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超人ザオタル(104)幸せの前提条件

2023.04.21 00:47

「…、まだよく理解できないことはあるのですが、

ザオタルさまが言わんとするところは分かる気がします。

ただ、もし私の愛する人が伴侶となってくれたときには、

私は歓びに満ち溢れて、幸せを感じてしまうでしょう。


それはいけないことなのでしょうか。

そうなっても喜ぶべきではないのでしょうか。

そもそも、そういった幸せを望んではならないのでしょうか。

私にはそてもそういうことができそうにない気がします」


シュマはそう言って、不安そうな顔をした。

「真の自分は自分だけが幸せであると言うことはありません。

それ以外の幸せを否定することはないのです。

シュマ殿の話の幸せとは、世界の出来事であり、


それはそれで起こっても何の問題もない。

もちろん、それでシュマ殿が幸せを感じても構いません。

それが罪なるとか不徳であるということもありません。

それが世界の本質であり、真の自分はそれを拒絶する訳がない。


何が大事かというと、

自分とは真の自分であると知っていることなのです。

それを理解していることが大前提として必要になります。

つまり、すでに完全な幸せの状態にあるということです。


完全な幸せの状態にあるのなら、

たとえ世界で儚い束の間の幸せに喜んで何が問題なのでしょう。

もちろん、その世界の幸せは色褪せて消えていくかもしれない。

しかし、決して消えない完全な幸せは既に手にしているのです。


真の自分は世界から独立しているため、変化から何の影響も受けません。

だから、シュマ殿が真の自分を知っているなら、美味しい食事に満たされ、

人から愛されることを歓び、夢を見ながら安らいでも

何の問題もなく、それに罪悪感を覚えることも、


それらを拒絶する必要もないのです」

「なるほど、そういうことなのですね。

世界の幸せの前に、真の自分という幸せを実現する。

そうすれば、世界の幸せが儚くても受け入れられる。


なんとなく分かったような気がします。

やはり、真の自分を知らなくてはなりませんね。

それを知らずに幸せを語ることはできない気がします」

シュマはそう言って、小さく何度もうなずいた。


太陽に温められた風が優しく吹き抜けていった。

私たちは沈黙した。

景色に目をやると、森や野原の緑が色鮮やかに輝いていた。

私はそこに幸せを感じた。


シュマもその景色に目を細めている。

この瞬間、世界から幸せを受け取っている。

それはすぐに移り変わる僅かな時間のことかもしれない。

真の自分はそれを邪魔することなく、

私の中でいつもの変わらない鮮烈さで存在していた。