アイデアの売り込みが成功しない理由
特許を取得する目的が他社への売り込みであるなら、それは期待しない方がよい。
少なくとも日本では外部者のアイデアを受け入れるという実績に乏しいから、アイデアを売り込むなら海外企業を探した方がよい。
日本企業が外部者のアイデアの受け入れに消極的な理由を考えてみた。
ひつとは自前主義だろう。
必要な技術は社内で調達するというのが日本企業の習慣であった。
終身雇用が続いた日本では、外部との人的交流がないだけでなく、外部との技術的交流もない。
外部から技術を調達しなくても、自社で調達できていたから、外部から技術を調達するためのノウハウが育っていない。
外部から技術を調達するためのノウハウの一つに契約がある。
外部から技術を調達するためには、技術使用料の設定や訴訟対策が必要である。
技術使用料は観念しやすいが、訴訟とはどういうことか。
提供する技術が特許技術であれば、常に特許権侵害というリスクが潜んでいることを理解しておく必要がある。
社内で開発された技術を使った商品サービスであっても、外部者からの技術を受け入れたという事実があれば、技術を提供した者は、自分の技術が使われたと思うだろう。
技術の受け入れに至らなかった場合でも、提案されたアイデアを検討してしまったら、アイデアを提案した者からすれば、検討した時点でアイデアに接しているわけだから、アイデアを使っていないことはないと思うだろう。
アイデアを検討した段階で訴訟リスクがあるなら、最初から外部のアイデアを受け入れない、という姿勢を徹しているのが日本企業なのである。
もし外部者のアイデアを受け入れたい、もしくは受け入れのための検討をしたい、と考えているのであれば、上記の訴訟リスクを避けるための社内プロトコルを用意しておく必要がある。
アイデアを受け入れる場合は、技術使用料の設定、権利があるなら権利不行使条項を盛り込んだ契約など。
難しいのはアイデアを検討した結果、採用しない場合である。
部外者からすれば検討という名のもとに技術情報だけ盗んだと思うであろう。
感情のもつれから権利行使ということもある。
対策としては、アイデアを検討する段階で採用に至らなかった場合の権利不行使条項を設定しておくことや、公知技術であることを伝えておくのも有効である。
あと海外からのアイデアの売り込みもあるが、これは「プロ」なので気をつけた方がよい。
海外からのアイデアの売り込みのほとんどが、NDAの締結を求めてくるが、そのようなことからしてプロである。
日本のNDAは恐れるに足らないが、海外のNDAは非常にリスキーである。
生半可な検討で安易にNDAを締結しようものなら、身動きがとれなくなる。