Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

紺碧の採掘師2

第17章 02

2023.04.26 12:00

午後4時過ぎ。

レッド、ブルー、シトリンの3隻は、山の中腹の草原に何本か生えている太い源泉石柱を囲むように着陸している。3隻のメンバー達は、その中の一本の石柱を取り囲んで頭を悩ませている。

陸、溜息をついて「もう夕方になるし、早くしないと…。」

サイタン「だから時間ねぇから砕いちまえって!」

満は手に持った源泉石選考採掘の要綱の冊子をパンと叩き「だが柱は柱のまま採らねば評価が落ちると要綱に書いてある!」

サイタン「質より量だろ採らなきゃ時間が無くなる、こっちは3隻もいるんだ、物量作戦よ!」

ウィンザー「一理はあるけど…。」

満「だが、もう何本破壊したと思っている!原型のまま採れたのは1本だけではないか!」

陸「逆にあの1本はなぜ原型を留めたのか謎…。」

サイタン「あれは切ったら切れたんだよ!他の柱がヤワなんだよ!」

アッシュ「流石は野生児、獣の勘…。」

サイタン、アッシュに凄んで「ぁんだって?」

陸、また溜息をついて「…難しいねぇ源泉石…。」

隣に立つターナーもボソッと「イェソド鉱石の方が楽…。」

ウィンザー「…黒船とアンバー、どんな感じなのかな…。」

アッシュ「とりあえず3隻で頑張っても、あの2隻に勝てない気はする。」

満「…。」

一同が若干ションボリし始めたその時。クォーツが手を挙げて「あの…。何か妙なものを探知しました、多分恐らく有翼種かと。」

サイタン、怪訝そうに「はぁん?」

ジュニパーも「そうね、この感じは有翼種ね。何人か来るみたい。」

陸「何しに来るんだろう?もしかして、この石柱を狙って…」

ジュニパー「それは無いわよ採掘権こっちにあるし。…あら?」と何かに気づいて「あらあら。一人、飛び出てきたわ。あっちから、もうすぐ来るわよ。」と腕を上げてその方向を指差す。

パール「じゃあ少しそっち側の雲海を払っちゃうね。」と言いバッと風を起こして雲海を払う。

遠方の空に、徐々に大きくなる人影が浮かぶ。そのかなり背後には、点が光っているのが見える。

人影は3隻の一同に近づきつつ「やぁ!はじめましてー!」と叫び、一同の斜め上に来て浮かんだまま止まると「ちょっと見に来ました。…俺はターメリック・エン・セバスって言います。通称ターさん、カルセドニーのメンバーが住んでる家の家主です!」と言ってニッコリ笑う。

一同「!」

ふと、陸が「もしかしてターさんって、貴方か!」

満も「あぁ…誰かが何やらそんな名前を言っていたな。貴方か。」

ターさん「もうすぐ俺の乗ってる船が来るけど、あれ審査船で、皆がどんな風に採ってるか見回ってるんだ。」

陸「え!」

サイタン「なんだと…。」

満「つまり貴方は審査員なのか!」

ターさん「でも正直に言うと、人工種の船は全然気にしてないんだ、だって上位争いしてないし!」

陸「それはまぁ…。」

ターさん「等級8を取り合うような上位の船が違反してないか見回るのが仕事。今はたまたま通りかかったら人工種の船が3隻も一緒に居たから寄ってみただけ。」と言い、背後の上空に来た船を指差し「あれは今は審査船だけど、本来はブルートパーズっていう名前の採掘船。」

