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臍帯とカフェイン

オプションおじさん(1:1:1)

2023.05.16 23:54

啓次郎:男性。けいじろう

立花:女性。たちばな

オプションおじさん:大盛り。

 : 

 : 

 : 

 : 

0:会社のオフィス。啓次郎が頭を抱えている。

 : 

 : 

啓次郎:どうしたもんかな

立花:まだ悩んでるの?

啓次郎:悩むよ、そりゃぁ

立花:悩みすぎ、こんなのなんとなーくの感覚でいいじゃない

啓次郎:そうは言ってもさあ、自分で初めて売り出す映画だよ?

立花:まあ、そうだろうけどさ

啓次郎:昨今のトルコ映画の質の上昇を見抜き、

啓次郎:自分でリサーチをかけ、

啓次郎:今後確実に有名になるであろう作品を自身で買い付ける。

啓次郎:こんな極上の仕事をしたのに、最後の最後でキャッチコピーに悩まされるなんて。

立花:下手だもんねえ、そういうの。

啓次郎:うっさい。

立花:映画の質は、完璧なんでしょ?

啓次郎:最高よ。絶対ヒットする。

立花:ならキャッチコピーなんて、どんなのでも売れるんじゃないの?

啓次郎:わかってないなあ!!

啓次郎:キャッチコピーってのは、いわば居酒屋のお通しみたいなもんなんだよ!

立花:お、お通し・・・?

啓次郎:そう!別に頼んでもないのに勝手に来る、あのお通し。

啓次郎:頼んでもない、でも、そのお通しでその居酒屋の味がなんとなく見抜けてしまう。

啓次郎:そういったものなんだよ!映画のキャッチコピーってのは!

立花:最近はお通しカットしてる居酒屋もあるじゃない

啓次郎:例えだから!!あくまで!例えだから!

立花:そういうもんかねえ

啓次郎:そういうもんだよ

オプションおじさん:ああ、その通りそういうものだ。

啓次郎:ですよねえ?

オプションおじさん:ああ、さすが君、わかってるじゃないか。

立花:ちょ、ちょっと、誰よあんた

啓次郎:え?

オプションおじさん:え?

立花:え?じゃないわよ

立花:いきなり誰なの?

啓次郎:オプションおじさんだよ

立花:は?

啓次郎:いや、だから、オプションおじさん

立花:だれ!?

啓次郎:え、オプションおじさんしらないの!?

オプションおじさん:な、なんてこったい・・・

立花:知らないわよ、何それ

啓次郎:だから、僕のオプションなんだよ、オプション

オプションおじさん:そう。啓次郎さんのオプション、それが私、オプションおじさんです。

立花:なんの説明にもなってない。

オプションおじさん:ガッデム!!!!

啓次郎:シューティングゲームってしたことない?立花さん

立花:あー・・・子供のころに少し。

啓次郎:シューティングゲームでさ、アイテムを取ると自分の機体の後ろにさ

啓次郎:似たような機体がくっついて一緒に攻撃してくれたりするんだけど

立花:う、うん

啓次郎:それ。

立花:え?

啓次郎:だから、それよ。

オプションおじさん:それです。

立花:それで納得いくだろうと思ってる事が間違いよ

啓次郎:僕のやること、為すこと、困った事にすべて追従しながら

啓次郎:的確に僕の事を援護射撃してくれるタイプの最高のオプションなんだ。

オプションおじさん:最高のオプションです。

立花:な、なるほど?

啓次郎:ねえ、オプションおじさん、キャッチコピーに困ってるんだ。

啓次郎:何かいい手は無いかな。

オプションおじさん:そんなのカンタンさ、啓次郎さん。

オプションおじさん:そもそもキャッチコピーが苦手なんだろう?

啓次郎:ああ、そうなんだよ!流石、理解が速いなあ、オプションおじさんは。

啓次郎:理解力のオプションもつけておいて正解だったよ。

立花:ちょっとまって

啓次郎:何?

立花:理解力のオプションってなに?

啓次郎:え?

立花:いや、だから「つけておいてよかったー」ってなによ

啓次郎:オプションだよ

オプションおじさん:オプションですね

立花:え?いや、だからオプションはその、自機についてくる子機の事なんでしょ?

