第22章 03
午後1時半、死然雲海の中の遺跡。
ブルー、レッド、シトリンの3隻が、広場の中央に船首を向けて並んで着陸している。
各船の船首の前にはコンテナが積んであり、メンバー達がそのコンテナ周辺をウロウロしている。
サイタン「遅っせぇな黒船…まだかよ、もう1時半とっくに過ぎたぞ!」
クラリセージ「もうすぐ来ますよ、向こうは1時半に駐機場を出るんだし。」
サイタン「とっとと来いー!もうヒマでたまらん。」
ウィンザー「ってか、やっぱなんか…」と言って溜息をつくと「戻るの考えると憂鬱な気分になるなぁ…。」
サイタン、霧の中にうっすら見える影を指差し「来た来た、やーっと来た!」
死然雲海の霧の中から現れた黒船とアンバー、そしてカルセドニーは、3隻と向かい合うように船首をコンテナの方に向けて並んで着陸する。やがてタラップが下りて各船の採掘メンバー達が広場のコンテナの所に来る。
ジェッソ「皆さん、我々の船の分の鉱石採掘ありがとう!」
サイタン「一応、借りは返してやったぜ!」
満「とりあえず恩返しは果たされた!」
穣「ありがとー!んじゃこれ、船に積むぜーい!」
ジェッソ、黒船のメンバー達に「レッドコーラルが採ってくれた鉱石だ、丁重に積もう!」
一同「おー!」
サイタン「ヒマだから積むの手伝ってやらぁ!」
ジェッソ「いや人手は足りているが。」
サイタン「うるせ。ヒマなんだよ手伝わせろ!」
カルセドニーでは護がシトリンのメンバー達に「採ってくれて、ありがとさん。」
陸「いえいえ。積むの手伝いますよ。」と言いつつコンテナを載せた台車を押す。
護「助かる助かる。」
一同は手際よく作業を進め、アッという間に各船の貨物室にコンテナを運び入れる。貨物室の扉を閉じ、台車を片付けて作業を終えると各船の一同はゾロゾロと広場中央に集い始める。
あまりの作業の速さに穣ちょっと呆れて「なんつー手際の良さ…。もう終わっちまった。」
すると穣の背後から「ヒマなもんで。」という呟き声。振り向くと歩が「もっと面白い仕事がしたい。」と言いつつブルーメンバー達の所へと歩いて行く。
穣、ちと唖然として歩の背中を見つめながら、心の中で(…マジか。)と呟く。(あいつが俺に、本音で語るとか、前代未聞な…。)それからニヤリと笑みを浮かべて(人は変わる、…だから人生は面白い!)
そこへ剣菱がタラップを降りて広場へやって来ると「皆さん集まってるかな。」
穣「集まってる。」
剣菱は一同を見て「じゃあ船長と採掘監督は中央に出て!今後の話し合いをしますよー!」と呼びかける。
6隻の船長を囲むように各船のメンバーが集い、適当に立ったり地面に座ったりする。
皆が落ち着いた頃合いを見計らって、総司が前に進み出て口を開く「ではまず皆さん、イェソド鉱石採掘ありがとうございました。」と言うと「…最初に、3隻のケセドの街に入る許可についてですが、今は大死然採掘の準備で多忙だから、それが終わった後に警備のレトラさんに連絡すれば3隻全員に許可を出すという事なので、ケセドの街に行きたい船は後々俺か剣菱船長に言って下さい。…で。」と言って一旦言葉を切ると「昨日、仕事を取りに行った結果、案件を二つ頂いて来ました。」するとそこで一同から「おお…。」とどよめきが起こる。
南部、驚いたように「…二つも来たのか。」
総司「一つは黒船とアンバーの仕事で、有翼種が行かないジャスパー側の死然雲海で採れるケテル石の採掘。」
その瞬間、護が「ケテル?!」と声を上げて前に進み出つつ「待たれい!ケテル石は人工種だけで勝手に採っちゃイカンと!」
剣菱「昨日、採ってもいいと許可が出たんだ、黒船とアンバーだけに。」
護「なんですと…?」と言うと「ケテル、俺も採りたいー!」
カルロス、護を引き留めて「まぁまぁ大死然採掘があるんだし。」
護「いや大死然行ってきた後、黒と茶色がケテル採ってて俺はマルクト石なの?納得出来んわ!黒茶がマルクト石で俺がケテルなら納得するけど!」
