印象派革命8-ガムランとドビュッシー
2023.05.06 12:11
パリ万博では、やはり植民地コーナーが設けられ、現地の生活や文化が紹介されていた。そこで衝撃を受けたのが音楽家ドビュッシーである。彼はジャワのガムラン音楽に「パレストリーナの対位法など児戯れに等しい一種の対位法」を聴くのである。そして「我々の打楽器の音など場末の野蛮な音にすぎない」とまでいう。
しかし主流の音楽家は全くの反対、大御所のサン=サーンスなどは、べトナムの舞踊に「喉を斬られた獣のうめき声」と酷評をする。ところがドビュッシーは、バイロイトと比較できる」というほどの評価を与えるのである。
彼はこれを機にワグナーのロマン派音楽から離れ、ガムランの神秘的な響きを取り入れた音楽を作曲していく。その影響が顕著に出ているのが、1893年に作曲されたピアノ曲集「版画」の中の「塔」という作品である。タイトルの「版画」というのは「浮世絵」塔というのは仏教の「パゴダ」を意味している。
この頃になると、オリエンタリズムやジャポニズムはパリを中心としてヨーロッパを席巻しつつあった。そして西洋芸術はそれを取り入れて新たな領域を創造する。西洋モダニズムの集大成といえるパリ万博から、反モダニズムが始まったのはなかなか興味深いことである。