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紺碧の採掘師2

第18章 02

2023.05.02 12:00

翌朝、6時半。

レッドコーラルの採掘準備室にメンバー一同が並んでいる。

南部は一同の前に立つと、「皆さん、おはようございます。」

一同「おはようございます!」

南部「…今まで6時半に朝礼した事あったかなと考えてしまったんですが、皆さん眠くないですか?」

サイタン「んな訳ねぇだろ!」

ウィンザー「船長が眠いんじゃないですか?」

南部「いや眠くはないが。では後は採掘監督、どうぞ。」

サイタン「今日は最終日だ、ガチで稼ぐぞ!」

一同「おおー!」と拳を上げて気勢を上げる。

南部、思わず目を丸くして「稼ぐ…?」

フェンネル「だって昨日、あんなにお金余ったし!色々買ったのに、それでも残っちゃうんですよ!」

南部「ああ…。」

フェンネル「源泉石って一週間しか採れないから貴重なんです、だから、稼げちゃうんですぅ!」

ウィンザー「でもそれなりの感覚とスキルが無いと良い物が採れない、しかしウチにはこの野生児が」

サイタン「ぁんだと?」凄む

クラリセージ「監督の野生の勘が宝なんです!」

サイタン「うるせーとにかく頑張るぜー!」

そこへ突然、クォーツが手を挙げて「船長!良い事を思い付いてしまいました!今日は3隻が交代で探知するんじゃなくて、どこかの船に探知を全員集めたい、です!」

ウィンザー「何で?」

クォーツ「…説明するのは難しいんですが…。」

サイタン「探知出来るなら何でもいいぜ。」

南部「じゃあ、うちの船に集めようか。」

クォーツ「…ちなみに、ブリッジが物凄くうるさくなりますが、いいですか?」

南部「…い、いいよ。」


15分後。

レッドのブリッジ前の通路にはクォーツ、礼一、ジュニパー、綱紀がいる。

礼一、パンと右拳で左の手のひらを叩いて「なーる!綱紀君の同調探知を使うのかぁ!」

クォーツ「うん。各自が探知したものを綱紀さんに見てもらって、どれが一番良さそうか選んでもらう!」

綱紀「…出来るかな…」

ジュニパー「とにかくやってみましょ。まずはアタシ達が探知ね。」

礼一「俺は今朝もう探知しといた!2時側!」と右手で2時方向を指差す。

クォーツ「俺は昨夜探知しときました、1時側。」

礼一「なぬ!…ってか1時と2時だと…?」

ジュニパー「アナタ達、張り切り過ぎよ!えーっと、2時側かしらね。」

礼一「勝った!」

クォーツ「とりあえず綱紀さん、同調…いやまてよ。」

ジュニパー「出航時は大雑把探知だから、出てから詳細探知の時の方が、良くない?」

クォーツ「ですね。じゃあ」

礼一「ここは1時半で手を打とう!」

クォーツ「…むぅ。」と唸るとブリッジの中に向かって「とりあえず1時半に向けて出航です!」

南部&ティーツリー「了解。」

3隻の採掘船は上昇すると、レッドを先頭に駐機場から出て行く。



7時半。

駐機場の黒船の採掘準備室では数人のメンバー達が道具の手入れや確認等をしている。

ホワイトボードがある壁際では、上総とマリアが折り畳み椅子に腰かけ、お互いタブレットとペンを持ちつつ探知中。

マリア、タブレットに図を描いて「ここから3時方向に探知して一番大きなエネルギーのある感じのとこは、ここ!」

上総「だから多分それ俺が探知したのと同じとこだってば。だって、そこまでのルートが似てるし。」

マリア「上総君の図だと、川が無いんですけど。」

上総、タブレットに描いた図を示しつつ「これ川!」

マリア「それ川だったの。じゃあ同じルートだね。」

上総「とにかく、ここが8かどうかワカランー!」

マリア「私、6と7の差は分かるようになったけど、7と8は」

上総「俺も6と7は分かるけど78はワカラン。」

マリア「そこ、7かなぁ8かなぁ。」

そこへ階段室からジェッソ達が出て来て「皆、そろそろ朝礼するぞー」

一同は並び始める。

上総、目を閉じて懸命に探知しつつ「7かな8かな…。」

マリアも目を閉じて必死に探知しながら「何かこう、違いが分かる何かがあればー!」

2人が真剣探知していると「そこの探知の人達、朝礼するからこっちへ」と総司の声。

上総「あ。」と目を開ける。

マリアも「はい!」と目を開けて立ち上がる。

上総「とりあえず行ってみるしかない!…ここからの探知で一番可能性が高いとこはそこしかないし!」と言って立ち上がり、メンバー達が並んでいる朝礼の列の所に行く。

マリア「そうね…。あとは飛んで移動してからだね。」と言いつつ上総の隣に並ぶ。

総司は一同の前に立ち、「皆さん、おはようございます。今日は最終日、何とか等級8の柱を採りたいという事で、アンバーと協力して等級8採り大作戦をする事になりました。」と言うと「8を採って、出来れば何とか合格したい。もし出来たらアンバーも合格出来ればと思う。」とマリアを見る。

