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Koji Kawamoto - Conductor

親友Elahiu von Erlenbachのこと

2023.08.10 08:30

写真で私と肩を組んでいるのはElahiu von Erlenbach(エライウ・フォン・エルレンバッハ)。私の数少ない親友の1人です。写真のモザイクに深い意味はなく、テーブルの上が「食後の美しくない状態」になっていたので隠す・・自主規制です。

ちなみにこの写真は中国浙江省杭州で久しぶりに会って食事をした2014年10月に写したもので、図らずも彼と写した唯一の写真となってしまった1枚です。


エライウはベルリンのハンス・アイスラー音楽大学卒業後、自身の先生を通じて届いた中国人の同門兄弟子の要請を受けて中国に渡って以降、長年中国で活動していた指揮者。私との出会いは2007年のことで、第一専属指揮者を辞任した時にフォアポンメルン歌劇場で私が担当していたプロダクションの1つ、プロコフィエフのバレエ「ロメオとジュリエット」を引き継いでもらうために電話で打ち合わせをしたことがきっかけでした。

中国語をとても流暢に操り、中国人の気質を深く理解し、とても穏やかな性格で、ドイツ人にしては珍しく他者の気持ちに寄り添うことのできる彼は、私よりも7歳年上で、兄のような存在の親友でした。


2013年に中国に招聘してくれたのが彼でした。その時の杭州での演奏会の評判が良く、それをきっかけとして福建省、陝西省、河北省、山東省、広東省、貴州省 etc. etc....中国での活動が広がっていったわけですが、最初のきっかけをくれた彼には今でも本当に感謝しています。いつも私のことを気にかけてくれ、電話やチャットでたくさんの助言をもらったこと、本当に助かりました。


写真に写った2014年を最後になかなか会えない日々が続き、それでも、2018年の新年の挨拶を交わした時の会話で、3か月後の4月にお互いが中国国内のかなり近いところにいることが分かって再会を誓ったのですが、その約束が果たされることは残念ながらありませんでした。(近いと言っても200kmは離れていたのですが、中国人にとってこの程度の距離は近いという認識だそうで、人によっては5〜600kmの距離さえも近い!と言い切る人がいます。この手のエピソードは自分にとって中国の広さを実感するもので、国民性を含む中国を知る上で貴重な経験の1つだと感じています)


忘れもしない2018年2月18日、中国からの一報で、彼が急死したことを知りました。春節の休暇を利用してドイツに里帰りしていた際の出来事で、死因は心臓発作だったそうです。

親友の死にショックを受け、しばらくの間何も手につかない日が続きましたが、墓前で手を合わせたいと思い、彼の死から4ヶ月後の6月、彼の生まれ故郷に出かけました。

その時はまだ4ヶ月とうことで墓石は未完。木の十字架が立てられていただけでしたが、そろそろ墓石が作られたのでは?・・と思い、先日(2023年5月)5年ぶりに墓参に出かけました。


1回目の墓参は車で彼の墓所まで直接乗りつけたことで気づかなかったのですが、2度目の墓参となった今回は鉄道を利用して出かけたので、墓所からバスで15分程度の最寄駅がある隣街が古い歴史を持つ美しい街であることを知り、そして、音楽家であったことが一目でわかる彼の墓石を見て、彼との友情と、共に過ごした時間を反芻しながら墓前で手を合わせ…

生きていれば今57歳の彼と、音楽のこと、人生のこと…美味しい食事とお酒を楽しみながら、色々語り合いたいなぁ…と思い…


彼が他界して5年経っているので、親友を失った悲しみそのものは癒えつつあるのですが、それでも、生きていてくれれば…という思いは消すことができません。

この世に生を受けるということは、必ず終わりが存在する、ということで、だからこそ、1分1秒を、日々を、大切に生きていかなくてはなりません。

これからも自分のペースを崩すことなく、体調をしっかり管理しながら、様々な思い出や、経験と体験を大切にしつつ、将来のビジョンをしっかり見据えて毎日を生きていきたいものです。