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古志YouTube句会(4月)を終えて 2

2023.04.23 21:00

きのうの続きです。

4月のYouTube句会の特選句から。


ありがたく国土の足しによなぼこり  稲垣雄二

目を借りて蛙は恋を続けをり  間宮伸子


いずれも着想のおもしろさがあります。

奇をてらっただけで終わったような句ではなく、ちゃんと地に足がついています。

軽薄さもありません。


「着想のおもしろさ」というと、

その場の思いつきで作られていそうだと思われがちですが、実はそうではありません。


日々、作者がどういったことに関心を持ち、何を感じ、考えているかという

ふだんの積み重ねから生まれるものです。


一句目、「よなぼこり」は黄砂のこと。


日中関係にはいざこざがありますし、

そもそも黄砂は鬱陶しいものですが、

それらを踏まえた上で、このように詠んでいるわけです。


この句には心の余裕があります。

根底に作者の度量の大きさがあるからこそのもので、

思いつきだけ詠めるものではないのです。


二句目、「蛙の目借時」という季語をうまく分解しながら詠んでいます。


田んぼに蛙が鳴き始める頃になると、

春の陽気から、うつらうつらと眠くなりがちですが、

その原因は「蛙に目を借りられるせい」であるというのが、

この「蛙の目借時」という季語です。


ただでさえ不思議な季語なのですが、

そのフィクション性をうまく利用して詠んでいます。


この句を読むと、

「蛙が恋を成就するためなら、借してやってもいいか」という気分になります。

この句も作者の度量の大きさが根底にあります。


いずれもおもしろい句だと思います。

おもしろいというだけでなく、心がほぐれる句です。

世界の見方をちょっとだけ変えてくれます。


結局のところ、俳句は人生観次第。

日々、おのれを耕し、度量を大きくしていくことが

俳句を豊かにする道であり、人生を豊かにする道であると信じています。


来月のYouTube句会は5月27日(土)に開催です。

ぜひご参加ください。