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ビジネストラブルは法律に頼らず契約書で解決する

2021.09.30 16:05

「誠意を以て協議のうえ解決する」という一文が契約書の条項には必ずあります。


続けて「紛争が生じたときは◯◯地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする」という一文で締められています。


日本企業同士の契約だけではなく、中国企業が相手の契約書にも見られます。


 


取引が進むにつれて何らかのトラブルが発生したときに、これらの条項が何の役にも立たないことを実感します。


「誠意を以て協議のうえ解決」できないトラブルは、結局、法律の適用により司法の場で解決することになります。


 


契約書で大事なことは、トラブルが発生したときの解決方法を明確に記載しておくことです。
ここでいうトラブルの解決方法とは、トラブルが発生したときに契約当事者以外の第三者の判断に委ねるのではなく、契約当事者のみで解決できる方法を指します。


 


トラブルが発生したときに司法や仲裁に頼る紛争解決方法は多くの契約書がボイラー条項として規定しています。


しかし、結果の予想がつかず、時間と費用ばかりが発生し、ビジネスには不向きです。


 


法律でビジネストラブルは解決できない


ビジネスのトラブルはビジネスを知り尽くした当事者のみで解決するのが基本です。


判事は法律の専門家ではあってもビジネスの専門家ではありません。
仲裁委員のなかには当該ビジネスに詳しい人がいるかもしれませんが、それでも当事者以上に当該ビジネスを知っているわけではありません。


 


将来どのようなトラブルが発生するのかを事前に予測し、そのようなトラブルが発生した場合の解決方法を契約書に具体的に記載して初めて使える契約書が出来上がります。


 


「トラブルが発生した場合は話し合いで解決」
「話し合いで解決できない場合は司法の判断に委ねる」


このような紛争解決方法が頼りないことは、トラブルを一度でも経験した人であれば実感できることでしょう。


 


法律とは日本にいる人が守らなければならないルールを一般化して定めたものです。


したがって法律に定めている条項は抽象的包括的なルールにならざるを得ません。


 


これに対して契約は当事者だけが守れば良いルールを定めたものです。


だから取引の実情にあった個別具体的なルールを定めることができます。


 


トラブルが発生した後の「協議」ではトラブルは解決できません。


 


トラブルが起きる前の平常心のときにトラブルが起きたときのルールを定めておく


当事者間の交渉によって取引の実情にあった個別具体的なルールを適用してトラブルを解決できれば、当事者が納得する方法で解決できます。


 


トラブルが発生した後の協議が成立しなければ法律の直接適用しかありません。


曖昧模糊とした法律でビジネストラブルを解決できないのなら、トラブルが発生したあとのルールをトラブルが発生する前にルール化しておくしかありません。


 


契約を交わす大きな目的は、利害が対立している者同士が、お互いが納得できる内容を明らかにしておくことです。


価値観が異なる者同士が一つの目的に向かって一緒に行動するときに、それぞれの価値観を基準に勝手に行動したとしたら、到底目的を達成することは叶いません。


トラブルが起きたとき、価値観が異なる者同士であっても予め定めた内容に基づいて粛々と解決できるようにしておくことが必要です。


 


トラブルが起きる前の平常心でいられるときに交渉するからこそトラブルが起きたときの解決方法についてすり合わせができるのであって、トラブルが起きた後は最早平常心を保つことなどできず、結果としてお互いの利害が真っ向から衝突します。


 


雛形契約書は何も決めていない


契約書を交わす目的は、取引を始めるときに考え方が異なる当事者がお互いに納得できるルールを定めることです。


当たり前ですが利害関係が異なる人が考える内容は同じではありません。


 


異なる考えを持った人たちが新しい取引を始めようとするときに交わす契約書なので、その内容が雛形と同じということはありません。


仮に雛形の契約書で契約を交わしたとしたら、その契約は実は何も決めていないことと同じです。


 


お互いが満足する契約書を作ることはできない


どのような取引にも当てはまる共通条項しか記載されていない雛形の契約書のメリットは、契約を交わす当事者間に異論がないことです。


取引の共通条項しか記載されていないのだから異論がないのは当たり前のことです。


逆に言えば、本気で契約書を作成したら、当事者間にとって不満足な条項ばかりになるはずです。


 


契約を成立させるということは、お互いが交渉しながら、相手の考えと自分の考えが異なる場合にできるだけすり合わせながら着地点を探すという作業に他なりません。


そのような作業の結果、完成した契約書は当事者間にとって不満足なのは仕方がないことなのです。


 


ザル契約になっていませんか


法律の遵守率を高めるための立法技術の一つは、遵守しない場合の罰則を定めておくことです。


国家が国民に対して定めるルール(法律)以外にも、当事者が自由に定めたルール(契約)があります。


契約も遵守率を高めるために罰則を定めておけば良いのですが、罰則を定めている契約は極めて少ないのが現実です。


これから取引を始めようとするときに交わす契約では、悪いことは書きたくないという思いから当たり障りのないことしか書かれていません。


しかし、罰則がない契約は、「ザル法」と同じで遵守率が低くなります。


 


ルールを守っている間は取引が継続されます。


取引を継続させるためにはルールを守る必要があります。


一方、取引を継続させる必要がなくなればルールを守る必要もなくなります。


罰則がないのであれば尚更ルールを守ろうという気持ちがなくなります。


 


トラブルが発生したときこそ契約で定めたルールを守って欲しいわけですが、罰則がないためルールが守られることはありません。


 


「ザル契約」にならないためにもルールが守られなかったときの罰則や補償に関するルールを契約で定めておきましょう。