読売新聞全国版 2023年3月1日付
読売新聞 2023年3月1日付
の全国版で、愛媛のこれからのスケート事情を記事として取り上げていただきました。
愛媛唯一のリンク 閉鎖へ
四国の冬スポーツ 岐路
アイホの受け皿
ある日曜日の朝、アイススケートリンクに「カーン」と甲高い音が響いていた。
愛媛県内で唯一のアイスホッケージュニアチーム「松山オレンジホーネッツ」の練習が始まった。松山市の中学2年生、寺田幸鐘さん(14)は「連携プレーが決まるとうれしい。高校や大学でも続けたい」と笑顔で汗をぬぐった。
チームは1970年代に発足し、現在は小中高の役60人が所属。県内の中学や高校にアイスホッケー部がないため、受け皿の役目を果たしてきた。しかし、昨年、活動拠点にしている県内たった一つのリンク「イヨテツスポーツセンター」(松山市)が2027年1月をめどに営業を終えると、運営事業者が発表した。
消える練習拠点
温暖な四国にとって、同センターは貴重な存在。フィギュアスケート男子で、昨年の全日本選手権2位の島田高志郎(木下ク)が幼少期に通った。スピードスケート女子で、18、22年冬季五輪出場の郷亜里砂さんも、現役時代に県の専門員として足を運び、普及活動に携わった。
4年後の閉鎖は、施設の老朽化や利用者の減少が理由。同センターの運営事業者が開催しているクラブや教室は廃止となる見込みだ。松山オレンジホーネッツは活動を続ける方向だが、藤田直人代表(48)は「毎年(施設の存続が)厳しいと言われ、ついにという感じ。体験教室で興味を持ってくれても、『練習は県外になります』では来てもらえない」と漏らす。4年後を待たずに今、子どもたちの関心が急速に薄れてしまうかもしれないと、不安も抱えている。
今年度、県の補助制度などを活用して、氷上に近い感覚で滑れる樹脂製パネルを購入した。パネルを室内に敷くと「疑似リンク」を体験できる。個人的な補助練習になる程度の工夫でも、子どもたちが意欲を保つために役立つはずだと考えた。
行政の協力期待
また、藤田代表や関係者は2月に入ってリンク新設を求める署名活動を始め、すでに県内外の約60の企業や団体から賛同を得た。福岡市で21年に休業した民間の通年型リンクが、行政の支援などで今春、再びオープンする事例があり、藤田代表らも愛媛県や松山市などの協力に期待を寄せる。
文部科学省の統計によると、1985年度に全国で900を超えていたアイススケート場は、2018年度に216施設まで減った。スポーツ環境の悪化は、子どもから確実に運動の機会を奪う。藤田代表は「冬季競技だけの問題ではない。知恵を出し合い、真剣に取り組まないといけない」と話している。