Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

WUNDERKAMMER

人魚の家系

2018.06.03 12:06

田舎から上京した友人の話です。

その友人の地元は、海沿いのさびれた漁師町で、

そこに昔から伝わっていて、今では口語で歌われている歌があった。


『鰯が獲れたら秋刀魚が獲れる

秋刀魚が獲れたら鰤が獲れる

鰤が獲れたら鰹が獲れる

鰹が獲れたら人魚が獲れる

人魚が獲れたら子供が獲れる

子供が獲れたら肉になり

肉になったら鰯が獲れる』


という、なんだか不思議な歌だった。

友人から聞いたときに気になったのは、やはり魚からいきなり人魚や子供に飛躍する点。

だが、友人もよく分からないというので、「今度帰省したら祖母に聞いてみる」と言っていた。

その夏のある晩、帰省していた友人から電話があった。

聞いてみると、実は歌には、今の子供には伝わっていない2番が。


『鰯が獲れぬし秋刀魚も獲れぬ

鰤も獲れぬし鰹も獲れぬ

人魚も獲れぬし子も獲れぬ

こぞ(去年)に獲れたは人魚の子

稚児がその子を食らぶれば

稚児は見事な餌になりて

鰯は町に戻り来る』


私は「人魚ってなんだ」と聞いたところ、

それは女ばかり生まれる特別な家系のことで、大漁の年に子供が生まれるのだそうだ。

そして、純潔守られた子供は、不漁の年に町の少年と性交する。

少年は交わった時点で、人でもない物として海に捧げられるのだそうだ。

友人の祖母が子供の頃には、すでにそんな風習もなく、人魚の家系がどこにあるか分からなくなっていた。

ただ、友人の家系は女ばかりで、入り婿が家を継ぐそう。