贈り物
師匠の津堅先生はトランペットに止まらず作曲もされます。そのときのペンネームが「マルセル・ケンツビッチ」。フランスの作曲家、マルセル・ビッチに「ツケン」のいわゆる業界読み「ケンツ」を足したものです。
先生の書かれたオリジナルスコアを印刷譜にするお仕事を学生の頃からさせていただいております。
短いソロ作品もあれば管弦楽編成や、吹奏楽とソリストによる壮大なコンチェルトもあり、師匠の作品を浄書させていただいたことで僕のFinale(楽譜浄書ソフト)スキルも上がることができました。ありがたいことです。
したがいまして、ケンツビッチ先生の楽譜データもすべて僕が管理しております。ドキドキ。
怖いのであらゆる場所にデータ保管しておりますが、そんな感じなので、ケンツビッチ作品を演奏したいという近しい方が師匠に連絡をされると、僕がその方へ楽譜データをお送りするという流れになっています。
ケンツビッチ作品の中に「七重奏曲『鮭』」という作品があります。
変わったタイトルの作品ですが、魚で連想する室内楽作品と言えばシューベルト作曲「鱒(ます)」。
「鮭」を聴いていただければわかりますが、「鱒」のあの有名なメロディの音程を反転した主題が出てきます。鮭だから。上流に向かっていくから。
最初の発想は実にわかりやすいパロディですが、作品のクオリティは相当なものです。しかも鮭が誕生し海に出て戻って産卵して死んで新しい命が誕生する壮大なNHKスペシャルです。ぜひ一度聴いていただきたい。
編成は、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピアノ、トランペットで、まったく同じ編成でサン=サーンスの7重奏曲があり、その作品をコンサートで取り上げると、同じメンバーで演奏できる作品が他にないということからこの編成になっています。
さて、そんな感じの「鮭」ですが、先日師匠から、鮭を演奏したいという方がいらっしゃるので、データを送るようにメールが届きました。
あいにく出先ですぐに送信作業ができなかったので、忘れないようにiPhoneのリマインダーに入力していたのですが、なにぶん時間がなかったので最低限わかるように急いで入力したんです。
それがこちら。
…これではまるでお歳暮ではないか。
こんな感じか。
(出典:https://kirafune.exblog.jp/15254642/)
荻原明(おぎわらあきら)