その途端、満やアッシュ達が「おぉ!」

アッシュ「お仲間ですな!」

ターさん、満を指差し「知ってるぞ、そっちはブルーアゲートなんだろう!だからブルーって略すなと護君に言われた!」

満「…ウチの護が…。」

そこへ背後の船から2人の有翼種が飛んで降りて来る。

ドゥリー「やっほーう!人工種の皆、頑張ってるー?」

ターさん「こっちはドゥリーさん、こっちがトゥインタさん。」と紹介する。

名前を聞いて、思わず綱紀が(…ドゥリーさんって、カルロスさんが言ってた、同調の師匠…!)と内心驚く。

ターさん「ところで皆さん、源泉石採掘はどんな感じ?結構採れてる?」

一同「…。」

陸「まぁ、少しずつ…。」

トゥインタ「何かお困り事でもあれば。」

満「…困り事は、それなりにある…。」

アッシュ「野生の勘が無いと全然採れません…。」

サイタン、目の前の源泉石柱を手でパンと叩いて「この柱がヤワで困る!どうやったら崩れねぇで採れるんだよ!」

途端にターさん、トゥインタ、ドゥリーの3人が笑い出す。

サイタン、真っ赤になって「おい!」

ターさん「あ、ごめん!決してバカにしてるんじゃないんだ!」

サイタン「こっちは真剣なんだよ!」

ターさん「すまない。…俺、護君がイェソドに来た時から見てるから、君達が困ってるの分かるよ。」

ドゥリー、ターさんを指差し「この人、護君の命の恩人!…倒れてた護君を自分の家に運んで助けた人!」

一同「!」ビックリ仰天

トゥインタ「一番最初に人工種をイェソドに連れて来た人でもある。」

それを聞いた満はバッとターさんの前に駆け寄り直立不動の姿勢を取ると、ターさんに深々と頭を下げつつ「我が弟を助けて頂き誠に感謝の極み…!大変ご迷惑をお掛けした!申し訳ない!」

ターさん、ちょっとビックリして目をパチパチさせる「…。」

続いて歩も満の背後に立って「弟を助けて頂きありがとうございます。」とお辞儀をする。

ターさん「…噂通りの…、貴方が満さん?」

満「は!私が長男の満、こちらが三男の歩です。」

トゥインタ、ドゥリーにボソッと「…護って何番目だ?」

ドゥリー「護は末子だよ。」

ターさん「いや護君が四男だよ。透君が末子。」

トゥインタ「…長男がこの人で、ハチマキの穣が次男か…。」

満「…穣が何か失礼でもしましたか?」

ターさん「いや別に!」と言うと「…まぁ、黒船とアンバーはここ数日の結果を見るとそこそこ採れるの分かるから気にしないけど、貴方達にはちょっとアドバイスしないとね…。」

アッシュ「下手すぎるから?」

ターさん「黒船とアンバーは雲海のエネルギーに慣れてるから力の加減をし易いけど、貴方達は身体が雲海慣れしてないから自分の力を出しにくいんだ。」

満「しかし、ひとつ伺いたい。」と言ってサイタンを指差すと「…あの方だけ、普通に源泉石に対して力を出せるのは何故?」

ターさん「…さぁ?」

トゥインタ「でも柱を崩壊させてるならそれは違うよ?石壁なら等級によっては適当に叩いて崩せるのもあるけど、柱は崩しちゃダメ。」

ドゥリー「多分、適当にやってたら偶然出来ただけだと思うー!」

そこへ陸が「あの、もし良ければさっき採った源泉石を見て頂けますか?」と自分の背後に置いてあるコンテナを持ち上げようとする。

ターさん「いや、それ多分ここに生えてる源泉石柱を崩した奴だろ?…って事は、少なくとも等級5以下。柱のまま採れれば6」

陸「そ、そうですか…。」

ターさん「せっかくの柱を崩して等級落とすの勿体無いから、怪力みたいに源泉石に対して影響を及ぼすスキルを持ってる人が、自分の力を上手く使う為の練習方法を教えるよ。…イェソド鉱石を使うんだ。なるだけ質の良いイェソド鉱石で源泉石を叩いて、鉱石を、割ってみる。鉱石が割れたらそれが、その源泉石のエネルギーの性質だから、鉱石が割れた時と同じ力の加減、感覚で、斧などでその源泉石を叩くと綺麗に割れる。」

陸、ちょっと首を傾げて「…はぁ。」

サイタン「…。」

ターさん「鉱石で、源泉石を叩くのがポイントだよ。逆はダメ。」

ドゥリー「最初はなかなか感覚が掴めないと思う!とにかく何回も練習するんだー!」

トゥインタ「とにかく強く叩いたり弱く叩いたりして、叩いた時に、鉱石を持つ手にどんな感じがするか、どんなエネルギー感覚があるか、注意深く感じてみるんだ。」

陸「はい…。」

ターさん「これ特別大サービスだよ!他船にこんなアドバイスしないから!カルセドニーにも教えてない!」

ドゥリー「頑張って練習して感覚を磨くんだー!」

トゥインタ「なかなか採れないと面白くないけど、キレイに採れるようになってくると、楽しいぞ!」

ターさん「では俺達は、これで失礼しまーす!」

ドゥリー「じゃあねー!」

トゥインタ「頑張れよー!」

3人はバッと飛び上がると上空の船に向かう。

その様子を見た綱紀は思わず何か言いたげに口を開くが、声が出ずに諦める。

満「ご指導、感謝致します!」と叫ぶ

陸も「ありがとうございまーす!」

採掘船ブルートパーズは3人を乗せると再び上昇し、前進を始めて雲海の霧の中に消えて行く。

綱紀(…声を掛けられ…なかった…。)

