強制不妊、手話で「悔しい」
毎日新聞2018年6月10日 東京朝刊
旧優生保護法を問う
強制不妊、手話で「悔しい」
聴覚障害者6人会見、3人提訴へ
旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らが不妊手術を強制されていた問題で
聴覚障害を理由に不妊手術や妊娠中絶を強制されるなどした男女6人が9日
大阪市で記者会見し、「子供のいる友達がうらやましかった」「悔しい」と手話で訴えた。
うち3人は国家賠償請求訴訟を起こす意向で、「被害を受けた人は声を上げて」と呼びかけた。
聴覚障害者に対する強制不妊手術を全国調査している「全日本ろうあ連盟」(本部・東京都新宿
区、会員約1万9000人)の主催。5人は実名で応じた。
「29歳での結婚直前、母に病院へ連れて行かれた。
病院でズボンを下ろされて(不妊手術されると)分かった。
本当に逃げたい気持ちだった」。
神戸市西区の高木賢夫さん(79)は、妻妙子さん(77)と並び、手話で話した。
夫婦に知らせないまま、妙子さんの父が手術を提案し、賢夫さんの父が受け入れたという。
妙子さんは「本当に悲しい。他の人の子育てをみて『産めればよかった』と思った」。
夫婦は「国は謝って、賠償もしてほしい」と提訴の意向を示した。
旧優生保護法下で行われた強制不妊手術について
自らの体験を手話で伝える高木賢夫さん(左端)
左から2人目は妻・妙子さん=大阪市中央区で2018年6月9日午後0時28分
望月亮一撮影
福岡県の吉瀬渉さん(80)も結婚直前の67年、理由を知らされないまま
父の依頼を受けた勤務先の洋裁店の店長に病院に連れて行かれ不妊手術をされた。
渉さんは現在、歩けず、妻陽子さん(76)が会見。
「夫の手術痕で断種手術と分かりショックを受けた」と話した。同じく提訴する考えだ。
兵庫県の勝楽(かつらく)進さん(故人)は、60年に父と弟の指示で病院に行くと
手足を押さえられ、ズボンを下ろされて手術された。
妻の佐代子さん(88)は会見で「子供がほしかった」と残念がった。
大阪府豊中市の高木桂子さん(80)は35歳で妊娠。
義母が自宅に来て「おろすまで帰らない」と2カ月間滞在したため中絶した。
大阪府在住の別の女性(78)は、いとこ宅で暮らしていた17歳の時
同居の男性の子を妊娠。いとこに「子供もろうになる」と言われ中絶した。
23歳、25歳、27歳でも同様に中絶。
5回目の妊娠で、男性と共にいとこ宅を出て出産したという。
【高木昭午、大久保昂】
また、6月下旬をめどに提訴する意向の熊本県の男性(73)もこの日
熊本市で記者会見し「手術のせいでつらい人生だった。国に謝ってほしい」と訴えた。
不妊や中絶強制、少なくとも70人 支援団体調査
「全日本ろうあ連盟」は9日、聴覚障害者に対する強制不妊手術の
全国調査の中間結果を発表した。
全国で少なくとも70人(男性18人、女性52人)が
不妊手術や妊娠中絶を強制されるなどした実態を明らかにした。
70人は、全国47都道府県のうち11道府県の連盟支部が
先月までに調査した結果の合計。内容が確認できた内訳は
少なくとも、男性の不妊手術13件、女性の不妊手術20件、妊娠中絶14件だった。
ほかに本人が「子供を産めない体にされた」などと話している
具体的に何をされたか確認できていないケースが24件あった。
【高木昭午】