此岸と彼岸を結ぶ色
2018.06.05 10:41
東京都現代美術館で観たレベッカ・ホルンの作品の中に、印象的な色が在った。
私が見た彼女自身も、ほんの少しアクセントとしてその色を身に付けていた。
レオナール藤田の生んだ肌の色や、夜空に輝く月の色を乳白色と言うならば、その色は乳青色とでも言うのだろうか。
海から波のアーチが生まれ、白い泡となって岸へ打ち寄せるその一瞬、その色は姿を現す。
そう、それから皮膚に透ける血管の色。
モディリアーニの女性像の瞳にもその色を見つけた。
アーモンド型のその瞳には、一体何が映っていたのだろう。
彼女はそこにいて、そこにはいない。
水平線を撮った或る写真集の表紙の空と水面にも、その色は漂っていた。
それは記憶の予感だったのかもしれない。
その色は恐れや哀しみ、狂気さえもシルクのように滑らかな薄い膜で覆ってしまう。
そこにはもう境界線はない。
ただ静寂だけが在る。
その色は境界という時空から迷い込んだ色か。
はたまた、此岸と彼岸を結ぶ色か・・・。