辺りが薄暗くなってくる。

サイタン「…日が暮れるし、この柱は明日で、今日はメシ食ってさっき言われた練習だ!」

陸「ですね。じゃあ皆、道具片付けて船内に入ろう!」

アッシュ、手を挙げて「あのー、提案でーす!…皆でさっき言われたやつの練習会しませんか!」

満「おお!今それを言おうと思っていた。食後に皆でどこかの船に集って練習会をしたい。」

陸「じゃあ、やりますかー。」

ウィンザー「賛成です!」

サイタン「…どこでやるんだよ。オメェら手ぇ出せ、じゃんけんだ!」と叫んで右手を上に上げる。

陸も右手を上に上げて「じゃあ…このまま、じゃんけん、ぽい。」

サイタンがグー、陸と満がパー

サイタン「レッドに決まりだ!メシ食って8時になったら集まれ!」

一同「はーい!」

3隻のメンバー達は、雑談しながら片付けをして、ゾロゾロと各船に戻り始める。

綱紀もシトリンに戻りつつ、真剣な顔で(…ドゥリーさんに、声を掛けられなかった…。)と落胆の溜息をつくと(『カルロスさんをご存知ですか?』って言えば、そこから話が出来たかもしれないのに。いつかまた会えるかな…。同調探知についてアドバイス聞きたい。)

綱紀は皆から少し遅れてシトリンのタラップを上がりつつ(源泉石採掘、皆よく分かってないから結構失敗してる…。だったら、俺もダメ元で…いや、でもな、でもな…。)

タラップを上がり切った所で密かに溜息をつくと(…やってみたい…。)



夜8時。

静まり返ったブルーの船内通路を、武藤が歩いている。とある船室の前で立ち止まるとノックしてドアを開け、中を見て驚いたように「誰も居ない…。」と呟くと「ゲーム部屋が無人とは」と言いつつドアを閉める。

武藤(みーんなレッドの練習会に行っちまったんか。何やら知らんが張り切って…。俺、どうするかなー。)と考えて(ヒマだから駿河のブログでも眺めながら…ってここはネットが繋がらん所だった。)と壁に手をついてクッタリすると(…もう寝るわい…。)


レッドの採掘準備室には3隻の採掘メンバーが集って結構な賑わいを見せている。

準備室の真ん中には源泉石が入った箱と、イェソド鉱石が盛られた箱、そして空の箱が置いてあり、その周囲では皆が船ごとのグループに分かれて床に座ったり椅子代わりのコンテナに腰掛けたりしつつコンコンガンガンと鉱石で源泉石を叩いている。

一同から少し離れた階段室の所では、春日がトールと楓と一緒に皆の様子を見学中。そこへ階段の上から相原と岩代が降りて来る。

相原、楓とトールに気づいて「楓船長?! わざわざ見学に来たんですか。」

楓「ええ。何するのか興味があって。」

トール「僕は久々にレッドの中に入ろうかなぁと。」

相原、頷いて「なーる。」

岩代は、鉱石で源泉石を叩きまくっている一同を見て「何だこの鉱石祭り。これが練習?」

春日「らしいよ。人間にとっては恐い練習だよなぁ。イェソド鉱石こんなに出しちゃって…。」

トール「駿河さんが着けてた中和石ってのが欲しい…。」

春日「同感。」


シトリンのメンバーが集っている所では、鉱石で源泉石を叩きつつターナーが溜息ついて「なーんか分かるような、分からんような…。」と言って隣の聖司を見た途端、聖司の持つ鉱石が割れてターナーが目を丸くする。