カルロス「そもそも黒と茶色に依頼が来たという事は、それなりの量が欲しいという事だろう。お前が採掘船2隻分のケテル石を採るっていうなら仕事交換すれば?」
護「…。」渋い顔で固まって沈黙。
カルロス、総司に「…続きをどうぞ。」
総司「もう一つの依頼は、これです。」と言ってポケットから淡い紫色の鉱石を取り出して、皆に見えるように腕を伸ばして上に掲げる。一同それに注目する。護はちょっと総司に近寄ってその鉱石を凝視する。
サイタン「…なんだこれ。」
満も怪訝そうに「んん…?」
護「…ちょっと触ってみてもいいですか!」
総司「いいよ。」と言って護にその鉱石を渡す。
護はそれをしげしげと見つつ「これ、どっかで見たぞ。」
すると総司と剣菱が驚く。
剣菱「なんだと…。」
総司「…分かったら、ある意味凄い。」
護「どっかで…んー!…コクマの図書館にあった、鉱石大図鑑に載っていたやつ!…なんか昔、雲海で見つけたっていう名前の無い石のひとつ。」
思わず剣菱と総司、同時に「そう!」と言い拍手する。
総司「まさか当てるとは思わなかった…。」
剣菱「暫定的に『死然雲海EL』と名付けられてるだけの鉱石。」
総司「もしこれの鉱脈を探し当ててそれなりの量を採掘出来るようであれば、そこで名前を付けるそうです。」
護「誰が?」
総司「イェソド側が!」
護「えー。」と言いつつ鉱石を総司に返す。
剣菱「これ昔、雲海で発見されたサンプルの一つで、恐らくゲブラー鉱石って奴じゃないかと言われてるんだ。でももっと沢山無いと確定が出来ないそうで、だから鉱脈探して、あったら採って欲しいと。」
総司「遥か昔、人間が使っていた鉱石だそうです。」
すると南部が「えっ、人間が?」
総司「だから人間側に鉱脈がある筈だと。」
南部「何に使う鉱石なんです?」
総司「工業用、例えるなら石英みたいな感じ。なんかこれが沢山採れるとイェソドの技術向上に繋がるらしいです。」
南部「ほぅ…。」
剣菱「他にも色々仕事があったが、この石は殆どの石屋が欲しい!と言ってたので請け負った。」
護「色々仕事あったの…?」
剣菱「うん。なにせ本部行ったら石屋が勢揃いで会議してるとこだったんで。仕事ありすぎで絞り込みに悩む程だった。」
サイタン「なんだと…。」
満「そ、そんな事が!」
そこへ駿河が溜息交じりに「今まで俺が、仕事あったら下さいって営業かけてた時には無かったのに。」
カルロス「そりゃ採るのが護だけの船に、そんな期待されてもな…。」
総司「…カルセドニーが信頼と実績を培って、その上に皆が源泉石採掘で頑張ったからですよ。」
サイタン「とりあえず俺らは今後その変な石を採ればいいのか。」
総司「これと、イェソド鉱石です。」
サイタン「まぁ鉱石は採るけどよ。」
総司「ちなみにこれ暫定的に『EL鉱石』って名前で。」
満「つまり雲海をウロウロしてそのEL鉱石を採りながら、イェソド鉱石も採ると…。」
総司「黒船とアンバーはケテルを採りつつイェソド鉱石も採ります。」
満、腕組みして「まぁイェソド鉱石は、あの素晴らしい鉱石採掘場に行けば問題なく採れるしな…。」
総司「しかも別に毎日5隻がイェソド鉱石採掘する事は無いんです。毎日2隻とか3隻で、交代に採掘すればいいかなと。」
剣菱「んでイェソド鉱石採掘以外の日は、EL鉱石やケテルを採ってイェソドに行って売ると。」
その時、黙って話を聞いていた陸が、若干言い難そうに「あのぅ…。交代で採掘はいいんですけど、するとイェソド鉱石を採らない日は、ジャスパー側の稼ぎが無いという事に…。」
楓も「有翼種側の仕事をする分、ジャスパー側の稼ぎが減るって事ですよね?」
剣菱「そこは分からんぞ!」
楓「どうして?」
総司「そもそもジャスパーの給料って謎でして、黒船はイェソドに出てガンガン採掘しても、以前、内地でチマチマ採掘してた時と、給料殆ど変わらんのですがー!」