啓次郎:ちがうよ

オプションおじさん:違いますね

立花:え

啓次郎:車とか買うときにさ、カーナビをつけたり、冷房をマイナスイオンにしたり

啓次郎:車体からひのきの香りがするようにしたりできるじゃん

オプションおじさん:しますね

立花:しねえよ

啓次郎:そういった特別なサービスを付随させることをオプションって言うんだよ、知らないの?

オプションおじさん:知らないんですか?

立花:さっきと言ってることが違う

啓次郎:え

オプションおじさん:え

立花:さっきと言ってることが違うじゃない

啓次郎:そんなことないよ、ねえ、オプションおじさん

オプションおじさん:はい。私は啓次郎さんにオプションを付けていただいたオプションおじさんですから。

立花:オプションに、オプションをつけた、オプションおじさん・・・

啓次郎:変な立花

立花:私が変なの?

オプションおじさん:変ですね

立花:あんたに言われたくないのよ

啓次郎:ねえ、オプションおじさんさっきの続きを教えて

オプションおじさん:そうでした、おじさんうっかり。うっかりおじさんです。

啓次郎:うっかりオプションはつけてないぞっ

オプションおじさん:てっへ

立花:……。

啓次郎:立花どうしたの?

オプションおじさん:どうした立花

立花:なんでもない、早く進めて

啓次郎:そうだったね、苦手なキャッチコピーをどうしたら克服できるの?オプションおじさん

オプションおじさん:簡単ですよ、啓次郎さん。

オプションおじさん:私生活の動きすべてにキャッチコピーをつけて

オプションおじさん:あなた自身がキャッチコピーの権化となってしまえばいい

立花:何それ全然意味わかんない。

啓次郎:やっば、天才かもしんない

立花:あんたは脳みそにエリンギ生えとるんか?

啓次郎:え?なに?いま悪口言われたの?

オプションおじさん:悪口を言うとかひどいですね。

立花:突っ込みって言うんだよ!

啓次郎:え、それが突っ込みなの

オプションおじさん:なるほど、これが突っ込み。立花さんは突っ込みのオプションがついていらっしゃるのですね。

オプションおじさん:これはすごい才能です。

立花:やめて

オプションおじさん:どういった意味を込めて、脳みそにエリンギと例えたのでしょうか

立花:やめて

オプションおじさん:エリンギが脳みそから生えるわけがない、でもそこをあえて

オプションおじさん:「生えとるんか」と表現することでお笑いとしてどういった効果が見込めるのでしょうか

立花:(割り込むように)そんなに語れるほどの突っ込みじゃなかったから!!!

啓次郎:え

オプションおじさん:え

立花:やめてよ!!お笑いを説明する事ほど苦痛なことはないよ!

啓次郎:(アドリブで、ひたすらに立花を褒める)

オプションおじさん:(啓次郎のアドリブに合わせてたっぷりと立花を褒める)

立花:(それに合わせた反応をする)

啓次郎:まあ、まあ、ほら、突っ込みの事は置いておいて

啓次郎:オプションおじさん、具体的にはどうしたらいい?

オプションおじさん:啓次郎さんは普段通りに生活をしてください。

オプションおじさん:私が、その啓次郎さんの普段の生活に合わせたキャッチコピーや煽り文句を

オプションおじさん:添えさせていただきます。

啓次郎:す、すごい。そんなサービスまでしてくれるのか。

オプションおじさん:当然です。他にも、スクール水着、ブルマ、ナース服、メイド服もお選びいただけますが

啓次郎:なんて最高なんだ!!それじゃあスクール水着と3日間脱いでない靴下を……

立花:(割り込むように)ちょっと待て!

啓次郎:え?

オプションおじさん:え?

立花:なんだ今の、今のなんだ

啓次郎:え?立花さん知らないの?

オプションおじさん:オプションですよ

立花:オプションですよじゃないのよ

立花:なにそれ、いきなり何ぶっこんできたの

啓次郎:お金を払ってサービスを受ける時にさ、正規の料金のほかに

啓次郎:追加で料金を払うことで、別のサービスも受けられるんだよ、知らないの?

啓次郎:それをオプションって言うんだ、オプションおじさんだからね

オプションおじさん:ええ、私はオプションおじさん

立花:さっきまでの!オプションは!なんだったのよ!

啓次郎:なに言ってるのさ立花さんボケちゃったの?……あ!脳みそにエリンギ生えとんかー!

オプションおじさん:ナイスです!!素晴らしいです啓次郎さん!