聖司「割れた!何となく分かって来た!」

ターナー「えー…。コツか何かあるの?」

聖司「コツ?」と怪訝そうな顔をすると「割る事が目的じゃないからコツとか関係無い気が。」

ターナー、困り顔で「ガンガン叩いても、なかなか割れないんだよ。」

聖司「だから割る事が…」と言って「逆に優しく当ててみるとか?」

ターナー「へ?」と驚いた顔をして「当てる?」

そこへ要が「馬鹿力で割れるなら練習の意味ないだろ。石のエネルギーを確かめるんだよ。」

途端に聖司が「それです!」と要を指差し「確かめる。確かめるんですよ!」と嬉しそうにターナーに言う。

ターナー「確かめる…。」と言ってコンコンと鉱石で源泉石を叩いて「確かめる、ねぇ…。」


ブルーメンバー達は一心不乱に真剣な表情で鉱石で源泉石を叩いている。

なぜか探知の礼一や、操縦士の明日香、機関士の玲於奈までが参加して石叩きをしている。

礼一は鉱石で源泉石を叩いて「これ強く叩いたからって強く光る訳でもないんだなー。」

玲於奈「でもエネルギーが上がるのわかるよ、光るし!」

礼一「機関士の癖に!」

玲於奈「だって光るんだもんエネルギー上がってるって見りゃ分かるじゃん!」

礼一「もしこれで俺の持ってる鉱石が割れたらどうしよう。」

玲於奈「探知の癖に!アンタのが割れたらバグじゃん!」

礼一「だなー」

玲於奈「礼一がバグってるって事だよ。」

礼一「なんでだ!」

明日香は採掘メンバー達の方を見て「本職の皆、なかなか鉱石割れないねー。」

進一「…。」真剣

アッシュ「…。」真剣

明日香「…ゲーム以外でこんな真剣なってるの、ブルー史上初では!」


レッドメンバーが集っている所では、どよめきが起こる。

サイタン、割れた鉱石を皆に見せつつ「…また割れたぞ。」

ウィンザー「何でそんな簡単に割っちゃうんですか!」

輪太、割れた鉱石を見て「しかも断面がキレイ…。」

カイトが頭を抱えて「なぜに!一体どーうやって!」

サイタン、めんどくさそうに「こんなの簡単だろーが!」

一同、大声で「ええー!」サイタンに大ブーイング

ウィンザー「監督は野生児なんですよ!」

クラリセージ「絶対どっか壊れてる。」

サイタン凄んで「ぁんだと?」

ウィンザー、サイタンの前に身を乗り出して「教えて下さいよ、どうやってんですか!」

カイトも「コツの伝授を!」

クラリセージ「教えてくれないなら、俺達もう作業しない!」

バーントシェンナも「うん、サボる!」

ウィンザー「以前、監督がサボってた時に俺達頑張ってたんで!」

シェルリン&バーントシェンナ「そうだそうだー!」

サイタンちょっと困って「…あー…。」

シェルリン「監督お仕事頑張ってね!」

カイト「頑張ってー。」

サイタン「待てって…。…しゃーねぇな…。」と言うと頭を掻いて「教えろったって、俺もよくわかんねーし!」


そんな皆の様子を階段室の出口から見ていた春日、「楽しそうだなぁ。」と呟く

岩代「イキイキしてるね、皆。」

そこへ、階段の上の方から誰かがゆっくり降りて来る足音がする。

岩代、振り向いて階段の上を見ると「あ、船長。」

南部、階段の途中で立ち止まって岩代を見ると「…そこで、何をしてるんだ。」

岩代「見学です。船長はなぜここへ?」

南部「なんか、合同練習をするとか聞いたので…。」と言いつつ階段を降りて来る。出口を塞ぐように立っていた相原と岩代は少し避けて南部の通り道を作る。南部はそこから採掘準備室の中を見て「…なんだこれは。」と目を丸くする。「こんなに鉱石を出して…」

