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特許の取得は目的ではなく手段に過ぎない

2021.11.14 00:24

企業経営にとって、特許の取得は、例えば、他社の排除、ライセンス、技術防衛、プレステージという目標を達成するための一つの手段に過ぎません。


ところが特許の取得が簡単ではなく手続き自体も複雑であるため、特許を取得することに価値があるという思い込みが、特許の取得を手段から目的に昇華させてしまうことがあります。


 


特許の取得は他社の排除等の目的を達成するための一つの手段に過ぎないのであれば、その目的を達成するためには、特許ではなく意匠でも良いわけで、さらに言えば、権利の取得自体が不要というような場合もあります。


 


目的と手段をはっきりさせないと、意匠は駄目で何が何でも特許という特許原理主義に陥ることになります。


特許の取得を目的に設定しまうと、前回の特許が取得できたから、次の特許を取得したい、外国でも特許を取得したい、というような特許取得の連鎖が起こります。


 


特許取得の専門家である弁理士も、専門家であるがゆえに、難しい特許の取得には価値があるという思い込みが強い傾向にあります。


 


特許の取得が目的である知財部がカウンターパートの弁理士がほとんどですが、企業経営者がカウンターパートとなる弁理士は、特許の取得は手段に過ぎないということを意識しないと、目的と手段の混同という問題をもたらすことになります。


 


特許を取得する国はどこがいい?


競争の激しいレッドオーシャン市場には多くの特許が存在します。


自社製品の製造販売の妨げになる他社の特許が存在しない国を探すことができれば、その国では他社の特許に邪魔されずに自由に商売をすることができます。


 


一般的に特許が出願されていない国というのは、市場自体が小さく商売に魅力がないわけですが、全ての企業にとって魅力がない市場というわけではありません。


大企業にとって小さい市場であっても、自社にとっては十分に魅力的な市場である可能性があります。


 


また市場自体は魅力的であっても、特許制度が存在しない国があります。


特許制度が存在しなければ特許は存在しません。


さらに特許制度は存在していても特許制度が機能しない国もあります。


特許制度が機能しない国では、形式的に特許は存在しますが、権利行使をすることができず実質的に特許がないことと同じです。


 


自社にとって適正規模な市場であり、かつそこに特許が存在しなければ、それは自社にとってのブルーオーシャン市場です。


 


海外で取得するなら特許より意匠がいい


海外出願というと、特許や商標がまず思い浮かぶわけですが、費用対効果を考慮して意匠を出願しておくことをおすすめします。


 


出願から登録までの総額(5年間の平均的な費用)は、特許・商標・意匠のなかで意匠が最も低いことは余り知られていません。


特許より低いのは当たり前としても、商標より低いというのは意外な事実です。


 


技術に特徴があるから意匠は関係ない、と考えるのは間違いです。


技術的な機能が製品の外観に顕れることがあります。


製品の外観デザインを保護する意匠を登録しておくことで間接的に技術を保護することができます。


 


そして権利内容が図面で視覚的に容易に理解できる意匠権は、言葉の壁がある海外では特に威力を発揮します。


母国語で理解するのも容易ではない特許、翻訳された文章の理解は専門家でも容易ではありません。


 


最小の費用で最大の効果を得ることができるのが意匠権です。


 


特許よりあえて意匠という選択も必要なのです。