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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

インターネットを用いた医学論文の検索。無料でも芯は外さなくて済む時代になりました。

2018.05.28 14:34

こんばんは。夢のまち訪問看護リハビリステーション 都賀の理学療法士の倉形です。

今日は、最近インターネットで論文検索をしていて考えたことを書きます。

タイトルにすでにオチを書いてしまいましたが、『無料でも芯は外さなくて済む時代になりました。』と思います。

なぜそのように考えるように至ったかと言うと、・・・

 私は、昨年6月まで茨城県の病院で働いていました。その病院は、大学病院の系列でした。なので職員は、病院が契約している有料オンラインジャーナルの検索・閲覧が可能でした。毎日『論文を検索して、読む』ということをやっていたわけではありませんが、非常に恵まれた環境であったと思います。

 一方現在は、有料オンラインジャーナルへアクセスができる環境ではありません。 多くの病院、99.9%の病院以外の機関に所属するリハビリ職種の方も同様の状況であると思います。100%と書かなかったのは、私が全ての病院以外の機関の状況を知っているわけではないからです。しかし、恐らく、有料のオンラインジャーナルに登録している病院以外の機関っていうのはないのではないかと思っています。

 では、大学病院やその関連病院に勤めているリハ職種と比較して、それ以外の機関に勤めているリハ職種が知識で劣っているかというと、一概にそうとも言えません。なぜなら、大学病院に勤めているリハ職種のうち、かつての私や、私の同僚を含めて日常的に医学論文を読んで、それによって臨床における行動を変えていた人はあまりいなかったからです。

やはり英語の壁があることや、『英語を読むこと』と『英語論文を読むこと』は似て非なるものです。なので、日常的に読んでいる同僚は少なかったです。そもそも、論文を読む必要性もあまり認識されてなかったかもしれません。 ・・・・

話が逸れました。。。

現在は、ネットを使って、無料での検索のみを行うという状況です。主にpubmedとgoogle scholarを使って検索しています。たまにサーチエンジンのサーチボックスの中に論文のタイトルを放り込んで検索をかけてみたりしています。 そうすると結構無料で読める論文が多いことに驚きました。。。

特にハイレベルな雑誌ほど無料で読めるものが多いです(無料で会員登録的なことをさせる雑誌もある)。それらの雑誌が、論文を読むユーザーに課金する以外でどのように収益をあげているかはわかりませんが、広告収入や、投稿する著者からお金を集めているのかもしれません。

また、税金が投入された研究は、広く国民が利用できるように公表されるべきだという声が高まってきているとも聞きます。規模の大きい研究の多くは多額の研究費がかかるため、国の研究費が使われることが多いです。よってこれらも無料で読めたりします。

あと、お恥ずかしながら最近まで知らなかったのですが、コクランも発表後一定期間が過ぎれば無料でアクセスできます。 以上のように、質の高い情報源ほど無料で見れたりします。

医学論文の効率的な情報収集にとって非常に重要なのは『読まない論文を決めること』です。質の低い論文の結果に意思決定が影響されるのを防ぎたいからです。論文を調べる際に、常に『もしかしたら重要な論文を見落としているのではないか??』と不安に陥りますが、実はそこまで心配することはなかったりします。『たった一つの論文』が、『他の多くの論文』と全く異なった結論を下している場合、多くは『たった一つの論文』の方に重大な欠陥があったりします。まれに『たった一つの論文』によって大きく状況が変わるということはあり得ますが、その可能性はおそらく私たちが考えるほど高くないです。

科学的根拠に基づく標準治療における治療方針は、たくさんの個々の研究が刻む、ベイビーステップの繰り返しで練られて、普及していきます。 ですので、重要な論文のうちいくつかを見落としてしまっても、他の多くの似た結果となっている論文があるはずなので、結論にはその見落としは影響しなかったりします。まぁ、読んだ論文の中に引用されていてその他の重要論文の存在を知ることもありますし。。。

 システマティック・レビューのような二次資料を作るためには網羅的な論文検索は欠かせないです。しかしながら、臨床における意思決定で重要なのは『芯を外さないこと』です。 そのための、無料で使えてかつ全文を読むことができるのに必要な最低限の環境は整っている幸福な時代に私たちは住んでいます。 その恩恵を積極的に受け取って、患者さんや利用者さんに還元したいものです。

今日も、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました   

  理学療法士 倉形裕史