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更夜飯店

木更津キャッツアイ ワールドシリーズ

2018.06.05 01:54

木更津キャッツアイ ワールドシリーズ

2006年11月4日 渋谷 シネマライズにて

(2006年:日本:132分:監督 金子文紀)

 3年ぶりだよ、ニャー!!!!木更津キャッツアイ・・・そして本当に今回で「ばいばい」、最後です。

 前作、「日本シリーズ」」でテレビスペシャルをすっとばして奇跡の映画化を果たして、もう、3年も経つんですね。

しかし、今回もあの時速120kmくらいでずーっとすっとばしているテンションは異常とも言えるほど変わらないというか、ますます、パワーアップしています。日本シリーズについてはこちらに書いている通りです。

私はあまりテレビドラマが映画化されるのをわざわざ映画館に観に行くことはしないのですが、このシリーズはテレビもシナリオ本も・・・何度読んでも楽しく、面白い・・・映画になってパワーがどんと大きくなってびっくりしましたね。

キャッツの5人、ぶっさん、バンビ、アニ、マスター、うっちーのそれぞれの個性がきちんと描き分けられて整理整頓されているのです。

原作もオリジナル脚本で始まっていて、キャッツでし出せない個性的なハイテンションが好きなんです。

観てる側は、笑いながら楽しく、観てもいいのですが、実はそんな笑いの影にある、照れながらも本音というのがじんときます。

 そして、もうひとつ、この映画、次々と繰り出される笑いやパロディの色鮮やかな風船の群れ・・・の後ろというか風船の糸を握っているのは、「22歳(若さ)への決別」だと思います。

それは脚本の宮藤官九郎が、語っていることですが、「バカ」や「青春」という言葉はあまり好きではない。本当にバカな人はそれに気がつかない、しかしそのバカを自覚し始めたときに青春が始まる・・・といった事なんです。

 ぶっさん(岡田准一)は、22歳で死んでしまった。しかし、他の4人は3年経ってもう、25,6歳。ぶっさんというリーダー(ガキ大将)を失ってしまった4人はあるきっかけから、今ばらばらです。

アニ(塚本高史)は東京、マスター(佐藤隆太)は大阪、うっちー(岡田義徳)は自衛隊(!)・・・そして木更津に残っているのは木更津市役所に勤めるバンビ(櫻井翔)だけです。

バンビは、空き地をショッピングモールにする、という市長の演説を聞いているときに、「ぶっさんの声」を聞く。しかし、英語?!なんで英語?

訳わからないままも、その空き地に野球場を作ればいいのだ・・・ということになり、ぶっさん復活のため、キャッツのメンバーを集める。

 ここで、あるアメリカ野球映画のパロディになっているのと、ぶっさん、復活・・・・なのはいいけれど、復活して欲しい人ばかりが復活するのではないって所からどんどん話が転がっていく。ちゃんとワールドシリーズになってるし。

 映画は、時間軸がくるくると変わり、1シーンがとても短くぱっぱっと変わっていく。だから、映画始まっていきなり「韓国版釜山キャッツアイ」から始まり、いきなり、そのテレビを見て文句いうぶっさん・・・・・・あれ?

 そして回想シーンを織り交ぜ、キャッツの4人はぶっさんに本当にさよならを言っていない・・・・という事がやっとわかるのです。

いつも群れているようでも、知らないことも多い、今は自分の事で忙しい4人。

ぶっさんの死というものに向き合えなくて、そのままになっている4人の気持の清算とも言えるラスト。

アニが、もう、俺たちにはぶっさんは必要ないんだよ・・・・俺たち、生きてるから、だからばいばい・・・と重い事をさらりと言うシーンは、まさに、「もう、バカなことはできない年になった自分たちを自覚しはじめた・・・そしてそれぞれの青春が始まる」で、そこで映画は、きちんと完結します。

 相変わらず、周りの人々は騒がしく、今回は、うっちーの自衛隊の上司は鬼のような杉本文子(栗山千明)

うっちーを追いかけているうちに、キャッツの4人と出会い、子供子供した4人に、ふんっ。

アニが、なんで自衛隊なんです?と聞いても無視。「きっぱり無視っすかきもちいいっす~~~~」って叫ぶアニの絶妙な台詞のタイミングが好きですね。これぞ、キャッツ。そして「酒豪のくせに正論・・・反論できない」したたか女を栗山千明がうれしそうにやっていますね。

また、ものまね教室も健在、美礼先生(薬師丸ひろ子)のとんちんかんなような存在感もいいですし、オジー(古田新太)の美礼先生の一瞬の顔まね!これそっくりだったりして、一瞬しか出さない瞬間芸の連続。

 楽しく、笑いながら観ていても、ぶっさんだけでなく、自分たちの若さにばいばい!という潔さがとても気持いいです。

楽しい時間はいつまでも続かない、でも、時間はどんどん過ぎていく・・・だから前を向いていく・・・やっぱり潔いですよ。