3隻のメンバー達、ガーンと大きな衝撃を受ける。
楓「うっ、そ…。」
陸「まじっすか…。」
南部「そんな…。」
衝撃で3隻のメンバー達、暫しの沈黙。
剣菱「だって、言っても上げてくれねぇし!あれ殆ど固定給なんじゃねーか?」
総司「どう考えてもイェソドで採ってる方が採掘量爆上がりしてんですが!」
剣菱「とは言っても黒船さんは一番お高い!」と総司を指差す。
総司、苦笑いで「…ええまぁ。だからこそ管理に反抗し辛いんですよ、罪悪感ハンパ無い…。」
剣菱「こんなに給料やってんのにって上から恩着せされるしな?…とりあえずシトリンとか3隻は、イェソドの採掘場で2日採掘しただけでも内地で一週間採掘してた時より、総採掘量は上がりますよ!」
陸「悲しいが、それは分かる…。」
総司「あまりに理不尽な給料なら、それこそ直談判です!」
剣菱「うむ!」
総司「ところで皆さん、EL鉱石とかケテル石を採って稼いだイェソドのお金で…、SSF分室を建てませんか!」
途端に穣が「おぉ大賛成!」
陸「俺は賛成です、SSF出身なんで!」
サイタン「んー…。」
満「…ううーむ…。」
メンバー達の何人かは浮かぬ顔をしている。
総司「だって皆さん、別にイェソドで暮らす訳でもないだろうし、何か欲しいものを買うだけのお金があれば、あとはSSF分室に使っても」
サイタン「それ、作ってどーすんだよ。」
総司「…どこぞの駿河さんが、そのうちイェソドで有翼種の船の操船免許を取るらしいんですが」
すると武藤が「なぬ?」と声を上げて駿河を見て「駿河、お前どこ行っちまうんだ…。」
駿河「どこって、有翼種の世界はイェソド山だけじゃないし。俺が免許持っていれば、黒船とか5隻も一緒に有翼種の世界を飛び回れる。…まぁでも俺は人間なんで、有翼種が俺に免許くれるかどうかワカランけど気長に頑張るわい。」
総司「駿河さんが免許取れば人工種の世界も広がる訳です。その一環としてSSF分室作りませんか。俺は人工種の可能性を広げたいんです!」
穣「さっすが黒船船長、わかってるぅ!…同志よ!」と言いつつ総司の横に行くと肩を組みつつ「後でじっくり話しようぜ!」
総司、やんわり肩から穣の腕を外しつつ「話はしますが肩が重い。」
サイタン「…別に金を使いたくないって訳じゃねぇんだけどよ、なんかピンと来ねぇんだな…。俺はそこまで有翼種に興味はねぇからなー…。」
満「私も同感だ。そもそも一体どうやって分室を作るのか。」
穣「そりゃー作り方は実際にSSF建てた人に聞くしかねーわな!」
陸「つまりSSFに行ってウチの製造師に聞けと。」
総司は若干悩み顔で「んー…、まぁ…」と言って、ちょっと溜息をついてから駿河を見ると「…あの、駿河さん。」
駿河「ん?」
総司「さっき話してた、あの事を、皆に言ってもいいですか?」
駿河「あの事?…と、いうと…。」
総司「カルセドニーの船長部屋で…。」
駿河「…。」苦い顔になって「ここで言うんか…。」と呟くと、ちょっと考えてから「まぁ、ええよ?」
すると総司、思わず笑って「いいんか!ホントに言うよ?」
駿河「いいよ。だって本気で思ってるし。」
穣「なんだなんだ。」
総司「実は、駿河さんが…」と言った所で笑って言葉が続かなくなる。
穣「って何なんだ!」
剣菱「そんな面白い事なのか!」
総司、駿河に「ほんっとうに、言いますよ!」
駿河「いいよ!」
総司「…将来、有翼種の方と、結婚したいらしいので!」
途端に一同が「えええええええ!」と駿河に注目する。
護、駿河に「ま、マジですか船長!」
ジェッソ「本当に?」
上総「マジ?」
マゼンタ「マジで?」
駿河、若干照れつつ「うん。」
穣、駿河に向かって念を押すように「ホ、ン、ト、に?!」
剣菱も「大丈夫かアンタ!」
駿河、真っ赤になって「だって俺アッチとコッチの架け橋やりたいんです!」
