税関輸入差止めの実績をみるとシンガポールは要注意
今年上半期の税関輸入差止め実績が発表された。
コロナの影響で通関がまともに機能していないにもかかわらずの実績である。
中国税関が2月3月の通関をストップしていたので、上半期は前年対比で半分位の実績を予想していた。
差止点数がかなり減ったのは、そのような理由だろう。
最近の傾向はEMS等を利用した小口輸入と、個人輸入を装った商業輸入。
実際に件数ベースでは前年比を上回っており、通関がまともに機能していら点数ベースでも前年を上回っていたかもしれない。
仕出国をみると中国が圧倒的であるのは例年と変わらないのだが、構成比は年々減少しており、代わって香港、ベトナム、シンガポールや韓国、台湾の伸びが著しい。
香港は一見、知財の優等生に見えるが、最近は中国税関の輸出通関が厳しくなり、香港でインボイスチェンジを行い輸出されるケースが多いことが理由だろう。
工場が多い深センで製造された製品は取り締まりが厳しい広州税関よりも香港税関を経由して輸出されることが多い。
ベトナムはチャイナプラスワンの影響で中国の工場の移転先ナンバーワン。
ベトナムに工場を移転するのは外資だけではなく、中国資本の工場も積極的に進出している。
ベトナム製造とはいえ経営者は中国であり、税関機能が脆弱なこともあり模倣品の輸出を抑えきれていない。
シンガポールは昔からの中継港であり、ここで貨物を積み替えて世界中に輸出されるわけだが、シンガポールのインボイスで日本に輸出される件数が増えているのがここ最近の特徴。
シンガポールは知財にも力を入れており、ASEANのIPハブを謳っているのだが、税関は機能していない。
ベトナムやタイで商標権などを登録する企業は多いがわずか数百万人のシンガポールで知財権を取得する企業は圧倒的に少ない。
シンガポールやUAEなどの中継国で水際対策のために商標権を取得しておく必要がある。
台湾、韓国は構成比では増えているが、これは中国の構成比が下がっていることも理由の一つ。
台湾、韓国の事情が特別変わったという訳ではない。
件数・点数とも中国仕出しが圧倒的に多いのであるが、日本と違って中国税関は横の繋がりがなく、税関によって厳しいいところと、適当なところがある。
インタビューをしたところ、広州、上海、北京、天津の税関はかなり厳しいようだ。
これらの税関で通関できない荷物が例えば大連を迂回して輸出されるのだが、中国国内の事業者も通関確保に必死なのである。