ウィンター・ソング
ウィンター・ソング
Perhaps Love(如果・愛)
2006年11月13日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて
(2005年:香港:109分:監督 ピーター・チャン)
「金城君は仕事選べないのかなぁ~」と随分昔、友人がぽつりと言いました。
そのときは、うん、そうだよねぇ~としか言えなかったのですが、やぁ、ここ数年はいい映画出てるですよ、金城武。
やっぱり金城武は、恋愛映画が似合うというか、得意というか・・・(本人、どう思っているかわからないけれど)
ナイーブな青年というイメージがまだ保てる年なんですね。そろそろどうかなぁ、と思うけれど香港俳優はあまり年関係ないから・・。
この映画は、まず、冬物語なんですね。
冬の雪、凍った川・・・そんな風景の中で、めぐり合う男女という絵がとても綺麗なんです。
映画の狂言回しになるのは、「天使」という青年。これを韓国からチ・ジニが演じていますが、天使がある町に着くと、突然そこが銀幕の世界になる、という出だしなんてなんてスムーズで美しいのだろう、と思います。
そして、映画の中のミュージカル映画で、三角関係になる男女(ジョウ・シュン、金城武、ジャッキー・チュン)と、それを演じる俳優と監督の三角関係が綺麗にだぶっている。
今は人気俳優となった孫(ジョウ・シュン)と香港から参加した人気俳優・林(金城武)は、実はかつて北京で、貧しい中出会い励ましあい、愛し合った仲なのですが、歌手志望だった孫と映画監督を目指していた林は、別れてしまう。
北京での撮影を担当したのはクリストファー・ドイル。
そしてお互い違う道を選んだつもりで10年経って、同じ俳優、共演という形で再会を果たす2人にあるのは気まずい雰囲気。
映画の中の構図どおり、今、孫は聶(ニン)監督の実生活の恋人。
サーカスのきらびやかな世界をミュージカルにした映画の中では、ブランコ乗りの少女とサーカスの団長。そして記憶をなくした少女を探し出した幼馴染の青年の三角関係の話。
団長役が降板したため、急遽、監督が団長を演じる事になりますが、監督=団長は、そんな2人の関係を見破ってしまうけれど、黙っている。
映画の中では、きらびやかな世界でも、実際は林は、まだ孫の事を忘れられず、北京の思い出を大切にしているあまり、神経質になっています。夜、眠れなくてプールの中をローブ姿で歩き回る林。
孫の方も、林と会う事を避け、でも映画ではお互い愛し合っているという演技をしなければならないストレスに悩む。
結構、話はシンプルですが、シンプルな三角関係を2つだぶらせることで奥行きのある物語にして、そしてインド映画から招いたというミュージカルの振り付け、そして歌、と大変、豪華なシーンを惜しげもなく出しています。
監督がミュージカル映画は強引だから繊細な恋愛感情は描きにくいと、語っていますが、虚と実の2つの恋愛話、どちらも繊細、神経質だったら観ていてつらいのです。あくまでもひとつの世界は、きらびやかな虚構の世界、特にミュージカルにしたという発想がいいです。
そしてそれを黙って見つめる天使役のチ・ジニがいつもとてもおだやかな表情をしています。
監督役のジャッキー・チュンはもう「歌聖」と呼ばれる大歌手であり、『小さな中国のお針子』『ハリウッド★ホンコン』のジョウ・シュンはそのクールな表情が相変わらずですが、中国では歌手としても有名。
そして金城武は、台湾時代は歌手でした。歌うのは9年ぶり・・・との話ですが、もっと歌ってもいいのになぁ、ともったいない気がしますが、他の香港明星と違ってあまりマルチな活動はしないところも、好きなんですよ。
映画の虚という世界を作る世界を映画にするって私の好きなパターンの手法なんです。
ジャッキー・チュンの堂々とした監督ぶりもいいし、試写室で、林のアップを見せて、こんな目の力が君には出せるか?と恋人でもある孫に厳しく言う。とてもファンタジックな部分と大人の部分が融合していて、単なる甘い映画にしていないところがいいですね。
映画撮影で降らせる雪と、北京の町に本当に降る雪。どちらもファンタスティック。