総司「それでですね!あの人と有翼種の子供は人工種になる訳ですが」
護たち「ええー!」目をまん丸くする。
剣菱「アンタの遺伝子使って人工種作るんか!」
駿河「だってそうしないと子供出来ませんしー!」
武藤「駿河…お前とんでもない所に足を踏み入れてしまったな…。」
剣菱「ってかそんな人工種、管理が絶対…あ、だからイェソドの分室なのか!」
総司、力強く「はい!」と頷く。
護「そういう事か…。」
穣、爆笑しつつ「確かに!…それイェソドの分室じゃないと、作れねぇ…!」
武藤「管理がこの話を聞いたら蒼白になって妨害に来る…。」
剣菱「いやマジで、アイツ管理に殺されるかもしれん!」
マゼンタ「暗殺されるかも!」
駿河「おっかない事言わんで下さい!」
武藤「でも駿河は何がどうでも殺されない気がする…。」
護、ふと隣で爆笑しまくっているカルロスに気づいて「カルさん笑い過ぎ…大丈夫?」
カルロス、笑い涙を拭いつつ「…面白すぎ、て…。死ぬ…。」と腹を抱えて爆笑し続ける。
駿河「そんなに笑わなくても…。」と言って「…しかし問題はですね、こんな酔狂な人間と結婚してくれる有翼種が現れるかどうか。」
剣菱「だぁーいじょうぶだ!いつかは現れる!」
メリッサ「何なら募集すりゃーいいのよ!」
ジェッソ「そうだお見合いだ!」
護「そういえばダアトの御剣研って人間と有翼種が恋に落ちて出来たんだよねぇ…。」
穣「らしいな!…駿河さんの為に、あそこも調べてみないとな!」
武藤「ええぃもう、駿河の為じゃあ!SSF分室の為に頑張るかぁー!」
剣菱「おおー!」
マゼンタ「頑張るぅ!」
マリア「頑張ります!」
満「仕方がない…。駿河の為だ、やらねばならんか…。」
アッシュ「やりまっさぁ!」
礼一「頑張るぜーい!」
楓「私も協力したい!」
陸「協力しましょう!」
ジュニパー「これは応援するしかないじゃない…。」
春日「賛成でーす!」
輪太「賛成です!」
ウィンザー、サイタンに「監督、やりませんか?」
サイタン「やるも何も…すっ飛びすぎて…。」と言って溜息をつくと駿河を指差し「アイツとんでもねぇな…。」
満「同感です。昔からこんな奴だったが、予想の斜め上を行く凄さだった。」
そこへ総司が「ちなみに、SSF分室を作っとけば皆さんも、もしも有翼種と結婚して子供が作りたくなったら人工種と有翼種でも子供作れると思うんで!」
ジュニパー「あら!それホントなの?」
総司「以前、周防先生が言ってました!作れる可能性があると!」
マゼンタ「人間と人工種でも子供作れるかもって言ってたよね。」
ジュニパー「まぁ!」
武藤「マジか!」
総司「皆さん、とりあえずSSF分室を作る為に頑張るって事でいいですか!」
陸「よし、SSFに突撃して周防先生と紫剣先生に分室の作り方を聞いて来ないと!」
ターナー「…建設費、どんだけお金かかるんだ…。」
楓「最初は小さな建物でいいと思うの。有翼種からの頼み事もあるし。」
陸「ああ、先生が欲しいっていう。」
楓「うん。徐々に大きくしたらいいんじゃないかな。」
総司「じゃあそういう事で。今日これだけイェソド鉱石採ったし明日は休みでいいかな。」
剣菱「うん、休みにしよう。一週間ずっと出てたしな。」
総司「ではカルセドニー以外はジャスパーへ戻りましょう!管理さんが何を言って来るか気になりますが。」
サイタン「ちょい待て。思ったんだけどよ、SSF分室の事をあんまり騒ぐとマジでヤバイんじゃないか?…あいつが。」と駿河を指差す。
駿河「…そうかなぁ…。俺はカルセドニーで飛び回ってるから別に管理と会う事も無いし」
そこへ南部も「本気でSSF分室を作ろうとしている事がバレたら、妨害はされると思いますよ。貴方も、そして5隻も。」
武藤「…駿河は大丈夫な気はする。」
剣菱「うむ。」
総司「…妨害に屈してたら俺、今ここに居ませんけどね。」
