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イタリアひとり旅〜1日目〜

2023.05.12 13:23

【食べかけで失敬。アシアナ航空乗り継ぎ後の機内食。チキンとチーズのペンネ。2種類から選択できるが酒のつまみにナイスチョイスだった。美味し。】

アシアナ航空の機内食の美味しさと快適さに驚嘆を覚え、これは最早ファーストクラスではと見紛う程であった。

チリ産のワインは力を入れているらしかったので、既に戴いた缶ビールに追加で白をお願いしたが、とても美味しかった。

備え付けのモニターでは、映画も観れるし、音楽も聴ける。

JAZZのアルバムとライブ映像が何本かあったので、ずっと聴いていた。

一般的に狭いとされる客席も、もともと隙間に丸まって眠るのが好きなので、快眠快適であった。

エコノミーも、私にしてみれば、ファーストクラス。

心の持ちようで、ヘイトにもライクにもなる。

それが浮世。

時間換算、1時間あたり6000円ちょっとで他国まで運んでもらえてこのオプション付きというのは、有り寄りの有りでは。

格安航空券、おすすめです。


【フィウミチーノ空港のバスターミナル停留所。出発時刻はとっくに過ぎているが、電光掲示板を見る限り、まだ到着していない様子。他の乗客と並んでバスを待つ。】

ソウルでの乗り換えを経て時間通りにイタリアへ到着し、預けていた荷物をピックアップ。

ネットで予約していたローマ市内までのバスに乗るべく、ターミナルへ向かう。

しかし、これがなかなか来ない。

予定時刻を1時間以上過ぎた頃、ようやくバスが到着。

道の混雑も関係するようなので、急ぎの際のバス移動は気をつけよう。

QRコードを提示して読み取ってもらい、荷物を預けようとすると、受付スタッフに呼び戻された。

チケットが明日になっているという。

あれ、間違えた?そんなはずはないのだがと変更できないか交渉するも、無理とのことで素直に引き下がる。

チケット売り場で、このバスに乗るチケットを買えるか尋ねたところ、40分程先の次の便になるとのこと。

時刻は、すでに19時をまわっていた。

空は夕暮れの気配もないほど明るかったが、あまり遅くなると危ないとも聞いていたし、先のバスの遅延を鑑みれば、割高だが、ローマ市内までは電車で向かうのが吉だろう。

ありがとうと伝えて、電車の乗り場へと移動する。

予約したバス代は、勉強料と思うことにする。


【バスチケットとホテルの予約。信じられないくらいしっかりとまちがえている。こんなことあります?自業自得を棚に上げ、一言いいたい。勘弁してくれ。】

先のチケットの予約日時が違っていた件が引っかかり、今一度、スマートフォンの予約画面などを確認する。

あらためて見てみると、確かに日時が相違している。

ふと、数日前に、

「飛行機での移動時間を単純計算したらイタリアには夜中到着なのに、予定表にはなぜか18時前到着とあってなんだこれと思ったけれど、ああそうか時差があるんだと気付いたんだよね。」

と友人に打ち明け、バカだなあなんて笑い合っていたのを思い出した。

まさか。

そのまさかだった。

時間的な時差を理解し解決したつもりが、日付変更線の理解をすっ飛ばしていたのだ。

初日と思っていた宿は明日に予約されていて、今日は、まったくもって想定外の1日であり、勿論、宿もない。

宿へ連絡して交渉しようかとも思ったのだが、海外使用のwifi契約をしてこなかった為、フリーwifiのないところでは、インターネットを使えない。

折角の海外、24時間だれとでもつながれる携帯電話に気を取られるのがいやだったのと、前回ドイツひとり旅の際はガラケーで問題がなかった為、そのようにした。

こんなところで仇になるとは。

どうしたものか。

「1日間違えて予約してしまったので変更できたらお願いします無理なら今日別途泊めてもらえますか?」

でいこう、と、ひとまずはローマ主要駅のテルミニへ向かう。

テルミニ駅までは、特急で1時間しないで着く。€14。

行きの電車の車窓から、ようやく綺麗な夕陽が見えて、イタリアでは21時頃から夕食をとるという話に納得がいった。

こちらでは日本よりも、太陽の入りが遅いようだ。


【フィウミチーノ空港からローマテルミニ駅へ。喫煙所を見かけないなと思ったら、駅前やいたるところに大きな灰皿があった。電車内などは禁煙だが、日本よりも一般的な喫煙への規則は厳しくない模様。】

