知財侵害の賠償金が上がり続ける中国の保護主義的な事情
中国の知的財産権法が改正される度に侵害の賠償金額が引き上げられています.
例えば2014年以前であれば、商標権を侵害した場合に裁判所で認められる賠償金は上限50万元でした.
その当時、上限50万元という賠償額は、余りにも低いため、抑止力にならないという指摘が特に外国企業から出されていました.
2014年の法改正により裁判所が認めることができる賠償金が300万元に引き上げられましたが、これは決して外国企業の要望に応じたわけではありません.
これまでの商標権侵害訴訟は、原告が外国企業で被告が中国企業というものでした.
中国経済が発展していく段階において、中国政府はある程度の侵害行為は仕方がないと考えていました.
中国企業が余りに高額の賠償金を支払うことがないように、賠償金の額を意図的に低く設定してきたのです.
そんな状況も世界第2位の経済大国になった現在、知的財産の侵害訴訟も変わってきました.
これまで訴えられてばかりだった中国企業が原告になるケースが非常に増えてきたのです.
しかも被告は外国企業です.
現在の中国は経済大国であるとともに知的財産大国でもあります.
中国で登録されている商標権や特許権の数は今や世界一です.
しかも権利者の殆どが中国企業で占められています.
中国へ進出する外国企業が中国企業が保有する商標権や特許権に抵触することはもはや避けられない状態になっています.
中国企業が原告になり外国企業が被告になる侵害訴訟が増えているのだから、もはや中国企業を守るために損害賠償額を低く抑えておく必要はないというわけです.
中国に登録される知的財産権の数は今後も増え続けます.
知的財産権という地雷を踏んでしまえば中国で上げた利益は一瞬で消失してしまいます.
賠償と制裁
中国で商標権を侵害するとどれくらいの罰金が課され、どのような制裁が課されるのかを纏めてみました.
工商行政管理局の賠償と制裁
商標権侵害品のと商標権侵害品を製造するための設備の没収・廃棄
侵害品の売上額が5万元以上の場合は、侵害品売上額の5倍以上の罰金
侵害品の売上額が5万元未満の場合は、25万元以下の罰金
民事訴訟の賠償と制裁
人民法院は裁量で300万元以下の罰金を決定
人民法院は悪意侵害の場合について確定した賠償額の1倍以上3倍以下の罰金を決定
刑事訴訟の賠償と制裁
3年以下の懲役又は勾留と罰金
特に悪質の場合は、3年以上7年以下の懲役と罰金
インターネットサイト運営者の賠償と制裁
(タオバオの場合)
2000元の罰金
21日間の出店停止
以前、中国のインターネットサイト運営業者の最王手タオバオに対して商標権侵害品の情報を提供したことがありました.
その後、商標権侵害品を出品していた店舗の責任者から得た情報では、商標権侵害品情報が削除されたのち、21日間の出店停止と2000元の罰金をタオバオに支払うという処分があったとのことです.
多くの場合、タオバオで複数の店舗を展開しているので、1つの店舗が閉鎖されても実害はありません.