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雨通り2

2023.04.18 06:33

・朗読用

・約3〜5分



本文


雨が降り続く通りがあった。

今日はその中の、ある待ち人のお話。

傘をさしながら、何かを待っている人がいた。

コートの裾を濡らして、腕時計をちらちらと気にしている。

その待ち人は、いつもこの場所で誰かを、あるいは何かを待っていたのだった。

思い切って、声を掛ける。

「どなたを待っているんですか?」

「ああ、いえ。猫をね」 

確かにその人は、路地の前に立って、傘をさしていたのだった。

「飼ってらっしゃるんですか?」

「いえいえ、野良なんですが、よく餌をあげていた物でして。近頃、見かけなくなってしまいましたがね」

その待ち人は、ふと、遠くに思いを馳せるようにして、目を細めた。

ふと、鳴き声が聞こえた気がして足元を見ると、そこにはいつの間にか、黒い猫が座っていた。

「おお。そういう事だったのか」

待ち人は、傘を路地の壁に立て掛ける。

そこに、黒猫と、仔猫が入った。

その後しばらく、待ち人は猫達に餌をやっていたが、10分ほどで、猫はどこかに行ってしまった。

雨は、上がっていた。