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側弯症ライブラリー別室

Rib hump 肋骨隆起

2018.06.13 03:23

2018年6月16日記載

この項目は資料等を整備しています。下記はいわば下書き的内容ですが、途中経過ですが参考になる部分もあるかと思いますので「公開」しながら作成を続けていきたいと思います。


以下は私の拙訳並びに説明となります。私august03はMedical Doctorではありませんので、内容にはミスが含まれている可能性は否定いたしません。皆さんがこれを読まれて気になった箇所や不明点などがありましたら、ぜひとも専門医の診断を受けた際にその先生に質問されてみて下さい。正確な医学知識、最新の知見、最新の情報などを教えていただけると思います。


リンク:  Step by Step 側弯症ライブラリー「追記第二弾:側弯症-医学的真実を求めて : リブハンプ改善写真に対する医学データが示すこと - rib hump とコブ角との関係

側弯症手術 前方固定法に関連する リブハンプの矯正について



参考文献

1987年  C.R.Weatherley et al: The Rib Deformity in adolescent idiopathic scoliosis (A prospective study to evaluate changes after harrington distraction and posterior fusion) The Journal of Bone and Joint Surgery  Vol 69-B No2 March 1987.

思春期特発性側弯症患者における肋骨変形 (プロスペクティブ研究によるハリントン法及び後方固定術後の肋骨変形に対する評価)

アブストラクト:思春期特発性脊柱側弯症の側方変形に対する矯正手術後の肋骨隆起や肋骨変形の変化を調べるための前向き研究を実施した。 47人の患者の手術治療は、ハリントンロッドを用いた脊椎後方固定による。 手術前および経過観察時に、コブ角および肋骨変形の測定を行った。 側方カーブの手術的矯正にもかかわらず、4年後の症例の64%において肋骨変形の進行があった。 したがって、横方向の彎曲の矯正は、椎骨の回転には影響を及ぼさず、肋骨隆起の永久的な減少をもたらすことは確保できない。

肋骨隆起は、脊椎の側方カーブより外観上の変形が目立つものであり、特に女子に発症数が多い思春期特発性側弯症においては、治療上の重要なポイントである。術前には肋骨隆起とコブ角の両方をよく観察・計測し、術前計画を立てる必要がある。当病院でのこれまでの経験からは、コブ角が矯正できたとしても、それがそのまま肋骨隆起の矯正に繋がるということは得られなかった。これをさらに調査する為に、前向き臨床試験を実施した。

対象患者は、シングル胸椎型側弯 21例・シングル胸腰椎型側弯6例・ダブル胸椎型側弯1例・ダブル胸腰椎型側弯19例の計47人である。

47人のうち15人にはミルウォーキー型装具による装具療法を実施した。平均18カ月(2月から55カ月)。この装具療法が効果を得ずにカーブ進行が止められなかった為、この15人も最終的に手術となった。手術時の平均年齢14歳9カ月(11歳11カ月から18歳6か月)。手術後は全ての患者でプラスター装具で保護した。この期間は平均6.4カ月(4カ月から11カ月)。

47人全員を、術後少なくとも2年間フォローアップした。このうち33人は4年間フォローした。

結果 平均コブ角は 54度から28度に減少した。矯正率は48%。最初の年にコブ角の矯正ロスが9度生じたが、それ以降は変化はなかった。肋骨変形に関しては、あまり満足のいく結果ではなかった。最初の年に、47人中17人で術前よりも肋骨隆起が大きくなった。2年目には人数が増えて、20人(43%)で隆起が増え、4年間フォローした33人においては21人(64%)で隆起が増えた。平均すると1年目に10mm、2年目並びに4年目に9mmの隆起があった。

椎体回旋を測定したが、手術後の回旋減少は見られなかった。またフォローアップ中の回旋の増加も見られなかった。肋骨隆起と年齢(骨成熟)に何らかの関係があるかを検討したが、相関関係は見られなかった。

手術によるコブ角の減少は術後1年が平均37度、4年後に39度とほぼ変化ないことから、肋骨変形に対する矯正も同様の傾向を示すことが期待されているわけであるが、しかし、これに反して肋骨隆起は手術後1年で患者の36%に発生していた。このことから、コブ角の変化と肋骨変形とはリンクしていないことがわかる。同様に、脊柱(椎体)回旋と肋骨変形との関係に関してもいえる。この47人では、手術後も、そしてさらにその後のフォローアップ中でも椎体回旋の増加は確認できなかった。このことから、肋骨隆起が椎体回旋の増加により再発したものである、ということもできない。

