【山百チャレンジ14座目 黒川鶏冠山】戦国武田氏の伝説が眠る黒川金山跡へ
山梨百名山には、同じ名前の山が二つあります。
それが「鶏冠山」
"とさかやま"と読む方が東沢渓谷の北側に屹立する山に対して、"けいかんざん"と読むのが大菩薩嶺の北側に位置する山であります。
"とさかやま"の方は山梨百名山の四天王の一つとして数えられる山で、急峻な岩峰があり技術的難易度が高い山で有名ですよね。
一方で"けいかんざん"は柳沢峠から登るのが一般的で、そのルート上に危険個所はほぼありません。
今回行ってきたのは"けいかんざん"の方の黒川鶏冠山です。
またしてもややこしいのですが、鶏冠山のすぐ近くにある黒川山と総称して黒川山・鶏冠山と表記したり、黒川鶏冠山と表記したりしています。
ここではまとめて黒川鶏冠山と記載させていただきますね。
さて書き出しからつらつらと読み方や表記の話をして、山百チャレンジ読者がページ離脱してしまったのではないかと心配なんですが、この山はその歴史についても触れておかなければいけません。(読むのめんどくさければ飛ばしてください🙇🏻)
黒川鶏冠山の東面の黒川谷源流付近には、戦国時代に武田家を支えた「黒川金山」があった場所です。
黒川金山は特に戦国期に開発された甲州金山の代表格として知られ、現在でも寺屋敷や女郎ゴー、花魁淵など金山の存在を示す地名や伝説が残る場所でもあります。
戦国武田氏の軍資金を支えたと伝説に言われる黒川金山ですが、近年は直接経営は行われていなかったと推測されているとか。
更にはいまだこの地に眠っている埋蔵金の伝説までも…嘘か誠かは別として、戦国武田氏を語るうえでは事欠かない場所の一つなんです。
さて簡単に黒川鶏冠山の説明をしましたが、歴史好き&山好きとしてこの金山跡も見てみたい!と思い、今回は黒川鶏冠山から金山跡まで谷を下りて、そこからまた柳沢峠に戻るルートを辿ってみました。
登山口の柳沢峠がすでに標高1472mもあり登りがきついわけではないですが、金山まで足を延ばせば移動距離で約15kmとロングコースとなります。
ま~た例の如く朝寝坊をしてしまい、今回も遅い時間の出発となりました😅
登山レポート本編をどうぞご覧ください!👇
【登山レポ①】柳沢峠から黒川鶏冠山
【START】柳沢峠駐車場(10:21)-六本木峠(10:59)-横手山(11:19)-黒川山(11:35)-黒川山の三角点(11:47)-鶏冠神社(11:51)
国道411号(青梅街道)の最高地点である柳沢峠は、公営駐車場にトイレ(水洗)、そして売店(柳沢峠茶屋)があるので、登山口として完璧の条件の場所ともいえるでしょう。
平日の天気がいまいちな日なのにその公営駐車場には車が台ほど停まっていました。
大きなカメラを持って歩く人が多かったので、野鳥や景色の撮影スポットが近くにあるのかもしれません。
黒川鶏冠山へのルートは駐車場から道路を渡ってすぐのこの階段から始まります。
金山跡まで足を延ばすというのに既に時刻は10時半、急いで行きましょう。
登山道に入れば早速ブナやミズナラの自然林が広がる歩きやすいコースとなります。
ここは東京都水道局が水道水源林として管理している森林帯で、「ブナのみち」としてハイキングコースとして整備されています。
雲取山や三頭山など東京都が管理している登山道というのは、正直言って山梨の一般的な登山道よりきれいに整備されているんですよね🤔
持続可能な登山道整備というのも一筋縄ではいかないと思いますが、その点東京都はさすがだなと言わざるを得ません。
すぐにシカの食害防止柵に突き当たります。
話は逸れますが、野生のシカは絶滅したと考えられていた茨城県。そんな唯一のシカ無し県で、近年シカが出没し始めているというニュースを見ました。