テルミニ駅へ到着し、とりあえずは明日予約をしている宿を目指す。

幸い、インターネット接続が無くても、GoogleマップのGPSは機能してくれていた。

ただでさえ方向音痴な私、現在地が分かるのはとてもありがたい。

画面を辿りながら宿へと向かう。

恐らくこのあたりだろうというところまできたのだが、どの建物なのか、まったくもってわからない。

レストランやカフェなどはあるが、ホテルの看板などは無く、入り口も見つからない。

ホステルからの連絡には3階にあり、階段で上がってきてくださいと書いてあった。

15分程うろうろしたのち、タバコを吸っているタクシーの運転手さんに声をかけ、ここに行きたいのですがと尋ねる。

スマートフォンの画面を見せると、文字を大きくしてくれないかと言われたので、あわててコピーして大きく変換する。

運転手のおじさまは、ゆっくりで大丈夫だよー、となだめてくれた。

あらためて住所を見せると、OK!この次のブロックのビルディングだよと教えて下さった。

ありがとう!と伝えて隣のビルへと向かった。

しかし、やはり、入り口がない。

レストランから入って、奥に階段で上り下りもあるのだろうか。

通りがかりにちらりと覗いてみるが、そんな気配はさらさら無い。

次の通りまで歩いて、犬を連れている男性に口頭で尋ねる。

テルミニはあっちだよと教えてくれたが、恐らく、ホテルではなく駅を探していると勘違いされてしまったようで、指し示しているのは先程聞いたものとは真逆の方面だ。

自らの英語力の低さと、それを加味してwifi契約をしてこなかった自分の甘さを呪った。

Google翻訳で、英語日本語イタリア語をオフライン保存してきたのだが、この時は何故か機能せず。

こうしたハプニングを考えると、機械に頼ればよいということでもないのかもしれない。

確実に言えることは、過去を悔やんでも、現状を嘆いても、仕方があるまい。

ここからどうするか、何を選択するか、ということだけだ。


【各ビルの扉。入り口取っ手部分が視界より上にあるので、扉だと気付くことができなかった。背の高さだけで、こんなにも違うのか。次の日写真に納めてみれば、見上げる程上ではあるが、番地もきちんと明記されている。異国の形式に柔軟に適応できなかったのも原因か。】

よし、と、先程通り過ぎた客引きのいるミニマーケットへ入った。

挨拶をして、冷蔵庫からビールと思われるロング缶を選んでレジへ持っていく。

店を出る際、客引きに立っていた中東系の女性に、住所を見せて場所を尋ねた。

レジの男性が、300mまっすぐ行って右と答えてくれたが、私が聞き取れず何度か聞き返してしまったので、面倒臭そうなそぶりであしらわれた。

ありがとうと伝え、また道を引き返す。

最初の運転手さんに聞いたところで、間違いは無さそうだ。

ふと、それぞれビルディングの壁と思っていたところから、人が出入りしているのを目撃した。

私が壁だと思っていたのは、とても大きな扉だったのだ。

その扉の横に、階数と名称、それぞれの部屋へのインターホンのボタンがあった。

ここでようやく、入り口がどこなのかがわかった。

そうと分かればと、通りかかるドア横の表札を見てまわる。

いかんせん英語に慣れておらず、表札は手書きのものも多い為、何と書かれているのか認識するのに時間がかかった。

運転手さんの言っていたビルあたりに着いたが、すぐ横にレストランの入り口と店頭のテラス席があり、ここではないような気がしてまごついていたら、ひとりで食事をしていたおばさまが、ここだよと声をかけ指さしてくれた。

