ウォルト・ディズニーの現場力
1、要旨
ウォルト・ディズニーの仕事には哲学がある。その哲学を知り、自分の会社に利用できるものはないか考えることも有効である。大住力著「ディズニー現場力」(かんき出版)を以下に抜粋致しました。
2、ウォルト・ディズニーの仕事
2種類に分けて考えられている。それが「Duty(作業)」と「Mission(役割)」です。働く人の9割がアルバイトで占められているので、事細かに作業手順の書かれたマニュアルがある。「Duty(作業)」をマニュアルで細かく決められたものと定義した。働くだれもができてあたり前のものと捉え、作業を完璧にこなしたことで「自分は仕事をした」と思ってはいけないとなっている。仕事とは「Mission(役割)」です。そのミッションはすべてのゲストに幸せを提供すること。やってあたり前の作業の先に、幸せを届けるという役割が待っている。その想いを持って働いてこそ仕事をしたことになる。つまり「Duty(作業)」と「Mission(役割)」が両輪となっている。「Duty(作業)」なしに「Mission(役割)」の達成はなく、「Mission(役割)」がなければ「Duty(作業)」を完璧にこなすこともできません。
3、ディズニーランドのマニュアル
「腹をへこませた状態を保て」⇒これは姿勢をよくしなさいというマニュアルです。たんに「正しい姿勢で接客しなさい」と書くと人によって結果が変わってしまいます。しかし、「腹をへこませた状態を保て」であれば、誰でも同じ結果を得ることができる。このように伝え方を工夫することで、だれがやっても同じ結果をだすことができるマニュアルをつくっている。
清掃マニュアルには「テーブルを拭く時は、直前に拭いた部分といまから拭く部分を30%重複させて拭く」「天板を拭き終えたら、次にテーブルの縁部分を右回りに1回拭く」「最後に床のチェックをし、雑巾とホウキを使いゴミや汚れを取除く」とし、全員が同じ水準をクリアすることができ、清掃のレベルがグンと上がる。どうして、マニュアルどおりやらなければならないのかと聞かれた場合、「そのほうがきれいになる」など作業結果について語るのではなく、「お客様に気持ちよく食事を楽しんでいただくため」と応える。
4、「2・6・2」の法則の最後の「2」をあきらめない
組織論に「2・6・2」の法則がある。上位の2割に生産性が高く積極性のある優秀なグループがいて組織を引っ張り、中位の6割は平均的な集団となり、下位の2割に実績・生産性ともに低く積極的に動かない人材がぶら下がる。しかし、下位2割を削って組織をつくりなおすと、再びその中で2対6対2に人材が分布してしまう。
ディズニーランドでは「Mission(役割)」を40%、「Duty(作業)」を60%に配分し、全員が60%の仕事をこなせるようにマネジメントしている。だからぶらさがっている2割が目立たない。
5、ディズニーランドの人材教育
(1)「アニキ」制度
先輩とペアを組む精度で、「なんでも相談せえ」という自由闊達な雰囲気がある。キャスト同士のコミュニケーションの回数も多い職場。アニキ達はマニュアルどおりに作業が出来ていない時、ミッションに照らし合わせた行動が出来ていない時、パークの雰囲気を壊しそうになった時、改善すべき行動があった時、見逃さずに「ちょっといいか」とバックステージに呼ばれる。アニキ達は叱り飛ばす前に、なぜ呼び出されたのかを考えさせます。本人に何が問題なのか気付いてもらい、成長してもらうこと。
(2)クロスコミュニケーション
5~6人の小さなグループに分かれ、ポジティブな出来事、発見した驚き、職場の仲間に伝えたいことなどを話し合う。終礼が舞台で全員が報連相をする。
(3)表彰制度
キャスト全員が投票用紙に「すべてのゲストにハピネスを提供している」と思うナンバーワンのキャストの名前とその人の良いところを書いて投票する。嘘の無い表彰制度で、リーダーは正当な評価を下せるようになった。
6、ディズニーランドの4つの行動基準
(1)Safety(安心)
やすらぎを感じる空間をつくり出すために、安心をつくり出すことを最優
先する。
(2)Courtesy(礼儀正しさ)
すべてのゲストがVIPとの理念に基づき、差別せず相手の立場に立った、親しみやすく心を込めたおもてなしを「本気」でする。相手を待たせることなく準備を整えておくことも礼儀正しさです。
(3)Show(ショー)
つねにゲストから見られているということを意識し、あらゆる行動をショーの一部として身だしなみや立ち居振る舞い、施設の点検、清掃など、「毎日が初演」の気持ちを忘れずにゲストをお迎えする。
(4)Efficiency(効率)
いかに目の前のゲストに「ハピネス」を提供するかということを念頭においた現場の効率のこと。駐車場はラインがななめに引かれている。ゲストが車を止めやすいように。切り返しをせず駐車できるため、渋滞を減らすことができる。