見た目はかわいいんですけど、農業や林業、そして花の食害など、増えすぎたため害獣として扱われているニホンジカ。
北岳など南アルプスの高山域にも出没して花の被害を広げていますが、その抜本的な解決の道筋は立っていないようです。
ブナだけでなくカエデやダケカンバなど、多様な自然林が残されている柳沢峠。
新緑、紅葉の時期はさぞ綺麗なんでしょうね。
二回目の防止柵を越えれば、本格的な山道になるかと思いきや、標高はほぼ上げないまま斜面を縫う用に付けられたトラバース道を歩いていきます。
苔むした場所もあり、柳沢峠の山はこんなにも活き活きして美しいのかと序盤から感動していました。
金山のことばかり頭にあり登る季節は考えていませんでしたが、もう一月遅らせれば新緑がきれいだっただろうなと少し後悔。
しばらくして六本木峠に到着。
この分岐から黒川鶏冠山方面と大菩薩嶺に繋がる丸川峠への道に分かれます。
六本木峠から丸川峠は繋いで歩いたことが無いので、この道もいつかは行ってみたいですね。
南の方向に時折見える山がこの時は分からなかったのですが、多分大菩薩嶺だと思います。
あまり見慣れない角度なのでこの時は全く見当つかなかったです。
林道を横断する場所もありますが、基本的に標識が付いているので山頂までは迷う事は無いでしょう。
それにしても尾根に道を付けず、山腹をトラバースするように付けられた登山道がひたすら続きます。
歩きやすくて有難いのですが、だんだん飽きてくるんですよね~😑
奥秩父山塊ってこんな道が多いと思うのですが、僕の気のせいでしょうか。
次の分岐が横手山峠の分岐に当たります。
ここから黒川金山跡に向かう道がありますが、その道は帰りに使用したいと思います。
さあここから黒川鶏冠山までガツンと登りましょう!
柳沢峠から黒川鶏冠山までのルートで最も標高を挙げる区間でなので、水分補給して出発です。
登りは続きますが、ま~たトラバースさせながらじんわり登らせてくれました(笑)
この登山道、登山者にめちゃくちゃ優しくできてます。さすが東京都(水道局)!
鶏冠山(黒川山)と表記された分岐に到着です。
すぐ上に黒川山の三角点がありますが、まずは見晴らし台まで行ってみます!
この山行最初で最後の尾根歩きゾーンです(笑)
見晴らし台まではそこまで遠くないので、時間があれば行ってみてください。
この岩場を登れば
奥秩父山塊のを見るのに絶好の展望台となっていました!
甲武信岳や雁坂峠がよく見えます。
南に目をやると大菩薩嶺の展望ですが、ここからは木々の間から見える程度です。
この場所が地理院地図で鶏冠山(黒川山)と記された場所ですが、ここに山梨百名山の標柱はありません。
標柱の置いてある鶏冠神社へ向かう前に、三角点にタッチ
三等三角点、基準点名「黒川」です。
黒川鶏冠山の分岐から鶏冠神社へ向かうまでに、木々の間から鶏冠山が垣間見えました。
岩壁が露出しギザギザしていて、鶏冠の名前にふさわしい山容です。
鶏冠神社までは今までの歩きやすい登山道からうって変わって、岩や木の根が露出した痩せ尾根の登山道を行きます。
この区間は距離は短いですが、気を付けて歩きましょう!
最後の岩場をぐるっと回りこめば
黒川鶏冠山(1,716m)に到着です!
柳沢峠からここまで約1時間30分の行程でした。
山頂の祠があるこの場所が、黒川鶏冠神社の奥宮にあたります。
調べてみれば黒川金山の守護神である鉱山の神が祭られているとの事で、やはり黒川金山とのつながりが深い場所のようです。
鶏冠山山頂からは、黒川山の展望台よりも南側の展望が開けていて、大菩薩嶺がよく見えます。
三角錐形の大菩薩嶺はやはり馴染みが無く、この角度から見る新鮮な大菩薩嶺にテンションが上がりましたね~👏
さてこの大菩薩嶺の写真の下側、谷へ下りて黒川金山へこれから向かいます!