マリア「まずは、とにかく8の探知です。上総君と頑張ったけど…。」

上総「俺達、6と7は区別出来るけど78は分かりません、だから行った所が7だったらゴメンナサイ!」

マリア、タブレットを総司の方に見せつつ「さっき3時方向のとこ探知したんだけど、まずここが8の可能性がある所!」

上総「7かもしれんけど」

マリア、上総に「8って信じてたら8かもでしょ!」

上総、溜息ついて「カルロスさん並の探知になりたいなぁ…。」

総司「じゃあまずそこへ行こう。…では皆さん、今日も宜しく!」



その頃、カルセドニーは死然雲海の中を全速力で飛んでいた。

駿河は必死に操船しつつ「雲海の中ではスピード違反が無いっちゃ無いけどもうこれMAX、これ以上は速度出ないー!」

カルロス、探知を掛けつつ「くっ…。まずいなー…有翼種の船の方が速い。しかしギリギリまで粘るか、可能性に賭けて!」

駿河「さっき、それで負けたやん…。」

カルロス「等級6は小型船に大人気だからな!皆、狙って来る!」

護「でも俺は嬉しいな、皆に認められた気がして。やっと他の採掘師と同じ土俵に立てた。」

駿河「だってそりゃー、新人が等級7を採って来たって、石屋の皆さんが目を丸くしてたし!小型船で7採って来る奴はまず居ないって!」

護「一本だけ採れた!…時間かかったけど。」

駿河「俺が昼寝できたからいいのだ。」

護「ブリッジ戻ったら船長が寝ててビックリした。」

駿河「スマンね。とにかくお蔭でカルセドニーはヤバイ船って事に…って俺が寝ててヤバイ訳ではなく」

護、笑う。

カルロス「笑ってる場合じゃない!ダメだー!向こうの船が採掘権採ってしまうー!止まれ、別の場所にする。畜生!」

駿河「了解。」

カルロスはA4サイズの持ち運び用ホワイトボードを手に取り、描いた図を駿河に見せつつ「今ここの谷のこの辺りで、谷を出て2時側にまず向かってくれ。」

駿河「はい。」

カルロス「それでだな。」と言いつつペンのキャップに付いているマーカー消しで図を消すと、再び何かを描いて駿河に見せて「これだ。」

駿河「…。」

カルロス「…。」

護「…。」

駿河「何でこの人、時々妖精の絵を描くのか不思議すぎる。」

護「しかも適当っぷりが凄い。」

カルロス、妖精の絵を消して「で、2時に行ったら…。」と真面目に説明の図を描き始める。



レッド、ブルー、シトリンの3隻も雲海に入り、先頭を飛ぶレッドのブリッジ前の通路では、綱紀がクラクラしながら同調探知を頑張っていた。

クォーツ「俺が探知した所が見えるか綱紀さん!」

綱紀「見えるっつーか、なんつーか…。」

礼一「気合で見るんじゃ俺の探知したモンをー!」

綱紀は通路の壁にもたれ掛かりつつ必死に「洗濯機の中状態だが、何かわかるぞ…。ボヤッとした感じで…。」

ジュニパー、ハッとして「そうよ、今はハッキリ見る事ないのよ、どのイメージが一番力強い感じがするか、エネルギーがある感じがするかってだけでいいのよ!」

礼一「なーる!」

綱紀「ってか、それしか出来ない…んー…。グルグルしてワカラン…なんかこう、番号か何か欲しい…。」

礼一「へ?」

クォーツ「ならば赤青黄だ!皆、探知イメージに色を付けよう!」

礼一「へいへい」

ジュニパー「そういう事ね。」

綱紀「待って、黄色が付くと光ってる感じに見え…いや待てよ。それでも青のが強い感じが…。あれ。これ、青だ…。」

礼一「お?」

クォーツ「綱紀さんが、そこを探知すれば、皆が青の所を共有できる!」

礼一「うん、メシ食ってる妖精を探知したのと同じようにするんだ!」

綱紀「俺が青の所を探知…。どこなんだこれ…。」

ジュニパー「待って違うわ、綱紀ちゃんは探知じゃなく単に青のイメージに意識を集中すればいいだけよ!」

綱紀「なるほ…。」

クォーツ「あ、見えた!」

ジュニパー「見えたわ!確かにこれはアタシが探知したとこよりエネルギー高いわね!」

礼一「おおー!」

クォーツ「よし、これにしよう!綱紀さん、もう同調やめていいよ。」

綱紀「はぁ…。」と言って大きな溜息をつきつつ床にへたり込むと「いちいちこんな疲れてたら…。」

ジュニパー「大丈夫よ!ハラ減ったらメシを食えばいいんだし!」

綱紀「って俺は機械じゃないんすけど…。」

クォーツ「で…」と言ってハッとして「同調が無いと、探知した場所がワカラン!…礼一さん、ブリッジに指示お願いします!」

礼一「ほいさー!」と言うとブリッジの中に入り「お待たせしました、いざ3時方面へ!お宝ありますぜー!」

ティーツリー「了解です!」

南部(…(汗)。)



黒船とアンバーも雲海に入り、黒船を先頭に暫く雲海の中を進む。やがて2隻は船を停めると、黒船の上部甲板のハッチが開いて夏樹とメリッサが出て来る。2人は風を使ってバッと雲海を払うが、全ては払いきれず若干霧掛かった状態になる。