肋骨隆起の再発は、もしかすると骨成熟がまだ完了していない場合に起こるのかもしれないが、それも明確ではない。

コブ角の矯正(減少)と、椎体回旋(角度)の変化、そして肋骨変形がどのように相関しているのか、あるいは相関関係にないのか等を今後も研究する必要がある。



☞ 私的考察 by august03

1. 1970~80年代、側弯症手術にハリントンロッド法が導入され始めた頃は、次に示すレントゲン写真(下左は術前、下右は術後)のように、正面から見たときのS字に曲がった脊柱をできるだけ「真っすぐ」にすることに主眼が置かれていました。当時すでに側弯症が脊柱の「ねじれ(椎体が回旋)」であることはわかっていましたが、真っすぐにする為の技法は解明できても、ねじれた椎体(ねじれた脊柱)全体を元の方向に逆回転させる技法はできていませんでした。

2. 脊柱(椎体)のねじれ(回旋)とは 

詳細な解剖については別項目にて説明をします。

上掲レントゲン写真(これを正面像あるいはAP像と言います)のように 脊椎がS字状に変形している状態が「側弯症」と呼ばれるわけですが、この変形は、単純に脊椎が S字に曲がったものではなく、下図に示したように脊椎に「ねじれ(回旋)」も発生しています。1980年代のこの医学報告では曲がった脊柱を伸ばすことには成功できた。しかし、「ねじれ(回旋)」を矯正することはできていなかった。と述べられているわけです。

3.肋骨と脊椎(椎体)との関係

 下図はヒトの身体を輪切りにした横断面です。

 私たちは、脊椎(椎体)と肋骨は互いにがっちりと接合固定された「ひとかたまりの骨」というイメージで捉えがちですが、実際には、このふたつは「関節」により接合しているだけのそれぞれに独立した骨です。

「ひとかたまりの骨」というイメージを持っている為に、肋骨隆起(リブハンプ)を体操で治した、という整体等のBEFOR,AFTERの写真を見ますと、私たちは

   肋骨隆起が小さくなった =   側弯カーブ (コブ角) が小さくなった   = 側弯が治った

という一連の解釈をしてしまいます。

しかし、これはマチガイです。  その理由を再び、今度は2015年の医学論文を用いて説明したいと思います。


参考文献

2015年 Konstantionos C Soltanis et al ; Rib hump deformity assessment using the rib index in adolescent idiopathic scoliosis treated with full screw or hybrid constracts - aetiological implications.   Scoliosis supple 2 2015

思春期特発性脊柱側弯症に対し、椎体スクリューのみで脊柱固定した方法と、またはフツク等の部品も用いてのハイブリッドな固定方法で対応したときの肋骨隆起変形評価:病因学的検証

思春期特発性側弯症患者25人を二群に分けて臨床試験を実施。A群16例には椎体スクリューのみを用いて脊柱変形矯正に必要な全ての脊椎をスクリュー固定した。これは近年の脊椎固定術で用いられているコブ角矯正に強い力を発揮する方法である。一方、B群9例には、スクリューとともにフックなどの部品も用いての複合的固定法を実施した。矯正力は明らかにA群のほうが強く、従って、肋骨矯正もA群のほうが有意に差がでるものと考えられた。

術前の肋骨変形の度合いを肋骨変形指標で測定したところ、A群術前1.93、術後1.37。B群術前2.06、術後1.51で、A群とB群とも、それぞれの術前術後では肋骨変形矯正は良好な結果を示していた。しかし、A群とB群の術後の肋骨変形指標を比較したとき、そこには有意差はなかった。

結論 脊椎固定術にどのインスツルメンテーションを用いたとしても、肋骨変形矯正には差がでなかった。これは、肋骨隆起という変形は、椎骨の回旋からではなく、左右の非対象な胸郭変形から生じている可能性が高いことが示唆された。


☞ 私的考察 by august03

体操であれ、装具療法であれ、まして手術によって「コブ角」が減少したならば、それは同時に「肋骨隆起」の減少も意味するはず。と私たちは考えます。しかし現実は、脊柱変形(椎体のねじれ)と肋骨隆起は別々の変形であることを示しています。

つまり、

「ひとかたまりの骨」というイメージを持っている為に、肋骨隆起(リブハンプ)を体操で治した、という整体等のBEFOR,AFTERの写真を見たとき、私たちは

   肋骨隆起が小さくなった 

     ↓

   側弯カーブ (コブ角)は小さくなったはず

     ↓

    側弯が治ったはず


と勘違いしてしまうことになります。


その勘違いによって何が引き起こされるか、と言いますと

患者さん(そのご両親は)すっかり安心してしまって、整形外科からどんどんと足が遠のいてしまいます。 整形外科医を非難し、病院では治らないと患者さん(そのご両親を)洗脳している整体に通っていたら、なおさらのことでしょう。

そして、ある日、整形外科医でレントゲン検査を受けて「コブ角が増大」していることを告げられる = 手術ですね、と。


これを読まれた方の中には、自分のこと!  と感じられた方がきっとおられると思います。