春凪
2023.05.01 13:48
・90秒台本
・1人用
本文
肺を満たす
陽射しの香り
背中を優しく焦がす
風を忘れた春の色
凪いだ景色の中に
冬ざれは無い
ほんのりと冷たい
あの手は
日陰に寄り添う
ささくれは
春には生きられない
この場所で
待っていれば
帰ってくるだろうか
ささやかな木陰に
また戻ってくるだろうか
白い息に曇る
窓ガラスを煩わしく思うのは
きっと
思い出してしまうから
石竹色の街が
私に語りかける
探さなくていいのかと
いいんだ
もう
会いたくないような気もするから