夏樹「濃いなぁ…。一応前は見えるけど。」

メリッサ、前方を指差して「ねぇもしかして崖の間って、あれ?」

前方に、左右に切り立った岩山があり、その間に船が一隻通れそうな位の隙間がある。

夏樹「うへ…。あれの間かよ…。」

すると耳に着けたインカムからネイビーの声『あれの間の中腹というね。』

夏樹「なんだって?」

ネイビー『操船の難易度高いから、風使いさん助っ人宜しく!』

メリッサ「待って、アンバーの透君も欲しい!」

夏樹「バリアの穣さんもー!」


暫し後、アンバーが黒船の上に来ると、その翼から穣が黒船の甲板に飛び降りて来る。

穣「へい助っ人お待ちぃ!…透はアンバーの上に残したぜ。向こうにも必要だ。」

メリッサ「あー、アンバー側にも要るか。」

穣「じゃあバリア職人が盾を作ったるかー!」と言いつつ船首側へ歩いて行く。

船体中央にメリッサが、そして船体後部側に夏樹が立つ。

メリッサ、インカムに「こっちの準備出来た、発進していいよ。」

ネイビー『じゃあ、行くね!』

ゆっくりと前進を始める黒船。その背後にアンバーが付く。

目の前に崖の狭間が近づく。

メリッサ「…今んとこ風が大人しいのが救い…。」と呟く。

穣、左側の岩壁に光る何かを見つけて「…ん?もしかして、あそこが8か?」

黒船はゆっくりと狭間に入る。その黒船の進路を遮るように、前方の左側の壁から長い源泉石柱が2本、横に生えている。

穣「これかー…。すげーな。」と言いつつ腰のポーチからカメラを出すと、写真を撮る。

黒船は石柱を見上げるような位置で、やや手前に停止する。と同時に甲板のハッチが開き、ジェッソ達が甲板に出て来る。

ジェッソもカメラで写真を撮り、きちんと撮れたか確認を済ませると前方の石柱を見て「さぁて、どうやって採るかな!」

メリッサ「早くしてね、微妙に風が強まってるから。ここで強風吹かれたら恐いわ。」

ジェッソ「了解。」と言うとインカムに「船を柱の下へ…副長、微速前進!」

ネイビー『微速前進!』

黒船はゆっくりと柱の下へ進む。柱が船体の中央付近に差し掛かった所でジェッソが指示をする。

ジェッソ「…停止!」

指示通りに停まる船体。

ジェッソ「あとはこれを叩き切るだけだが…2本か。」と言いつつ石柱を触る。

黒船のすぐ上に真横に生えた太い柱が1本、その上に、上向きに生えている細めの柱が1本。

ジェッソとレンブラントは協力して下の太い柱の上によじ登り、その上の細い柱に触ると「おや?」と言って「上と下で違う!」

レンブラント「下は8だ絶対そうだ!」

穣、下の柱を触りつつ「見た感じ、7と8の違いがわかんねー!」

メリッサ「そうよね。」

ジェッソ「触ってみると分かる。上と下で全く感覚が変わる。とりあえず上の柱を採ってしまおう。…これ斧で叩き切るのは無理だから、昴の出番だ」

