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上沼優二郎 (FOOLA)の感受性、応答セヨ! vol.5<上沼優二郎>

2018.06.13 03:00

俺やで。

あれはまだ前のバンドを始めたばかりの頃で、焼肉屋でバイトをしてた頃なので2005年くらいまでの時期だと思う。その頃は携帯は普及してたものの、インディバンドのほとんどにはPC 版のホームページなんてなくって。あっても当時の携帯じゃ重すぎて開けなかった。

魔法のiらんどっていう簡易サイトを使ってホームページを作ってるバンドがほとんどだった。当然視聴サイトなんてなかったし、MV があるバンドなんてそこそこ売れてるバンドくらいだった。

CD を手に入れるか、ライブか。

そのどちらかじゃないとどんなバンドなのかはわからなかった。

焼肉屋のバイトはランチのラストオーダーが一四時でそまかない食べて一六時半からディナーの準備。その間が休憩時間で二時間くらい休憩になった。その間何をしていたかというとポータブルCDプレイヤーで音楽を聴いて、音楽雑誌を隅から隅まで読むか、小説を読むか、インディバンドのホームページを色々見るかだった。ベイブレードも一時期流行ってたっけ。

バンドのホームページには大抵リンクっていう項目があって。そこにはそのバンドと繋がりのあるバンドのホームページやよく出ているライブハウスが載せてあった。ワタシがやっていたバンドはというと、グランジ、オルタナティブな方向性だったのだけど、近しいバンドが周りにいなかった。なもんでリンク先にあるバンドのweb を見てピンと来なかったら更にそのバンドのリンクを辿ってバンドを探した。

そうこうしてると二つ引っかかるバンドが見つかった。

否( 現在はアンドロメルト) っていうバンドと、slob。

どちらもグランジが大好きなのが伝わって来た。否に至ってはアドレスにカートコバーンの命日が入ってたり、slob はメンバーの好きな音楽がNIRVANAだったりSONIC YOUTH だったり。当時は普通に個人アドレスが載ってたりしたっけ。フライヤーなんて携帯の番号とか書いてあったもんな。そういやフライヤー配りしてる人も減ったなぁ。

早速slob のBBS に自分はこんなバンドやってて、気になるのでライブ観に行きます!と書き込んだ。ここからが勝負というかなんというか。実際かっこよくなかったらどうしようっていう危惧を抱き始めるのです。

ライブハウスでは取り置き予約者が来たかどうかは分かるようになっているから、来たことは後々バレる。実は行けなかったっていうのは通用しない。かっこよくなかったら、自分達のCD を渡して適当にお茶を濁してサッと帰ろうと思っていた。彼らがセッティングを終えて演奏を始めた時、不安は一瞬でなくなった。それ以来友達でもあり、一ファンだ。slob は残念ながら解散してしまってだいぶ時間が経った。

その後ギタリストのカズくんは弾き語りを経てcigarette in your bed を始めたけど、ギターヴォーカルの森本くんはすっかり音沙汰がなかった。一昨年の夏前くらいだったか前述のギタリスト、カズくんから興奮気味で電話がかかって来た。

内容はこうだ。

「slob 再結成するんだけどベースやってくれない?」

ワタシは彼らの十数年来の友達で一ファンだ、断る理由はなかった。実際のトコロ「いやいや再結成でしょ?俺はメンバーじゃないじゃん!」とはちょっと思ったけども。

そんなこんなで数回リハをやって一昨年の八月に大好きなslob は復活をした。そのあとはゆっくりと活動をしている。

あの時、彼らのホームページに辿り着かなかったら、ライブを観に行かなかったらどうなっていたんだろうか。墓場まで持っていくようなあの思い出もなかったかもしれない。十何年後の今になってslob としてステージに立つことはなかったかもしれない。今だったら情報がありすぎてスルーしていたかもしれない。あの頃のように必死に音楽を、バンドを探したりしてないと思う。

今だってもちろん良い出会いはたくさんあるし、誰かと繋がる速さなんて怖いくらいだ。昔を懐かしむつもりは全くない。

それでもあの頃。不便だったけど手に入れたものは今でもピカピカだ。


文:上沼優二郎