椎間板ヘルニアの治療(比較的新しい内科治療)+付け足し
当院では椎間板ヘルニアになった子には、基本、エラスポールと言う薬を使用した内科治療を行っています。
この際重要なのはネットに書かれている内科治療というのはステロイドによる治療のことで、症状の改善率は低く書かれています。
一方、このエラスポールでの治療ですが、ワンちゃんの椎間板ヘルニアの外科手術の権威だった先生が、この治療法でも外科手術とほぼ同じレベルで治癒する、というのを発見したものです。
当時の先生の言葉で、この内科治療があれば、今まで外科手術までする必要が無かった子はいっぱいいるのではないか?
という内容をお話していました。
椎間板ヘルニアというのは、椎間板が上に付き出し、脊髄を圧迫して起こるのですが、この後が更に問題になります。
何故かというと、ヘルニアを起こした箇所は強い炎症を起こすため、その炎症がより酷い症状を引き起こしてしまうからです。
そのため、昔は椎間板ヘルニアを起こした場合、48時間以内の手術が必要だと言われていました。
ステロイドもエラスポールも要はこの炎症を止めるために使用されます。
ただし、ステロイドは安価ではありますが、高用量を使用しないといけないため、副作用が強く出ます。
ひどい時には胃潰瘍や、タール状便を引き起こします。
現在ではステロイドによる治療は治癒率が低いことがわかっているのに、酷いことにステロイドを注射しなかった、という理由で訴えられた上に敗訴した獣医がいます。今の世の中ではありえないでしょうね。
エラスポールはもともと人間の急性肺炎に使用されていた薬なのですが、これが椎間板ヘルニアの炎症を抑えるのにも使用できるのです。
ステロイド療法よりは高価ですが、今まで使用してきた感じでは、8〜9割のワンちゃんが、フラつきは残るものの、歩行が可能になっています。また、外科手術よりはかなり安いという利点もあります。
こちらの治療でも48時間以内に実子した方が良いと言われています。
要は椎間板ヘルニアによる炎症で、脊髄がやられてしまう前に圓生を取る必要があるんですね。
先ほど記載したように、炎症を抑えて、その後のダメージを減らすのが目的なので、炎症を抑えたあと、神経の自己治癒力にかけることになります。これは内科治療も外科手術も同じことですね。
殆どの子は、一週間エラスポールを投与させてもらって、その後、1ヶ月ほど経ったあとに再診に来てもらいます。
すると、かなりの割合で歩けるようになっています。
新しい治療と言っていますが、エラスポールによる治療が出てきて、もう10年以上にはなるのではないでしょうか。
こうして椎間板ヘルニアに新しい治療方法(外科手術、内科治療、鍼治療など)が加わったのですが、どんな方法をとっても治らない椎間板ヘルニアというのも存在します。
後ろ足の骨を鉗子で掴んで、ギュッと圧迫する、かなり痛そうな検査方法があるのですが、この段階で痛みを訴えない場合、椎間板ヘルニアによって脊髄が断裂していることがあります。
こうなると、残念ながらお手上げになります。
断裂された脊髄は軟化し、それがどんどん体の上の方にまで上がっていくんです。
最終的には呼吸をつかさどる筋肉までが麻痺し、死に至ります。
上記のことからも、当院では椎間板ヘルニアの外科手術は行っていません。
本当に椎間板ヘルニアを起こした場所、というのは脊髄造影をしたCTスキャンか、MRIが必要になり、使用せずに椎間板ヘルニアの手術をしたりすれば、切ったけどヘルニアを起こしている部分が見つからなかった、なんてこともありうるので、しっかりした画像撮影装置と、脊髄を傷つけずに飛び出した椎間板を取り除く技術が必要になります。
整形外科専門の先生に紹介もできるのですが、当院では上記のこともあり、エラスポールによる内科治療を実施しています。
いきなり歩けなくなった飼い犬を見ているのは辛いかもしれませんが、中には治療中でもみるみると元気になる子もいるため、その時は感動もひと押しです。
外科手術、内科治療、一概にどちらが良いとは言えませんが、当院ではエラスポールによる内科治療をお勧めしています。
追記
最初にネットに書かれている内科治療はステロイド治療によるもの、と書いたのは、エラスポールによる治療も内科治療なので、ネットに乗っている改善率を勘違いされて、文句をつけてきた人がいるからです。