不意を突かれてびっくりしたが、表札には確かにホテルの名称があった。

ありがとうございます!と言い、インターフォンを押す。

すぐにガチャリと音を立てて錠が開いた。

押すのか引くのか、やわな力では軋むだけで、思い切り押したらドアが開いた。

階段を3段上がったがそれらしいドアは見つからず戸惑っていると、頭上から声がしたので、返事をしてあわてて上がる。

入ると、受付の男性に、

「ヘイ、ジャスミン!」

と声を掛けられたので、すみません違いますと伝えると、訝しげな顔を向けられた。

これからチェックイン予定の方と間違われたらしい。

受付奥共用部に居た宿泊者の方に、

「もしかして、日本人の方ですか?」

と声を掛けられ、そうです!と答えた。

イントネーションから、恐らく韓国系の女の子だろうか。

やっと日本語でお話できる人に会えたという喜びもあったのだが、すぐに本題を思い出す。

パスポートを見せ、慌てながら事情を話すと、受付の男性は落ち着いて、と言いながら話を聞いてくれたが、今日は満室なので明日また来てくれと返答された。

ひとまずは謝って、また明日にと宿を後にする。

どうしたものか。

時間はすでに21:15。

あたりはすっかり夜だった。

とにかく、泊まれるところを探してみるしかない。


【ローマは月がとても大きかった。その日だけなのかわからないが、太陽も心なしか、日本で見るよりも、大きく、つよい感じがする。】

近くのホテルに入り、予約をしていないのですが満室ですか?と尋ねる。

いっぱいです、という返事。

どこかしら空いているだろうと思っていたが、土曜日のローマ主要駅だからか、どこもかしこも満室。

これは、本当にやってしまったかもしれない。

前述の通り、最初のビルの大扉はベルを鳴らさなければ錠を開けてもらえないので、なるべく中の人が出入りするタイミングで滑り込み、交渉しては駄目の繰り返し。

途中、高校生くらいの男の子数人がいて、そのうちの1人がどうしたのかと声をかけてくれた。

泊まるところがないのだと伝え、彼らの入ろうとしているドアを指し、ここはホテルなの?と聞くが、どうやら違うらしい。

どこかに泊まれないかと聞こうとするも、これまた英語でのコミュニケーションが上手く出来ず、なんだか申し訳なくなり、ありがとうと伝えて次の宿をあたる。

20軒ほど当たっただろうか。

最初の宿を出てからもう1時間が過ぎていた。

グッドラックと言ってくれる人もいれば、怪訝な顔でfullとだけ返されることもあった。

一縷の望みを胸にここまできたが、これは野宿も視野に入れねばならぬかと、野宿スポットも考え始めた。

公園のような緑のある広場があったので、その茂みの中ででも仮眠を取ろうか。

いや、やはり暗がりは、何かあった時に危険なのでは。

駅前の路上生活者に紛れて眠るべきか。

そういえば、駅前のマクドナルドが24時間営業だと聞いていたので、最悪そこで夜を明かすのも手かもしれない。

宿が駄目ならマクドナルド、マクドナルドが駄目なら野宿。

この優先順位を胸に、雨が降っていないことだけ救いだな、と、あと数軒だけまわろうと宿を探した。


【ホテルのビル入り口の大扉。こういう格子状の場所も多くある。インターホンを鳴らせば錠を開けてもらえるが、このワンクッションが治安を物語っているようにも思える。】


鉄格子のような大扉、各階に別のホテルが入っているようで、中からは音楽が聴こえてくる。

クラブがあるのかもしれない。

さっき当たってみたホテルにも、演奏のあるバーが併設されていた。

覗き込んでいると、丁度中から人が出てきたので、すれ違うようにそのまま入る。

ホテルは5階分あるようだ。

1階オフィスは閉まっているようだったので、上の階へと向かう。

各所で散々断られ、厄介にあしらわれたのがこたえてきて、ここの建物で最後かなあと思いながら、ドアの前に佇んでいた。

すると、磨りガラスになっている自動ドアが開いて、黒人の男性が、ハイ!と声を掛けてきた。

にこやかな応対にほっとしながら、宿を探している旨伝えると、やはり、今日は満室だという。

元々は自分のミスなので、がっかりという気持ちはそもそもなかった。

寧ろ、心細い今、少しの間でも快く対話してくれた彼に感謝の気持ちでいっぱいになった。

僕には上のホテルの状況はわからないから聞いてみるといいよ、と返してくれたので、感謝を伝えて当たってみることに。

