印鑑・署名・営業許可証 中国企業と契約を交わすときにチェックすること
印鑑証明制度がない
中国企業と交わす契約書には公章と呼ばれる会社印か合同专用章と呼ばれる契約印が捺印されています。
これらの会社印や契約印はゴムでできた子供のスタンプのようなつくりです。
印鑑の文字も極めて簡単なフォントなので簡単にニセ物の印鑑を調整することができます。
日本のように印鑑の真正を証明する印鑑証明制度がないので、捺印された会社印や契約印の真正を検証する方法はありません。
中国の契約実務では会社印か契約印だけの捺印で効力が発生します。
署名権限者を調べておく
中国契約実務では、多くの場合、捺印だけではなく法人代表者の署名も付されています。
しかし法人代表者の署名があるから安心とは限りません。
自らを法人代表や総経理と偽って商談を持ちかけてくることがあります。
「総経理」という肩書にも注意が必要です。
総経理は日本でいう社長です。
日本の社長の多くが代表権を備えています。
このため総経理も、その企業を代表していると思い込んでしまい易いので注意してください。
中国企業の法人代表者の肩書は「董事長」です。
総経理であっても董事長でない人は珍しくありません。
総経理の肩書を持つ人物が代表権のある董事長でもあるのか、代表権のないただの総経理なのか。
代表権を持たない総経理が署名した契約書を交わしても、後日のトラブルの際には、相手から契約書が否認されてしまいます。
署名した法人代表者が本当に法人代表かを予め調べておく必要があります。
企業信用情報を確認する
法人代表者の氏名を調べるには営業許可証の写しを確認することが一般的です。
しかし年度検査の制度が変更になり、営業許可証が毎年更新されなくなりました。
このため営業許可証の記載だけでは最新の法人代表者の氏名を確認することができません。
紙の営業許可証を発行しなくなった行政区もあります。
最新の法人代表者の氏名は、全国企業信用情報公示システムにアクセスして調べることができます。 このシステムには、法人代表の他、さまざまな企業情報が開示されています。
(1)企業の連絡住所、郵便番号、連絡電話、電子メールアドレス等の情報
(2)企業の開業、廃業、清算等の継続状態の情報
(3)企業による企業の投資設立、持分購入の情報
(4)企業が有限責任会社もしくは株式有限会社である場合、その株主もしくは発起人が引受及び払込した出資額、出資時期、出資方式等の情報
(5)有限責任会社の株主持分譲渡等の持分変更情報
(6)企業ウェブサイト及びオンライン経営に従事するインターネットショップの名称、インターネットアドレス等の情報
(7)企業の従業人数、資産総額、負債総額、対外提供している保証・担保、所有者権益の合計、営業総収入、主要業務の収入、利潤総額、純利益、納税総額等の情報
企業信用情報の他にも、経営異常名簿と重大違法企業名簿が公開されています。
経営異常名簿は企業情報を公開しない問題企業をリストアップしています。
重大違法企業名簿は3年以上企業情報を公開しない問題企業をリストアップしています。