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誰がどのように「似ている」を判断するのか

2022.03.19 07:30


 


キャラクタの著作権、ロゴマークの商標権、デザインの意匠権、技術の特許権.


知的財産権の侵害を判断するときにしばしば耳にする「似ている」という言葉.


「似ている」と判断されれば侵害となってしまうだけに、客観的かつ慎重に判断したいところです.


ところが「似ている」のかどうかを判断することは、知的財産権の専門家でもとても難しいことなのです.


 


専門家でも難しい「似ている」の判断.


どのように判断されるかを知っておくだけでも、他人の権利を侵害したり、誤って他人に権利の侵害だと主張してしまうことを防ぐことができます.


そして誰が「似ている」を判断するのかも知っておく必要があります.


「似ている」という言葉は主観的です.


同じモノなのに「似ている」の判断に違いがでる理由は一体、何なのでしょう.


 


それでは知的財産権の「似ている」を説明していきます.


 


「似ている」発明


特許は発明と言われる技術的なアイデアを保護する知的財産権です.


「似ている」を判断するときも技術的な理解と解釈に基いて判断します.


高度な技術を理解し、技術的な違いが何かを特定し、その違いが技術的に「似ている」のかどうかを判断します.


知的財産権の世界でも最も高度な判断が求められるのは特許の世界です.


 


「似ている」商標


商標は文字や記号などのロゴマークを保護する知的財産権です.


「似ている」を判断するときはロゴマークが登録されている商標の区分と、ロゴマークの見た目・呼び方・連想で判断します.


 


商標の区分とは、商品やサービスに応じて分類された1から45までの区分のことです.


見た目とは、ロゴマークの外観、呼び方とはロゴマークの発音、連想とはロゴマークを見たり聞いたりしたときに連想するものです.


見た目と呼び方と連想を総合的に判断して「似ている」のかどうかを判断します.


 


「似ている」意匠


意匠はモノの外観を保護する知的財産権です.


「似ている」を判断するときはモノの種類とモノの見た目で判断します.


 


意匠も商標と同じようにモノに応じて分類されています.


例えばミニカーのデザインとクルマのデザインが似ていても、ミニカーとクルマとではモノの分類が違うので意匠法上「似ている」と判断されることはありません.


 


「似ている」著作物


著作権は音楽・文章・図形などで表現されたコンテンツを保護する知的財産権です.


「似ている」を判断するときは表現の仕方で判断します.


 


他の知的財産権と違って著作権の世界で「似ている」を判断するときに大切なことがあります.


それは人のコンテンツを真似したかどうかです.


言い換えると、表現の仕方が似ていても、他人のコンテンツを真似したのではなく、自分で考えたコンテンツであれば、例え表現の仕方が似ていても著作権の侵害と判断されることはありません.


 


不正競争防止法


他の知的財産権は権利というものが存在しますが、不正競争防止法の世界では権利というものが存在しなくても不正行為を防止することで知的財産を保護します.


 


ロゴマークが商標登録されていない商品やロゴマークがついていない他人の商品を真似した場合、商標権の侵害にはならなくても不正行為として不正競争防止法が適用されることがあります.


 


不正行為かどうか判断するときに他人の商品と「似ている」かどうかを判断します.


「似ている」と判断する方法は、商標や意匠のときと共通します.


 


なぜ専門家の「似ている」はずれているのか


世間の多くの人たちが「似ている」と判断したのに対して、専門家が「似ていない」と判断することがあります.


例えばデザインの専門家は日頃から多くのデザインに接しています.


このためデザインの細部にも目が行き届き、それこそ兎の毛程の違いをも識別できる目利き力を身につけています.


 


侵害鑑定を業とする弁理士という専門家は、対象となる2つの技術やデザインを仔細に検討して類否判断をします.


世間では同じように思われる技術やデザインを似ていないと判断することは決して珍しくありませ.


 


商標の世界でも、似ていると思うロゴデザインが多く登録されています.


似ていると思うロゴデザインも、特許庁審査官という専門家は「似ていない」と判断して商標登録を認めています.


 


専門家ではなくても、ルイヴィトンやエルメスなどの著名ブランドのロゴデザインを知っている人は、似たようなロゴデザインの細部の少しの違いにも敏感に反応します.


そして、2つのロゴデザインは似ていないと判断することができてしまいます.


 


世間一般の人たちが「似ている」と判断しているのに、専門家が「似ていない」と判断してしまうのは仕方がないことでもあります.