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とある冒険者の手記

V.手を出したら許さない

2023.03.27 10:09

ヴァルとガウラはオールド·シャーレアンに来ていた。

ガウラから聞いた第一世界での話を聞いて、ヴァルがグ·ラハに非礼を詫びたいと言い出したからだった。

目的地に着いた2人は別行動。

待ち合わせ場所はラストスタンドと決め、ガウラは溜まりに溜まったリーヴ券の納品をする。

納品が終わり、ラストスタンドへ向かうと、まだヴァルの姿はなかった。

その代わり、サンクレッドの姿を見つけ、声をかけた。


「サンクレッド」

「よう、ガウラ。久しぶりだな」

「相席しても?」

「もちろん」


サンクレッドの向かいに座り、コーヒーを頼む。


「休暇をとるって聞いたが、調子はどうだ?」

「ボチボチって感じかな。でも、まだまだ気力が湧かなくてね」

「今日はどうしてここに来たんだ?」

「パートナーの用事に着いてきたんだ。リーヴ券の納品もしたかったし」

「なるほどな」


コーヒーが運ばれて来て、ガウラはそれを一口。

サンクレッドは何やらニヤついていた。


「なんだい?ニヤついて」

「いやな、あんたがエタバンするとは思ってなかったからな」

「あー、そういう」

「アリゼーが発狂してたぞ?どんな奴なんだ!ってな」

「ははは…」


その光景が浮かぶようで、ガウラは苦笑いをした。

サンクレッドは頬杖を付いて、ニヤついたまま話を続ける。


「かくいう俺も、あんたがパートナーに選んだ相手に興味がある」

「そんなに興味を持つ様な出来事かい?」

「恋愛なんて興味無いって感じだったあんたが、突然エタバンしたんだ。そりゃ興味も湧くさ」


サンクレッドの言葉に肩をすくめるガウラ。


「それで、どんな奴なんだ?」

「私の知らないところで、ずっと私を護ってくれてた」

「ほう、それを知って惚れたのか?」

「そうでは無いけど…よく分からないんだ」

「よく分からない?」


首を傾げるサンクレッドに、困った様な表情で話す。


「一緒にいて楽しいし、頼もしいし、これからも一緒に居たいとは思うけど、恋愛感情ってのがイマイチよく分からないんだ」

「なるほど。まぁ、悩むのも無理はないさ。恋愛感情なんて人それぞれだしな。一概に“これが正解“ってのはないしな」


サンクレッドは、うーんと難しい顔をしたが、直ぐにイタズラっぼい表情を浮かべ、身を乗り出して言った。


「恋愛感情が分からないなら、俺に乗り換えないか?俺なら恋愛の何たるかを手取り足取り教えてやれるが?」


それを聞いたガウラは呆れた表情を浮かべながらコーヒーを口に運ぶ。


「サンクレッド、冗談でもそういうことは言わない方がいいぞ?」


ガウラがそう言った瞬間、サンクレッドの目の前を、何かが横切り、テーブルの横にあった柱に刺さった。

それは短刀だった。

唖然とするサンクレッドに、ガウラは何食わぬ顔で言う。


「うちのパートナーは過保護でね。私に手を出したら、何をするか分からないんだ」


それを聞いたサンクレッドは「これは相当愛されてるな」と笑い出したのだった。