昴「ほい。」と言ってジェッソの手助けを借りて下の柱の上によじ登る。

その間にオーカーと大和が柱の下にブルーシートを敷いて風で飛ばないように固定する。

昴は上の柱を触って「お!」と驚いたように叫ぶと「穣が居て良かったー!」

穣、キョトンとして「ん?」

昴「これ、とっても割り易い!ホントに7なのかな?」

穣「源泉石って同じ等級でも性質が」

昴「あー、同じでもそれぞれ性質が違うんだった。」と言うと「これは下手にやると、割れまくるぅ…。」

穣「それでバリア職人な訳ね。」

昴「うん。保険。」と言って「じゃあ穣、バリアして。レンとジェッソは、そのまま柱を抑えてて。」

穣「へいー。」と言って昴やジェッソ達を護るように、柱のすぐ下にバリアを張る。

昴はそれを確認すると「じゃあ、行くぞー!」と気合を入れて「3、2、1!」

パシ、という乾いた音がして、昴が手を当てた石柱の根元部分に真っ直ぐ亀裂が入る。

昴「上手く割れた!」

ジェッソ「えっ」

穣も若干キョトンとして「割れたの?」

昴「割れたよ!柱をしっかり持ってみて!」

2人は柱を支えている腕を少し上げる。すると柱の根元で甲高いピンッという何かが弾けるような音がして一気に柱が2人の腕に伸し掛かる。

ジェッソ慌てて「おっと!」と手から滑り落ちそうになった柱を抑える。

レンブラント「マジで割れてた!」

昴「ってかゴメン、首の皮一枚で繋がってた、最後に折れた。」

ジェッソとレンはゆっくりと石柱を立てつつ下の柱に立て掛けるように柱を甲板に降ろす。オーカーと大和がそれを受け取って石柱を甲板の上に寝かせる。

オーカー「これ、もう中に入れますね。」

ジェッソ「頼む。」

オーカーは大和と一緒に7の柱を持ち上げ、ハッチから船内に運び入れる。

ジェッソ「ではいよいよ、8採りだ。」と言い、柱の上から降りると斧を手に取り「これは左舷側ギリで切るしかないな。ちなみに昴、これを割れるか? 少し亀裂を入れるだけでも」

柱の上に居る昴は手を当てつつ「これメッチャ弾く、んー、キツイ!」と言って「怪力が無理な時にはやってみる!」

ジェッソ「OK、じゃあ柱から降りてくれ。斧で叩いてみる。」

昴が柱から降りてジェッソの背後に来る。ジェッソは斧を構え、力を込めてガンと柱を叩く。次に力を抜いてカンッと叩いてみる。すると斧が柱に少し食い込む。

ジェッソ「お…。」と呟き「これは、結構…微妙な。」と言うと「レン、逆側を切ってくれ。」

レンブラント「了解。」と返事して斧を持って柱の下をくぐり、ジェッソの逆側に行くと斧を構えて柱をカンッと叩く。斧は食い込んだがピシッと微妙に変な方向に割れ目が走って思わず「うわ!」と声を発する。

