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Photo Story Gallery:『涙櫻』

2018.06.03 14:20

 儚い青に、滲むように霞む桜色。


 手を伸ばし、掴もうとして零れ落ちて行く春の光。


 指の隙間からすり抜けて行く幸せのように、空の青も、桜の色も、はらはらと散り、消えてゆく。


 あなたのやさしい眼差しも、温かい掌も、柔らかな微笑みも、包み込む深い声も、瞳の中で空の青と桜の色と溶けて滲んで、ゆらゆら揺れる。


 溢れ落ちないように、目を見開いて、空を見上げる。


 胸の中で啜り泣く、押し殺した嗚咽が、熱い痼(しこり)となって、喉を塞ぐ。


 ヒュッと息にならない息が漏れる。


 言葉も無く、ひとり佇む。


 幾億の声にならない言葉が、胸の中に降り積もる。


 声を失くした人魚のように、焼け付くように痛む足の代わりに、悲しみが血を流す。


 儚い青に、滲むように揺れる桜色。


 瞳から、ぽろりと滑り落ちて、土に還る。


 私ひとりを此処に残して。


photo/文:麻美 雪