トンマッコルへようこそ
トンマッコルへようこそ
Welcome to Dongmakgol
2006年11月3日 新宿 シネマスクエアとうきゅうにて
(2005年:韓国:132分:監督 パク・クアンヒョン)
この映画の情報は随分前から知っていて、もとは舞台で、映画でも出ている、シン・ハギュンとチョン・ジェヒョンが舞台にも出ていたこと、この映画が韓国で公開されると2005年の興行成績NO.1だったこと・・・そして私は大好きな映画『ガン&トークス』のシン・ハギュンとチョン・ジェヒョンが、出ているので公開を楽しみにしていました。
また、北の兵士と南の兵士が仲良くなって・・・ということでは『JSA』を思い出しますが、この映画でシン・ハギュンは北の兵士をソン・ガンホと共に演じていました。
戦争を全く知らない人たちに、相対する北と南の兵士と米軍の兵士が出会い・・・「戦争」「銃」「人を殺す」・・・そんな事がさっぱりわからない人の中で、必死になって「戦争」しようとする姿を皮肉に描きます。
朝鮮戦争というリアリティと、トンマッコルという自給自足のユートピアというファンタジーの融和のさせ方が上手いと思います。
戦争側から言ったら、迷い込んだ村など、何も言わずに即攻撃して占領してしまうでしょう。
しかし、南の兵士も北の兵士も「帰るに帰れない事情を持っている」という設定。
また、いくらなんでも、こんなしあわせな村なんてありえない、とも言えるのですが、それを納得させてしまう人々のリアリティ。土台となる設定、脚本がしっかりしているから、「ありえないことが、ありえてしまうファンタジー」に仕上がっているのです。
監督が心配したことは、韓国映画では「ファンタジーという概念は根付かない」という通説があることだったそうですが、蝶の群れ、ポップコーンの雪、花火のような爆撃、少しずつ仲が良くなってくる北と南の兵士と米軍の兵士・・・・妖精や魔法は一切出ていないけれど、これはしっかりとしたファンタジーだと思います。
そして、その底に流れているのは、日本人にはちょっとわかりにくい、「南北統一」という夢のユートピアなのだと思います。
ひとつの国が分断され、緊張状態が続くなか、やはりひとつの国として・・・というかつての東西ドイツの状態を考えるともしかしたら、いつかは実現するかもしれない、一縷の希望に観客は喜びと期待を感じた・・・そんなことを思うのです。
そしてその難しさも同時に描き出す。
トンマッコルの村の人々の兵士を見たときの台詞の数々がとても可笑しくて、知らないって事がどんなに幸せか・・・という皮肉を感じさせます。
戦争でピリピリしてしまって、もう、戦争には嫌気がさしてしまっていても後に引けない兵士たちのぎらぎらぶりと好対照。
そんな対比のさせ方がとても上手いのです。観ていて、はらはらするというより、ほのぼの笑いながらも、その底に流れる、戦争のむなしさを十分感じる事のできる、娯楽と社会性が見事に融合した映画。こういう発想と脚本がしっかりと上手い映画はとても好きですね。