【登山レポ②】黒川金山跡へ
鶏冠神社(12:07)-立岩沢(12:23)-寺屋敷尾根(12:30)-ノゾキノタワ(12:38)-黒川金山跡(12:50)-立岩沢(13:37)-横手山峠(14:15)-六本木峠(14:42)-柳沢峠駐車場(15:09)
黙々と一人で歩いて到着した黒川鶏冠山。
山頂で休憩を取っていると妙に冷たい風にあたり、さらにこれから人にまず会う事の無い金山跡の谷間で下ると考えると…少し背筋がぞくっとしてきました
花魁淵(おいらんぶち)の話などは知っていたので、何だか妙にビビってきたけどブログネタが欲しい一心で意を決して向かいます!
黒川山の分岐まで戻る前に、黒川金山跡へ向かう分岐があります。
(急な下り坂あり)という通り、目的の金山跡は標高約1240mと登山口の柳沢峠よりも250m近く標高の低い場所になります。
登り返しを思うと今から億劫な気持ちに、、
入る登山者は少ない道でしょうが、ピンクテープはしっかりありましたよ。
すぐに落ち葉に埋もれた沢道を一気に下りていくセクションがやってきます。
道は九十九折についているんですが、落ち葉で訳が分かりません
落ち葉の下には石があったりするので、捻挫しないように慎重に下りていきます。
上から見ればわかりにくいのですが、九十九折の道には石垣が組まれているのでこれを目印に歩いていきましょう。
一気に200mほど標高を下げれば、立岩沢の分岐に到着です。
この分岐から黒川金山跡方面へ、帰りはここに戻り柳沢峠方面の道を使います。
黒川鶏冠山までの道とは違い、倒木が道を塞いでいる場面も。
比較的歩きやすいですが、やはり金山跡方面の道はあまり手が加えられていない模様です。
ず~と背筋が寒いなか歩いていたので、時折現れるツツジの花には癒され助けられました。
別に心霊スポットに行くわけでもないんですが、誰かと行けばまた違った心持になれたのでしょう。
近づくにつれて黒川金山に由来するスポットがいくつか見ることができます。
"ノゾキのタワ"からはまた一気に黒川谷へ下っていきます。
「黒川金山上」の分岐からは黒川金山循環歩道という金山の遺構を見ることができるコースがあるのですが、安全上の理由でしょうか、この周回ルートには鎖が張られていました。
なのでこのまま金山跡までまっすぐ下りるしかありません。
黒川金山上分岐から更に下ります。
分岐から金山跡まではあとわずかですが、この区間も落ち葉が多く踏み跡も少ないためコース取りが分かりにくいです。
鶏冠神社から約一時間、黒川谷の沢に桟橋が架かったこの場所こそ黒川金山跡になります。
標高の差や条件もあるのでしょう、柳沢峠とは違い金山跡は沢に苔むした橋、そして新緑に包まれた神秘的な場所となっていました。
金山跡のイメージとは違い静かなこの場所は、この山の自然本来の姿なのでしょう。
この場所で辺りを見渡し少し歩き回ってみましたが、坑道入口は見当たりませんでした。
少し古いブログなどでは閉鎖されている坑口の写真が上がっていますが、お目当てはの坑道入口はこの場所では無かったようです。
封鎖された巡視路の方にあるのかもしれません、詳しい方がいれば教えていただきたいです!
