鬼の腕 ラショウモンカズラ
羅生門葛(らしょうもんかずら)
大きなシソ科らしい唇状の花が真っ直ぐ伸びる花茎の片側に連なって咲く姿を、かつて平安時代の昔、京都の"羅生門"(正式名称は羅城門)に住みついていた鬼を武者・渡辺綱(わたなべのつな)が退治した際に、綱の刀によってバッサリと切り落とされた鬼の片腕に見立てて。
"葛(かつら)"は、地面を這う長い走出枝(ランナー )によって広がるところから。
合わせて『羅生門葛(らしょうもんかずら)』。
渡辺綱の鬼退治伝説で鬼の腕を切り落とした逸話は幾つかバリエーションがあって、京都の一条橋での鬼女退治の話が平安時代末の「平家物語」に登場するのが最も古く、それが中世・室町時代の謡曲「羅生門」によって話の舞台が羅生門に移されてストーリー自体も違う話に代わり、後日談は謡曲「茨木」によって鬼が酒呑童子の手下の茨木童子となる、というアレンジの変化を辿るようだ。
印象的な花の名前で、しかも、その由来はなんと伝説の鬼の腕である。花の名前の数ある古典文芸ネーミンググループの筆頭であろう。
実際この名で呼ばれるようになったのは、謡曲「羅生門」が庶民の間でも普及していた頃だと思われるので、室町後期〜江戸時代辺りからか…
花期は4〜5月。本州〜四国・九州に分布し、山林の湿った日陰に自生する。
背丈は大きなものだと30cm程になり、大型(4〜5cm)の紫色の唇状の花を2〜5個程まとめて段々に、花茎の片側に連なって咲かせる。
下唇は白地に紫の斑点模様に無数の毛が生えている。
なんともゴージャスというかグロテスクな感じもするところが、鬼の腕に喩えられたのかもしれない。
大鰐の茶臼山公園のツツジ祭りに出かけた際に、色とりどりのツツジの木陰や日陰の斜面に紫色のこの花が咲いていたのを見つけ、ツツジは半分そっちのけで見入ってしまった…
花言葉:幸せを招く/復讐/油断大敵