モンゴリアン・ピンポン
モンゴリアン・ピンポン
Mongolian Ping Pong(緑草原)
2006年11月4日 渋谷 NHKみんなの広場ふれあいホールにて(第7回NHKアジア・フィルム・フェスティバル)
(2005年:中国=モンゴル:105分:監督 ニン・ハオ)
ニン・ハオ監督の映画は今年(2006年)東京国際映画祭で「Crazy Stone」を観ました。
初監督作品は、「香火」でこれは第4回(2003年)東京フィルメックスで、グランプリを受賞。この『モンゴリアン・ピンポン』は、去年の東京国際映画祭で上映されていて、私は後追いしているわけですね。
モンゴルの草原を舞台にした映画は意外と日本で人気があって、色々公開されているのですが、この映画はドキュメンタリーのような素朴な姿をちゃんとストーリーにしているところがいいと思います。
ゲルで暮らしている少年が、川に水汲みに行ったとき、川から・・・・白い玉が流れてくる。
それはピンポン球なのですが、この絵がいいです。自然の中にプラスティックの白い玉がふわふわと流れてくるのを、見つける少年という絵。
少年はそれが何かわからない。大人たちに聞いても、相手にしてくれない。仲の良い他の2人と一緒に、ピンポン球について想像をめぐらせ、たまたまテレビから聞こえた声で、「(卓球は中国にとって)国の宝です」と聞いた3人は、え。これ、国の宝なの?じゃ、北京に返しに行かなきゃ・・・・とか無邪気に考えてしまうのです。
でも、映画の視線は結構シビアなんですね。少年が夢ふくらませて大切にしている宝物を、一緒になって大人は大事にしない。
そんな余裕はない、といった生活感の出し方。少年たちは、もう、馬に乗りますが、一人だけバイクに乗っているという構図。
車に日用雑貨から電化製品から、何から何まで持って、売りに来る青年。大人や青年にあるのはまず、生活しなければ、という思いです。
少年たちも大人と一緒になって遊牧の仕事を手伝いながらも、ひとつのピンポン球に想いをはせる。
緑の草原に広がる青い空に、大きな雲。美しい絵の中で、ひとつのピンポン球をめぐるちょっとシビアな話、にしたところ、発想がとても面白いと思います。
自然、動物、遊牧などきちんと綺麗な絵にしながらも、その中心にあるのは、プラスティックの球。
子供の夢と大人の現実。草原の生活に入ってくる文明のようなもの。便利なようで不釣合いなものもありますが、とにかく町の物はいいものだ、と確信しているお父さんがちょっと脱力もの。
自然はいい、素晴らしい・・・・と賛美するだけでなく、文化生活、現代化の波を静かに描いているところが、ちょっと皮肉っぽい監督の思惑なんだろうな、と思います。