サイタン、総司を指差し「アンタすげぇよ。それだけ叩かれても船長続けられるのが。」
総司、右手で黒船メンバー達を示しながら「支えてくれる人々がいるからです!それに、前は管理の言いなりだった3隻が、今はマトモになってくれたので前よりマシです!」
武藤「前は3隻で黒船に突撃したからなー。」
総司「特にレッドが!」
春日「何かあったっけ。」
サイタン、南部を見て「どっかの船長がなー!」
南部「…ラスボス船長だったからな。勇者に監禁されたが。」
総司「とりあえず3隻の皆さんには自信を持って頂きたい!こんだけ有翼種に認められたんだし!管理に何を言われても凹んじゃダメです!」
穣「そうだそうだ」
総司「もし妨害されたら心の中で、『クソ管理、人の話を聞きやがれ、くっだらねー事ばっかり言いやがって人工種ナメてんじゃねー!テメェらマジでうっ、ぜぇ、わ!』位は思ってスルーするんですよ!」
ジェッソ「それを雲海の中で、一人で甲板に出て叫んでいたらしいです、この船長。」と総司を指差す。
総司「バラすな!」
礼一、驚いて「なんですと…?!」
進一「ついに総司もバグったか!」
総司「ってか今、ふと思ったんですが!」と言って一旦黙ると息を吸って「管理への反撃にSSF分室を作ったればいいんです!」と怒鳴る。
一同「!」
総司の絶叫「奴らが最も嫌がって、ガチで妨害してくる事をしてやればいいんだよ!」
一同、暫し唖然として総司を見る。
やおら南部が何か感銘を受けたように「…そうか、なるほど…!」と呟く。
総司「だって俺がそうなんです!そうやって自分の心に従って信念貫いて戦ってたら、こんなに味方が増えた訳で!…つまりそれは管理にとって忌々しい変化が起きたって事ですよね?」
満「…た、確かに…。」
総司「SSF分室なんて、マジで管理に妨害されますよ、だからこそやるんです!自分らは絶対に管理に屈しないという気概を見せるんです!…そうやって戦ってたら自分に自信が持てる、自分の本当の力に気づくようになります!だって俺がそうだから!…俺、副長時代には黒船船長なんて絶対無理と思ってた、今のこんな自分は、当時は想像も出来ませんでした!」
一同「…。」
途端に穣が総司を抱き締めて「わかる!すっげぇわかる!」と叫ぶと総司を離してその両肩を掴み「俺もずっと戦ってきた、だから、分かる!…でもアンタ、すげーわ…。俺はまだ剣菱船長っていう盾が居るけどアンタは」
総司「いや俺も、駿河船長という盾が居なければ、こんなの無理でした。」
駿河「盾…なのかな…。」と首を傾げる。
総司、駿河を見て「貴方の言葉と、貴方から貰った制服。それが俺の盾です。」
駿河「…。」
そこへサイタンがポツリと「…やるぜ。」と呟くと「…俺は目が覚めた。やらなきゃなんねぇ。」
満も「うむ。…やらねばならん。」
サイタン「どんだけガチ妨害されてもSSF分室を建てる!」
陸「はい。」と頷きつつ言うと「俺は明日、早速SSFに行って建て方を聞いてきます!」
綱紀「俺も付いて行こう。」
聖司「俺も」
コーラル「俺もー。」
ジュニパー「アタシも行こうかしら。」
満「今後、駿河が殺されないように守らねばな…。」
駿河「ってあの!」
武藤、駿河を指差し「アレは心配ないと思う。」
総司「人工種の本当の力を奴らに見せてやるんです!…って言ってて腹立ってきた、あのクソ管理…!」と拳を握り締める。
穣「…アンタどんだけ管理に叩かれたん…」
総司「じゃあカルセドニー以外の皆さん、ジャスパーに戻りますよ!妨害上等で!」
一同「おお!」
カルロス「…面白そうだからちょっと一緒にジャスパーに戻りたくなったがまぁ今日はお家に帰ろう。」
駿河「一緒に戻るとその後の予定がね…。」
6隻の船は遺跡を飛び立つ。カルセドニーは暫しその場に上空停止し、5隻が雲海の中に消えて行くのを見送ると、方向転換して5隻とは反対方向へと飛び去る。