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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

神の貧者達8-小鳥の説教から環境回勅へ

2018.05.30 03:30

フランチェスコの名声はどんどん高まっていったがセレブになるのは彼の意図と全くの反対。自分の首に縄をかけて晒し物にしたこともある。とうとう人前に出るとセレブになるので隠遁しようと思ったこともあり、クララや信頼する仲間にきいてみた、当然皆ダメと言った。

だからということではないが、遂に有名な「小鳥の説教」をしたのは1113年頃のようだ。彼が旅先で木を見ると小鳥達が集まっていた。そこで仲間を待たせて小鳥に話し始めた「お前たち小鳥は神に愛されているのだから、いつも神を賛美して歌いなさい」

フランチェスコの思いは人のみならず宇宙を満たす神の愛である。これはその後ボナヴェントゥーラなどが思想化し、ルネサンスはそれを実証しようとする。もちろんフランチェスコはイエスキリストの「小鳥の例え」を踏まえている。イエスの言葉は、神の愛が人間だけに留めるものではないことを示している。

中世は宇宙が神の力で動くと考える時代だった。その後近代では、外界は人間と分離され、人間は主体となる。しかし現代、人間の行為は外界から人間自身に返ってくることが認識された。フランチェスコの思想は再生され、教皇フランシスコの「環境回勅」は、フランチェスコの祈りで始まる「私の主よ、讃えられますように、私達の姉妹である母なる大地のために」。

どんどん広がるフランチェスコの関心はイスラムに向かう。1212年、ローマから船に乗ったが、嵐にあい別の所に到着した。翌年にはレコンキスタのスペインに行こうとしたが、病気で断念。しかしその望みは叶うことになる。

下はリスト作曲「小鳥に説教するアシジの聖フランチェスコ」