すぐ上の階のホテルはドアが空いていた為、すみませんと声を掛けて入る。

挨拶をして、事情を話すと、やはり満室であるという。

仕方ないな、と上へ向かおうとしたところ、なにか言われた。

よく聞けば、清掃していない部屋であれば、一室だけあるという。

はい喜んでと言わんばかりに首を縦に振ると、受付の男性は少し考え、€120だけれどよいかと訊ねてきた。

一瞬、計算に時間を要し、それが、今回泊まろうとしている安宿の約4倍の値段とわかったが、とりあえずの手持ちはあるし、後々節約すればなんとかなるだろう。

なにより、気を付けて行ってきますと言った手前、みんなに示しがつかないという思いもあり、泊まらせて欲しいとお願いした。

それがもし割増料金だったとしても、今必要としている寝床と安全への対価なのだ。

文句は言いまい。


【ようやくありつけた宿に感無量の私。こんなこと、令和の時代にあるんですね。】

ついておいでと言うと、男性はひとつ上の階の一室に案内してくれた。

言われた通り、ベッドのシーツはあっちゃこっちゃ。

持ち込んだスナックの袋などが散乱し、浴室もトイレも、使ったまま。

本当にこれでも大丈夫か?と確認され、是非お願いします!と答える。

前職が客室係だったので、チェックアウト後の客室は見慣れたものだし、寧ろ懐かしくもあった。

ダブルとシングル。どちらのベッドを使うかと問われ、シングルと伝えると、すぐに1台分のベッドシーツを持ってきてくれた。

鍵などの説明をしてくれている間にも彼の携帯電話が鳴り、

「今夜は本当に忙しい。」

と呟いていらした。

シーツは自分で張りますと言うと、少し考えて、これが私の仕事だ、と、枕カバーだけセットしてくれた。

諸々のやりとりが終わって男性が出て行き、部屋にひとりになると、なんとも言えない気持ちと疲れがどっと押し寄せてきて、ただひたすら、声を上げて笑った。

自業自得に驚愕し、自明のもと悟ろうとするも焦燥に駆られ、そんな自分を宥めながら戒めながら、荒んでしまう寸前でふとした人の温かさに救われ。

そんな、翻弄されまくりの一喜一憂な数時間が、おもしろおかしくてたまらなかった。

終わりよければという寝床に、無事辿り着けたからなのは言うまでもない。

ひとしきり感情を放出したのち、ホステルのwifを接続し、明日の宿や電車の乗車券を確認、今あるユーロを全てかき集め、滞在中使える金額を日割りする。

私は結構、金銭に対してシビア且つ手堅い人間である。

多めに換金してきたこともあり、贅沢さえしなければなんとかなるとわかったところで、二度目の安堵が押し寄せた。

私はまだ、大丈夫。

口に出して確かめる。


【すべてへの安堵からのベッドメイク。結構綺麗に張れているでしょう。そうでしょう。】

シャワーを浴び、ひと息ついた。

トータル15時間半のフライトに加え、すべての荷物を抱えたまま、慣れない英語とスペイン語での宿探し。

さすがに心身共に、疲労困憊の模様。

今日は空港に着いてからのゆで卵しか口にしていなかったが、これから買い物に出る気にはなれなかった。

幸い、フライトで食べ切れなかったロールパンひとつと、前客が食べ残していったパンやケーキが部屋に残っていたので、ミニマーケットで購入した缶ビールと一緒に戴く。

チョコたっぷりのパンと甘いクリームのケーキはひとくちずつで充分だったが、袋に入った砕けたミニプレッツェルは塩気が強く、ビールにピッタリだった。

渡りに船とは、このことか。

拾い食いに躊躇のない性格で本当に良かった。

風呂トイレ付きのダブルシングル2台ベッド、比較的広さもあり駅近、提示された宿泊料は相応のものだろう。

今回の安宿旅の中では贅沢極まりない部類だが、自分へのご褒美の先取りということで良しとしよう。

そんなことを考えつつ、着付けばそのまま、ベッドの上で眠りこけていた。

明け方、ぼんやり目が覚める。

軋みながら開く木製の窓を開けると、雲ひとつない晴天。

私はまだ、大丈夫。

初めてのイタリア、ひとり旅の始まり。

おまけのセルフポートレート。

ドミトリー宿ばかりなので使うタイミングはないだろうと思っていたスマホスタンドが、ハプニングにより良いお仕事して下さいました。

たくさんの文字を、読んで戴いてありがとう。

旅の記録は、またゆるゆると更新します。