中国流ビジネスは日本の法律に抵触する
中国の街を歩いていると一般市民が公安と口論をしているところを良く見かけます.
中国の公安と聞くと、権力を振りかざして、反抗すればすぐにでも連行されそうな印象があります.
それにも関わらず公安を相手に一歩も引かない市民をみかけます.
なかには複数の公安を相手に立ち振る舞う勇敢な市民もいます.
日本では見られない光景ですが、なぜここまで反抗するのか.
中国は人治主義?
中国は人治主義の国と言われています.
有力者や権力者の裁量で全てが決定される国です.
しかし法治主義という点から中国をみると、最近の中国は頻繁に法改正が行われています.
人治主義の国で法整備をしたところで、意味がないと思うかもしれません.
一体、中国は人治主義なのか、それとも法治主義なのか.
中国は法治主義でもある
公安に必死で抵抗する市民の行動は、人治主義であり法治主義でもある中国の今の姿を映し出しています.
例えば、交通違反と判断されると、その場で、ハンディ端末から違反データが入力されます.
ここで違反データが入力されたら最後、必ず処分を受けることになります.
あとから違反データを改ざんしたり消去したり、便宜を図ってもらい罰則を免れることは、今の中国では非常に難しくなっています.
法律手続きに入る前の段階、つまり違反データが入力される前の段階は、黒でもなく白でもないグレーの段階です.
グレーの段階では、黒か白かを公安職員の広い裁量で決めることができます.
この段階で、違反をしていないということをアピールしたり、◯◯という権力者の友人だ、公安の△△と友人だ、ということをアピールしたり、さらには、タバコを分けあって仲間意識を醸成しようとしたりします.
ここで公安の琴線に触れれば見逃してもらうことができるわけです.
人治主義であることが功を奏したわけです.
トラブルがおこる前は人治主義、トラブルがおきたあとは法治主義の中国ビジネス
中国でビジネスをしていれば、叩けば「ホコリ」が必ずでてきます.
検査と称して公安が突然現れ、ここで「ホコリ」が見つかってしまうと、あとは法律手続きに従わざるを得ません.
有力者や権力者のコネを利用しても、一度、記録されてしまった「ホコリ」を消すことはできません.
多かれ少なかれ何らかの処分を受けることになります.
しかし、有力者や権力者のコネを使って人治主義を利用すれば、公安が検査に来ないようにすることや、検査に来ても「ホコリ」を見て見ぬふりをさせることができます.
「ホコリ」が記録される前のグレーの段階で穏便に処理することができるのです.
内資企業に比べて有力者や権力者のコネがない外資企業は、人治主義を利用することが得意ではありません.
「ホコリ」が記録されてしまった後に、急いで有力者や権力者を探して便宜を図ってもらおうとします.
残念ながら今の中国では、そのような便宜は通用しません.
中国では地方政府との折衝を円滑に進めるために接待や金銭の授受が行われるのが普通なのです.
トラブルがおこる前は人治主義、トラブルがおきたあとは法治主義、これが中国ビジネスです.
中国流ビジネスは日本の法律に抵触する
例えば、中国で飲食店を開業する場合には衛生許可が消防許可が必要になります.
ところが地方政府の役人の中には正当な理由もなく許可を出し渋ります.
また毎月申告する税務内容について税務局の職員が異議を唱えてきたり、税関が貨物を通関してくれない場合もあります.
このような場合に、安易に職員に金銭を授受したり接待をしたりすると、日本の不正競争防止法に規定する外国公務員贈賄罪が適用される可能性があります.
第十八条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)
何人も,外国公務員等に対し,国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために,その外国公務員等に,その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと,又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として,金銭その他の利益を供与し,又はその申込み若しくは約束をしてはならない。
罰則の内容は、個人に対して5年以下の懲役または500万円以下の罰金、さらに会社に対して3億円以下の罰金です。
企業のコンプライアンスの意識が高い日本企業は贈収賄に消極的でも、現地の中国人やコンサルタントのなかには積極的に贈収を奨励してくることがあります.
確かに贈収賄により短期的には手続きが円滑に進むかもしれません。
一度、贈収賄で解決した企業の担当者は、次回もその方法を使ってトラブルを解決しようとしますが、何れ露呈します.
政府の汚職防止が重点課題の最近の中国では贈収賄の取り締まりも厳しくなっています.
時間と費用がかかっても正式な手続きを以て解決することが最終的には企業の利益になります。
外国公務員収賄防止指針が頻繁に改定されています.
海外でビジネスをする前に一度目を通しておきましょう.