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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

『英語を読むこと』と『英語論文を読むこと』は少し違います。英会話に関して思うことも少し書きます⑤

2018.06.06 14:14

こんばんは。夢のまち訪問看護リハビリステーション 都賀の理学療法士の倉形です。

今日は、この話題に関して最終回です(やっと)。

最後に、システマティック・レビューと、レビューの違いと全体のまとめを書きます。

システマティック・レビューと、レビュー、・・・ ・・・・名前は似ています。

でも、エビデンスのレベルとしては、かなり違います。 ネットから拾ってきた『エビデンスピラミッド』の図を載せます。(出展の記載もあるし、著作権は大丈夫であろうという希望的観測のもと)

システマティック・レビューはエビデンスレベル1です。一方レビューはレベル6です(レビューは、論説とか総論とも呼ばれます。)。なぜこんなに違うかというと、二つの作られ方を比べればわかります。

 まず、システマティックレビューは、・・・・ 

  ①どのように論文を検索したか?

  ②どういう基準で論文を採用したか(不採用にしたか)?

  ③採用した論文をそれぞれどのように重み付けしたか?

  ④その結果、どのような結論に達したか?  

という内容が詳細に記載されます。結論までの流れがオープンになっているので、もしどこかがおかしければ、他の科学者から『ちょっと、ちょっと』とツッコミが入るので、突拍子のないことは書けないのです。

 一方で、レビューは簡単に言えば、エキスパートの個人的な意見です。作成にあたっても、決まった手続きというか手順はなく、極端に言えば、著者が好きな論文を引っ張ってくることができます。したがって、著者の主張をサポートするような論文だけをピックアップして、それが正しいかのように書くことも可能です。長くその分野でリーダシップ的なポジションを担ってきた方の頭の中を覗くという意味ではこのレビューも面白いですが、臨床での役立ち度という点では、大いに疑問があります。

 そして、残念というか心配なのは、若い理学療法士が定期的に読むことが最も多いであろう雑誌、『PTジャーナル』と『理学療法』に掲載されている記事のほとんどがレビューであるということです。どの分野も書く人間がある程度決まっていて、科学的にみるとバランスを欠いている記事も多いです。この二つの雑誌が主な勉強ツールだという理学療法士もいると思います。確かに、何も読まない(勉強しない)よりは遥かに良いです。しかし、エキスパートの意見を鵜呑みにし過ぎないで欲しいな~といつも思います。

 最期にまとめると、『英語を読む』と『英語論文を読む』ことは下記のような違いがあります。

 1.『英語を読む』のに必要な知識は英語の知識(当たり前ですが( ;∀;))

 2.『英語論文を読む』のには英語の知識に加え、研究デザイン、統計の知識が必要です。

 ただ、最後にもう一度強調したいのは、難しく考えすぎないで、とりあえず何かを読んでみて欲しいです。『研究デザイン、統計の知識が必要』とか書きましたが、各自が全てにおいて詳しい必要はないと思います。なぜならば、ある程度以上の雑誌には『査読』というものがあるからです。

 査読というのは、雑誌が査読者という、一般的にはその分野のエキスパートとされる科学者達に投稿された論文の評価を依頼するものです。その評価によって、投稿された雑誌を実際に雑誌に掲載するか否かが決まります。これにより、研究デザインのレベルの低いもの、明らかに統計処理の方法が間違っているものなどは査読の段階ではじかれてしまうため、我々が目にすることはありません。

というように、知識に穴があっても、的を外さずに情報収集するための色々な仕組みがあります。ですので、ベイビーステップでもいいので、始めてみることが大切なのではないかと思います。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。

  理学療法士  倉形裕史