終演後の楽しみ@HST
2001年のヨーロッパデビュー後、その成功を受けてフォアポンメルン歌劇場の第一専属指揮者に就任することになりましたが、その契約は自分にとって、ドイツで初の、また、ヨーロッパで初の契約であったのと同時に、自分の指揮者としてのキャリアの中で初めて得た常設のプロフェッショナル団体におけるポストでした。
フォアポンメルン歌劇場は、元は別々だった2つの組織が合併して誕生した歌劇場だったので、グライフスヴァルト市 (Greifswald) の劇場での公演の時は片道40分の車での移動が必須でしたが、居住地だったシュトラールズント市 (Stralsund) の劇場は自宅からの所要時間が徒歩でたったの3分。コートを羽織って出かけられる冬場などは、自宅でステージ衣装に着替えて、自分のオフィスにコートを置きに行ってそのままピットに入ることが出来たので、いつも公演開始15分前までは自宅でゆっくりできる・・・最高の環境でした。
毎日違う演目、それもオペラだけではなく、バレエや、コンサート等を指揮することに加え、午前中は新しいプロダクションのリハーサルが入ることが普通で、公演がない日は夜もリハーサル。自分が指揮しているオペラの裏で、別のプロダクションのリハーサルが同時進行していることもあったり、リハーサルの合間(昼間の時間)はオーディションやミーティング・・
仕事はとてもハードで過密スケジュールの毎日でしたが、たくさんの舞台作品に触れられる環境を得られたことは、今思い返してみても充実の日々でしたし、音楽以外にも楽しみはたくさんあって、その1つが、シュトラールズント市での公演を終えた後の「自宅への帰路」にありました。
劇場を出て自宅のほうに向かって歩いていくとAlter Markt・・同じ市内にNeuer Markt (新市場)があったので、旧市場とでも訳すのが適当でしょうか・・があって、そこのRathaus(市庁舎)の夜景がとても好きでした。それがこちら
終演後、夜の街を歩いて自宅にたどり着くまでの3分間に、こんな素敵な景色を必ず見ることが出来る・・公演で疲れている心身を癒してくれました。
何度見ても飽きることはなかったですね。
下の写真は地上階部分を接写したものですが、この通路を抜けたところに自宅がありました。
昼間は薄暗くてあまり好きな場所ではありませんでしたが、ライトアップされた夜間に歩くのはとても好きでした。
引っ越してきた時に、たまたま市庁舎裏の物件に空きがあったこと、初めて契約をもらった劇場の本拠地が歴史の長い街であったこと等々・・色々な好条件が重なった結果でしたが、通勤、通学路上に何か1つでも楽しみがあるのは良いことだと思います。
ちなみにこの文のタイトルにあるHSTというのは車のナンバーにも使われているHansestadt Stralsundの略称で、かつてハンザ同盟都市の一員だったシュトラールズント市の事を表しています。