そこへブルーメンバー達の所から「よっしゃあ!これで監督以外の全員クリアぁぁ!」というアッシュの叫び声とメンバー達の拍手。

礼一、拍手しつつ「おめっとー!」

玲於奈&明日香「おめー!」

満は若干ヤケクソ気味に「待たれい!祝辞を述べるのはまだ早い!この私とした事がぁぁ!」

進一「大丈夫です監督、監督が採らなくても俺達が採りますから!」

アッシュ「採るのは我々にお任せを!監督は見守っていて下さい!」

満「お、お前達…。」と言うと「…せめて筋力なら…。わが筋肉の出番がぁぁ!」

そんなブルーの様子を唖然として見ていた南部は隣の岩代に「これは、どういう…。」

岩代「…鉱石で、源泉石を叩いて、鉱石を割るっていう…。」

南部「すると、どうなる?」

岩代「…実はよくわかりません。」

そこへ相原が「なんか人工種独特の感覚で、何かを感じるらしいですよ。それが感じられたらOKみたいな。」

南部「はぁ。」と言ってふと、楓に気づいて「おや、楓船長。」

楓「どうも。見学に来ました。」と言うと「皆が凄く真剣で、ビックリしてます。」

トール「あんなに元気なサイタンさん、初めて見ました。」

南部「あ、トール君じゃないか。久しぶりだな。」

トール「…なーんか、レッドの皆が随分変わっちゃって…。前とは大違い。」

南部「…。」暫し黙ってから小さな声で「…誰かが監禁されたりしたからかな…。」

思わずトールや相原たちがちょっと笑ってしまう。


サイタンは頭を悩ませながら必死にウィンザー達に説明をしようとしている。

鉱石を源泉石に当てつつ「で、こうやって、当ててみるとなんか微妙にアレな感じがするから、何となくこんな感じかなって感じで、フッて感じに微妙に叩くと…。」

クラリセージ「先生、意味不明です。」

サイタン「んー!…だって俺、何も考えてねぇんだよ!…説明って、うーん…。」と腕組みして非常に悩んで「なんつーの、弱く叩いても強くしたり…強く叩いても弱い感じでやったり?」と言って「難しい!」と頭を抱える。

皆が練習に集中している間に輪太は練習で使って細かく割れた鉱石の欠片をチリトリに集めて、中央の箱に持って行き、その中に入れる。そして隣の鉱石の箱からいくつか新たに鉱石を持ってくる。

サイタンは床に大の字にゴロンと寝っ転がると「わかった!俺が石壁崩したり柱を切ったりするからお前らは運べ!」

ウィンザー「まぁ俺達も頑張りますよ。」

サイタン、珍しく気弱に「…俺、説明苦手なんだよ…!」

ウィンザー、そんなサイタンを見て「…苦手っつーか、自分独特の感覚は説明し辛いですよ。」

サイタン「すまねーな、上手く教えられなくて。」

クラリセージ「いいんすよ。気持ちは伝わってる。」


シトリンの所では、陸が鉱石を手に持って溜息をついて「俺と要って一応、双子の人工種なんだよなぁ。」

要「うん。男と女だけど一応双子。」

ジュニパー「…紫剣先生って本当に独特な人工種をお作りになるわよねぇ…。」

ターナー「いや周防先生もだと思うよ?」

ジュニパー「まぁアタシとかね!」

陸「…要に出来るなら俺に出来てもいいような…。何で要の鉱石はすぐ割れるんだ、要は爆破スキルだからかなぁ。」

要「関係無いよ。別に爆破しようって思ってないし。ただ鉱石が割れた時の感じが分かるだけ。」

陸「俺は分かる時と分からない時がある。」

ターナー「同じく。」

要「練習しな練習!」

陸「はいはい。」

ターナー「はいはい。」

ジュニパー「…ねぇ、いつも思うんだけど、要ちゃんは女なのに男でしょ、どうして陸監督は」

陸「俺は男だけど男でいいです。」

ジュニパー「陸監督も、女になりましょうよ。」

陸「俺は男だけど男でいいです。」

そこへ、それまで何やら神妙な顔で皆の練習を見ていた綱紀がジュニパーに近づくと「ジュニパーさん、実は提案があるんですが。」

ジュニパー「なぁに?」

綱紀「俺、同調探知がやってみたいんです。ジュニパーさんと…。」

ジュニパー、その言葉にちょっと唖然としてから「…ま、マジで?」

綱紀「はい。ジュニパーさんと練習して、もしも出来たら、他船の探知も入れてやってみたいなって。」

ジュニパー「でもカルちゃんに」

綱紀「同調禁止って言われましたけど、でも前より自分で探知出来るようになって来たし、この機会にやってみたいんです!」

その熱意の籠った言葉にシトリンメンバーの全員が、思わず練習の手を止めて唖然とした顔で綱紀を見る。

聖司、呆然とした顔で「こ…綱紀…。」

ジュニパー、綱紀を抱き締める。「…綱紀ちゃん!」

綱紀、ちと引き攣り笑顔になって固まる。「あ、あの。」

ジュニパー「やってみましょ!頑張るわよぉぉ綱紀ちゃああん!」

綱紀、若干ビビリながら「は、はい…!」

コーラル思わず「…人ってホント変わる…。」

陸は頷き「だな…」と呟くと、鉱石を持ち直して「俺も、頑張らないと…。」