立花:ボケてんのはそっちなのよ!

啓次郎:違ったみたい

オプションおじさん:違ったようですね

立花:わかった、もう突っ込まない、絶対突っ込まない

啓次郎:変な立花さん、僕たちも別にボケてないよ、ねえ?

オプションおじさん:ええ、至ってまじめです

立花:それでボケてないならむしろやばいのよ

啓次郎:さ、そんなことより

立花:そんなことよりじゃねえ

啓次郎:オプションおじさん、さっそくお願いするよ

オプションおじさん:お任せください。

0:(SE:固定電話着信音)

啓次郎:あ、さっそく社内電話が鳴ってる。

オプションおじさん:『空前絶後の』(可能な限りのイケボで)

啓次郎:スターフィルムカンパニーです。

オプションおじさん:『誰も予想だにしなかった、』(可能な限りのイケボで)

啓次郎:担当者は本日不在でして……

オプションおじさん:『全米が涙した、』(可能な限りのイケボで)

啓次郎:引継ぎは受けております。

オプションおじさん:『製作費100億円、』(可能な限りのイケボで)

啓次郎:はい、それでは伝言を担当者にお伝えしておきます。

オプションおじさん:『ラスト五分、結末は完全にひっくり変える……』(可能な限りのイケボで)

立花:すっごく邪魔!!!!

啓次郎:そうかなあ、今なんかすごくワクワクしてたよ。

オプションおじさん:ええ、とってもいいキャッチコピーの権化となっていました。

啓次郎:だよねえ?

立花:厳密にいえばキャッチコピーじゃなくて煽り文句じゃない!

啓次郎:突っ込まないんじゃなかったの?あ、『結末は完全にひっくり変える……』

立花:そういうことじゃないのよ!

オプションおじさん:スクール水着きたほうがよろしいですか?

啓次郎:あ、そのほうがテンションあがるかも

立花:まてまてまてまて。

オプションおじさん:どうしたんですか?立花さん

立花:もうそれは完全にお店なのよほんとに

オプションおじさん:え?30分延長?

立花:だからお店なのよ

啓次郎:立花さん勝手に延長しないでよ!

立花:してないのよ

オプションおじさん:『全米が涙した』(可能な限りのイケボで)

立花:延長で涙してたら相当待ち遠しかった人みたいになってんのよ

啓次郎:え・・・?あ・・・うん

オプションおじさん:え、あ・・・はい・・・?

立花:なんでピンときてないのよ!あんたらが言い始めたんでしょ!

啓次郎:いや、ちょっと下ネタとかはちょっと

立花:てめぇがいうかコルぁ!!!!!!!!

オプションおじさん:イライラしていますね、もしかして空腹ですか?食事にしますか?立花さん

立花:このタイミングで急にご飯食べないのよ

オプションおじさん:今なら大盛りも無料です。

立花:なんのよ

オプションおじさん:スクール水着の

立花:どこを大盛りにするのよ!

啓次郎:あ、僕も大盛りにしてほしいです。

立花:何を大盛りにすんのよって!

オプションおじさん:あ、すいません、啓次郎さんのオプションはサービス期間外でして。

オプションおじさん:有料で50円追加でお支払いいただければ大盛りにできます。

立花:松屋か。

啓次郎:えー、じゃあ、大盛りは辞めて味噌汁を豚汁にします。

立花:松屋か、って。

オプションおじさん:ありがとうございます、あ、食券をお買い求めいただけますか?

立花:だから松屋か、って。

啓次郎:チーズトッピングもお願いします。

立花:それ「すき屋」!!!!

啓次郎:えっ、た、立花さんぼ、僕の事好きなの・・・!?

立花:違うそうじゃない!

オプションおじさん:『全米が涙した』(可能な限りイケボで)

立花:キャッチコピーはもういいって!

オプションおじさん:『ラスト1分、結末は完全にひっくり変える……』(可能な限りのイケボで)

立花:だからもういいのよ!

啓次郎:なんかキャッチコピーにすごく詳しくなった気がするなあ、

啓次郎:ちょっと考えてみようかな、キャッチコピー

立花:……そういえば、どんな映画を買ったのよ?

啓次郎:ああ、言ってなかったっけ。タイトルはね、えっと『脳みそから生えたエリンギ』

立花:脳みそからエリンギ生えとんのか!!!!!!!