以上、ブホップのプロポーズはそんなにうまくはいかない!時代劇なのに、終始漂うラブコメ感がなんともたまりません!
蒸気船の取引
物語が進むにつれ、焦点はイギリス人ハンター氏が売買契約をすすめる蒸気船から、ハンター氏の真の目的へとシフトしていく。それはサイアムの王子と武器の取引で手を組み、ハンター氏が財務大臣に就任して外国貿易を一手に引き受けるという密約だった!
ハンター氏がサイアムをイギリスに売ろうとしていることを知ったブホップ、ゲイソン、メータスはなんとしてもハンター氏の企みを止めようとするが…。正面から立ち向かったゲイソンとメータスはハンター氏の一味に拘束され…しかし、なんとそこにはさらに裏の画策が!
サイアムを植民地にするため、攻め入る口実を作ろうとしていたイギリス軍の策略で、蒸気船取引の祝砲が間一髪、要塞の爆破になるところに!そうはさせまいと大砲に飛び乗り空へと向けるブホップ!物語はいよいよ佳境へと突入していきます!
運命の日食
そうこうしているうちに始まる日食。メータスが元いた未来の世界に帰れるかどうか、運命の分かれ道。日食が進み、空が次第に暗転していく中、メータスの家に一世紀にわたり受け継がれる家宝の銃を握ったのはゲイソンとブホップだった。
発砲の衝撃で海へと落ちた2人。その時、死の淵でゲイソンが見たのは…未来の日記を書いた過去(前世)の自分…そう、カラケットはゲイソンだった。そして、前世の記憶を思い出したゲイソンは、ブホップが運命の相手だと知る。
過去で共に時間を過ごしていた縁を持つ2人は、今世でまた出会い、恋に落ちた。でも、ブホップは言う。「前世はもう重要じゃない。僕の心の中にいるのは君だけだから。今世の君だけだ」と。
Mr Destiny は My Destiny
もう最高です。かつてこんなに爽やかで深みのある時代劇ラブコメがあっただろうか!サイアム王朝時代の歴史を入れ、植民地化の危機をサスペンス仕立てで描きながらも、見るのがしんどくなるほど重すぎない。そして、仏教の国タイらしい「前世とのつながり」を輪廻転生で生まれ変わる命に投影しながら、2021年からの「タイムリープ」で現代風にポップにアレンジ。
なんとも天才すぎる…!
この作品で描かれている時代のタイ(サイアム)はちょうど、日本でいうなら幕末から明治時代のような時期で、外国との交易を通じてこれまではわからなかった外の世界とつながり、今まで見えなかったものが見えてきて、さまざまな変化が起き始めた時期のようです。そのためか、この作品を見て感じる高揚感は、ちょうど日本人が、坂本龍馬の歴史ドラマを見て、新しい日本の幕開けにワクワクする(同時にハラハラもする)、あの感覚にもどこか似ている気がします。
そして、押さえておきたいのが、時代描写がなんとも華やかで美しいところ!建築や衣装のような目で見てわかる描写もさることながら、現在のバンコクでカトリック信仰の中心地になっているアサンプション大聖堂で、ユーモアのあるパレゴワ神父が「サイアムのGoogle」としてゲイソンに知恵を授けてくれるのもおもしろいし、仏教のお経を唱えて大砲の火を吹き消すのもおもしろい。
また、最後の最後で巻き起こるパラレルワールド的展開もおもしろい。メータスがイギリス人ハンター氏の子孫だという設定もフィクションにリアリティを加えているし、一方で、日食で元の時代に帰れなかったメータスが、未来で見た過去の写真に写っていた先祖は自分だったと気づくシーンもおもしろい!当然、理論的には説明つかない点ではあるのですが、そもそも理屈じゃない、それが運命だと、思わせてくれます。
教養のあるゲイソンが自由を求める女性として象徴的に描かれているのもジェンダー平等の時代に忘れてはいけないポイント。ちなみに劇中ではゲイソンの容姿について、「変な髪型」とか「おかしな服装」みたいに言われています。非常にわかりやすい描き方ですけどね…。
というわけで、タイ映画「運命のふたり / Love Destiny」(2022年)は文句なしの5つ星!長編ドラマ版も見たくなってしまう大興奮の傑作です!