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KAWASAKI 750SS MachIV 1971

2018.06.07 10:46

KAWASAKI 750SS MachIV 1971y 

(リード)

エポック・メイキングなデビューを飾ったマッハIIIの登場からわずか2年後の1971年10月、マッハ・シリ-ズ第3弾として、最大排気量のマッハIV(H2)がデビュー。500SSを超える世界最速の市販車として話題を呼んだ。国内名称は750SS。同年4月に登場した350SSと同様、リアカウルが与えられている点が、500SSとの大きな違いだ。右1本、左2に振り分けられたマフラーの変則レイアウトはマッハシリーズ共通の特徴。空冷2サイクル5ポ-ト・ピストンリードバルブ3気筒エンジン、120度組立式クランクのパワーユニットは、量産車最高の74ps/6、800rpmを発生する。0→400m加速12秒フラットは当時の市販車世界一のスペックを誇っていた。

(本文)

 圧倒的なパワ-と軽量な車体。ビッグマシンながら軽い取りまわしを武器に予想通りの人気を得た750SSだが、このマシンの素晴らしさは、トータルバランスの向上にあった。すべての面において500SSを上回る性能が与えられていた。

 増大したトルクは、シビアだった出力特性をややマイルドに改善し、フロントまわりの剛性感も落ち着いたものになっていた。ブレーキに関しても、操作性・制動力共にバランスに優れた高精度のものが与えられ、信頼性が大幅に増すなど、改良点は細部にまで至る十二分な内容を誇っていた。

 また、目に見えないところでも、点火方式を従来のバッテリー点火から、ACジェネレ-タ-装備のCDIマグネット方式に転換。ディストリービュータの代わりに、3個のセンサーとCDIユニットが設けられており、良好な始動性はさらに確実なものとなった。尚、潤滑はシリンダ-/クランクへの2系統分離給油を採用。手動式のチェ-ン給油装置も装備する。

 増大したパワーに見合うよう、ギアボックスを強化。500SSで離れすぎていたと思われるギア比も見直し、1速を2.20→2.17、2速を1.40→1.47、3速を1.09→1.11へと変更。4速(0.92)と5速(0.81)は同じに設定している。1速が上がり、2速3速が下げられたことで、シフトのつながりが向上。但し、350SS/250SSに採用された1ダウン4アップのシフトの採用は見送りされたままで、マッハファンを嘆かせる部分もあった。

 最強・最速のスペックをひっさげた750SSの登場で、2サイクルビッグスポーツモデルのさらなる可能性を示唆するかに思えたマッハ・シリーズだったが、時代は急速な転回で変異を見せ始めていた。性能本位の考え方から、公害対策や果てはエネルギー問題と、技術的な発展を社会性にまで拡大して配慮を求める声が高まってきていた。それは、今後のマッハ・シリーズの発展に、やがて影を落とす結果となることを暗示しているかのようでもあった。

 750SS 1973グラフィックの変更とメッキフェンダ-が採用されたマイナ-チェンジモデル。国内向けには最終型(1973年7月)となり、輸出向けにグラフィック、タイヤ等の小変更を施し’7 5年まで生産を続ける。圧倒的な出力と斬新なフォルムで築いた“マッハシリ-ズ”の頂点に立つモデルだけに、シリ-ズそのものの行く末を懸念する声も上がっていた。既にDO HC4サイクル4気筒(Z1/1972年6月)は、海外でその産声を上げ、国内ではゼッツ-が大反響を巻き起こしていた頃でもあった。