「黒川千軒」と言い伝えられる鉱山町は、この谷に沿って上下 600m、最大幅300mに及ぶ規模だったといわれ、最盛期には千人近い居住者がいたとのこと。
土留の石垣は黒川千軒の実態を知る、残された数少ない遺構のひとつです。
こんな深山で、さらに女郎も抱えながら鉱山町を作り上げていたというのは、僕の想像力では信じられず栄えたイメージが湧きませんでした。
とはいえ400年以上の時を経て、本来の自然の姿に戻っているこの場所は、どうぞそのままでと願うばかりです。
さてお目当ての金山跡を後にし、急いで柳沢峠へ向かいます。
立岩沢の分岐から横手山峠方面のトラバース道を通ります。
特に特筆することのない道なんですが、ある場所でこの日一番背筋がぞくっとした場所を通りました。
それは"浮いている橋"です
写真では分かりにくいのですが、上部の沢の崩落により、土台となる橋の足が完全に浮いてました、、😱
信頼できない人工物ほど山で怖いものはありません(持論)
横手山分岐まではこのように崩落している沢のトラバースがありますので、修復の手が入らないのであれば近いうちにこの道も閉鎖されるかもしれません。
肝を冷やしたトラバース道を2kmほど進み、横手山分岐に帰ってきました。
ここからは登山レポ①の道に復帰して柳沢峠へ帰ります。
帰路には少し雨に打たれながら、柳沢峠へ戻って行きました。
4月下旬とはいえ山は呼気が白くなるほど寒くなり、帰ってからしばらくは風邪っぽい症状が出てしまいました。
寒さのせいか、それとも黒川金山の"何か"にあてられたか
いずれにせよこの黒川鶏冠山を訪れる事が有れば、金山の歴史に詳しい人と複数人で行きたいと思った歴史探訪トレッキングでした。
黒川鶏冠山 立ち寄りスポット
登山口の柳沢峠へ戻ってから、立ち寄る場所とすればここしかないでしょう。
柳沢峠茶屋
「峠の麦とろめし」が名物のお茶屋さんで、蕎麦やソフトクリームなどの提供、お土産品の販売をしています。
ドライブ、ツーリングの際の休憩スポットとしても活用されている場所です。
自転車この峠を登って来て入店した人向けに、天然水の給水を無料でも行っているそうです。
麦とろご飯が大好物の私は、下山するや否やすぐに立ち寄りましたが…
既に時刻は15時半と、ご飯提供が終わってしまったとの事でした
必ず山梨百名山チャレンジ企画が終わる今年中に再訪し、麦とろご飯の写真をこちらでアップします!
やっぱり山は朝早く登らなきゃダメですね(笑)
黒川鶏冠山まとめ
【今回の山行記録】
山行時間:04:50 距離:15.0 km
登り:823 m 下り:823 m
【標準コースタイム(目安) 6時間15分】
(往路)柳沢峠駐車場ー0:45ー六本木峠ー0:35ー横手山峠ー0:35ー黒川山ー0:10ー鶏冠神社(鶏冠山)ー0:35ー立岩沢分岐ー0:40ー黒川金山跡
(帰路)黒川金山跡ー0:50ー立岩沢分岐ー0:50ー横手山峠ー0:35ー六本木峠ー0:40ー柳沢峠駐車場
※柳沢峠から黒川鶏冠山へのピストンの場合のコースタイムは、約4時間。
【アクセス(柳沢峠)】
・車
奥多摩湖から、山梨県甲州市塩山に抜ける国道411号線(青梅街道)の最高地点。
奥多摩湖からは車で約50分、甲州市へは約30分。
・公共交通機関
中央線塩山駅よりタクシーで約30分
【アドバイス】
登山口の柳沢峠はトイレも自動販売機もあり。
柳沢峠から黒川鶏冠山までの道は、緩やかで歩きやすい道となるが、距離はあるのでゆっくり歩いていると時間はかかる道である。
黒川金山跡への道はピンクテープはあるが踏み跡も少なくなり、落ち葉で登山道も埋もれている箇所も多い。
立岩沢分岐から横手山峠分岐までの道は、本編でも記されている通り、沢の崩落によって架けられた橋が不安定となるため要注意。不安な場合は黒川鶏冠山まで登り返した方が無難。
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活用方法はジオグラフィカなどで活用していただけます。
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