ネット通販を利用して中国で商品を販売するときの商標トラブル
中国に販売拠点をもたなくても中国の巨大市場にアクセスすることができる中国向けのインターネット通販が人気です.
中国に販売拠点を置いて商品を販売するときは中国で商標登録をします.
中国の個人相手に直接、日本から商品を輸出するだけだから、中国で商標を登録する必要はない、と考えて中国で商標登録をしない人も少なくありません.
この場合、中国へ輸出する商品の商標を、第三者が中国で登録したらどうなるでしょうか.
商標と個人輸入
中国で商標を登録した第三者は、商標権に基づいて日本から中国に輸入される商品の輸入差止めを中国税関に申し立てるかもしれません.
輸入差止めが申し立てられたからと言って、個人で輸入する小口の貨物には商標権の効力は及びません.
しかし輸入差止めが申し立てられた税関の職員は、それが個人輸入であるかどうかを判断することができません.
貨物の通関を一旦保留し、輸入者から意見を聞いてから個人輸入かどうかを判断します.
個人輸入であることを輸入者が主張立証できなければ通関はできません.
個人輸入を理由に商標権の侵害に該当しないと税関が判断するのは、個人輸入であることの証明に成功してからです.
中国海関法第28条 個人が携帯して出入国する手荷物物品、郵送で出入国する物品は、自己使用のもので、適正な数量を限度とし、かつ税関の監督管理をうけなければならない
通関トラブル
日本と違って中国の行政職員は決して親しみやすいとは言えません.
税関に行くのが面倒、税関に行く時間がない、など、諸般の事情で手続きを放棄する人もいるでしょう.
個人輸入であることを説明しても税関が認めてくれないこともあるでしょう.
通関トラブルが続けば、その評判は微博を通じて拡散します.
通関リスクのある商品を買う中国人はいなくなるでしょう.
インターネット通販であっても中国で商標を登録しておく方が安心です.
商標登録マークRの扱い
中国商標法には、商品、商品の包装、使用説明書などに「登録商標」の文字や、登録商標の右上または右下に登録記号(Rマーク(®)又は注マーク(㊟)を表記することが規定されています.
必ず「登録商標」や登録記号を表記しなければならない訳ではありません.
しかし、登録された商標であることを表記することで、無断で使用しようとする人に対して警告として機能させることができます.
「登録商標」や登録記号は商標が登録されたあとでなければ表記することができません.
登録されていない商標に対して表記すると、登録商標の虚偽表示になり警告や罰金が科されるので注意してください.
登録記号が表記された商品を中国に輸入する場合には注意が必要です.
例えば、アメリカで登録された商標に®を表記してアメリカで商品を製造し、その商品を中国に輸入する場合を説明します.
アメリカで登録された商標に®を表記することはアメリカ国内では合法です.
ところが、その商標が中国で登録されていない場合、商標に®を表記した商品を中国国内で販売すると中国の商標法に違反します.
逆に中国で製造した商品をアメリカに輸出する場合、アメリカでは登録商標であることを示す®の表記がないと、商標権が侵害された場合に損害賠償を請求できないことになっています.
商品を輸出したり輸入する場合は商標の扱いに注意しましょう.