ジェッソ「少しでもエネルギーの加減がズレると割れるぞ。」

レンブラント「怖え、ヒビ入った…おっかねー!」

メリッサ「ちなみに、風が吹き始めたから出来るだけ急いでほしい。」

ジェッソ「うん。」

レンとジェッソはカンカンと何度も斧で叩いて少しずつ柱に切り込みを入れて行く。

その間に徐々に風が強くなってくると同時に雲海の霧もジワジワと濃くなる。それをメリッサと夏樹が風を上手く使いながら吹き飛ばす。

穣「…長期戦だなー…。」


それから30分後。

ジェッソ側から柱の中央に向かって3分の1程、レンブラント側から柱の中央に向かって4分の1程の切り込みが入っている。どちらも切り口から細かいヒビが不定方向に走っている。

風はかなり強くなってきている。

ジェッソ、若干疲れた顔ではぁ、と溜息をついて「ちょっと、集中力が…。」と言いつつガンと柱を叩く。

その途端。

斧を入れた所から、妙な方向にビシビシビシと大きなヒビが入る。

一同「!!」驚愕

ジェッソは思わず天を仰ぎ「やっちまっ、たー!」と叫ぶ。

昴「落ち着け!」

レンブラント「落ち着け!」

ジェッソ、頭を抱えて「すまん!もうなんか…。」と言い「あぁもう!」

穣「気にすんな、8採りは初なんだし、やってみなきゃわっかんねー!」

メリッサ「そうよ!」

昴「そうだそうだ」

レンブラント「失敗しないとワカラン事もある!とりあえず柱が崩れたらこの辺に散らばっちまう、コンテナとシャベルを」

オーカー「と思って持って来といた。コンテナ組み立てます。」と言い背後に置いた畳んだコンテナを組み立て始める。

レンブラント「さっすが!」

ジェッソは柱を調べながら「…これは…崩壊の危機だな…。どうすりゃいいんだ…。」

穣「こうなったら崩壊前提で、練習って事で爆破の昴にバンとやってもらうとか。」

レンブラント「まぁ続けて斧で切ってもいいけど。崩壊前提だし。」

ジェッソ「んー…。」と悩む。それから、はぁ…と溜息をついて「風が強くなってる、時間が無い。急いで力任せに切れば等級落下確定だ。昴だったらまだ等級維持の可能性がある。」

昴、目を丸くして「ええ。」と言うと「絶対崩壊するけど?!」

ジェッソ「うん。…昴、もう崩壊前提で、練習のつもりで発破やってくれないか。」

昴「んー…。」と唸ると「わかった。やってみる。」と言って柱を触り始める。暫しあちこちを触っていたが、溜息をついて「マジでムズイ…。」と呟くと「ただ、もうヒビ入ってるから、さっきより割り易くはなってる…。」と言い、ジェッソが斧で入れた切れ目の辺りに手を当てると「ここから行く。…絶対崩壊するけどいい?」

ジェッソ「いいよ。」

レンブラント「練習だから!」

昴「じゃあ…。」と言って深呼吸をすると、意識を集中する。「…行きます。3、2、1」

その途端、ピシピシピシッという乾いた破裂音と同時に柱の中央部分までいくつものヒビが入り、柱の真ん中が砕けて欠片がバラバラと落ちると同時に柱の真ん中から先端までの部分はそのままゴンと落下する。

昴「真ん中砕けたけど上の方は辛うじて生き残った。」

ジェッソ「おぉ…。」

レンブラント「上だけ採れただけでも成功では?」

穣「うむ!」

昴「…真ん中のとこは粉々だけど…。」

メリッサ「ねぇ、風が強くなるから急いで撤収しましょ!」

ジェッソ「よし、レンとオーカーはこの柱を中に入れてくれ。粉々になったやつはブルーシートごと包んでコンテナに入れて船内に入れる。」と言うと耳に着けたインカムのスイッチを入れて「船長、次の場所を探知するように上総達に伝えて下さい。今の8の柱はですね…、私が失敗したんで等級落ちするかもしれないです…。」